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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

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00-02 派遣転生者案内

「なあに、死んだからと言ってそう悲観する事はないさ!」

 そんな良く理解出来ないおじさんの言葉と、人が大勢いる場所特有のざわざわとした音が耳を刺激し。
 続いて闇の中で聴こえて来たのは病院やハローワーク等で良く聞く事になる【ポーン♪】と言う音ともに、録音音声によって読み上げられていく整理券番号を耳にして、耐え難い違和感の余り俺の意識は覚醒した。

「何処だよここ……」

 目を覚まして俺が一番初めに目にしたものは大勢の人が並べられた椅子に座っており、呼ばれた人が職員らしき人と一対一で話し合うと言う、正に銀行の待合室であり。
 さらに自分の目がおかしくなったのでは無いかと疑わされたのは、今時バラエティー番組でも見る事が出来るか解らない、白装束に三角巾を頭に着けているベタな幽霊さんたちが老若男女問わずに大勢居られるわけで……。

 そんなずっと立ち尽くしている俺の姿をずっと見ていたのか、右手の方から何やらスキンヘッドに黒のグラサンを掛け、黒いスーツ姿と言う明らかに危ない人の代名詞の様な人に声をかけられた。

「おいあんた。死んだ事が信じられないのは解るが、何時までもそこにいられると後ろから来るお客さん達が入れねぇから。あんたの分の整理券やるから持ってとっとと座りな?」

「あ……はい、そうします」

 勿論、男の言う意味が理解出来た訳じゃない。ただ、挨拶をされたから反射的に口が動いてしまっただけだ。

(一先ずは座って落ち着いて考えるか……)

 精神の安定をはかるために、必死になって今自分が見ているものが夢だと言う証拠を見つけようと考えた俺は、まず言われた通り席に腰掛ける。すると俺の隣に座っている中年のおじさんたちの話し声が嫌でも聴こえて来る。

「あはははは!! てことはあれか? お前さん大好きなお餅を口の中に一度に頬張っちまった結果、喉に詰まらせてコロリと逝っちまったって訳かよ!!! こいつは傑作だ!!!」

「うるせぇ!!! 家に帰ったらカミさんに浮気がバレてて、玄関でびびり過ぎてショック死した最低よりはましだろうが!」

「おい馬鹿……!! その話は大声で言うなって言っただろうが……! これから転生すって時に俺が反省もせずに自分の浮気話をネタにしていたなんて知られて、査定が下がったらどうしてくれるんだよ?!」

「ふん、知らねーな。あんたが産み出した汚い錆び話だろ? 男ならとっとと腹くくれよ」

「あっ! 汚いぞおまえ!! さっきまではカッコつけて色々言ってたくせによぉ!!」

 そんなドンドンヒートアップしていく二人のやり取りに俺もひやひやしてきた所で【ポーン♪】と言うチャイムが鳴り、番号が呼び出される。

【続きましてー。65、67、68番の方。窓口に御越しください】

 そのアナウンスを聴いて先程まで賑やかだった二人は揃って唾を飲む。

「行くか……」
「ああ……」

 何かを悟ったように観念して歩いていく二人の後ろ姿を見ながら、俺はまだ心の中で「きっとこれは、俺が運び込まれた病院で、壮大なフラッシュボブでもしてるんだよなー」とか考えて、必死に現実逃避をしようとするのだが。
 ふと、通り魔に切りつけられたであろう背中の傷口がどうなっているのだろうかと、背中に手を回した所で気づかされる。

「傷ひとつ無くなってる……後、俺も死に装束着てるじゃねーか……」

 いやいやまて!! 流石にこれだけでひっかかる程に俺も単純では無い!!
 きっと、俺が受けた精神的ショックを少しでも笑い飛ばせる様に病院の人達が用意してくれたサプライズーー

「嘘だあぁぁぁぁぁ!!!」
「なっなんだ?」

 その突然聴こえて来た先程浮気をしたせいで死んだと言う男性の悲鳴に、驚いて思わず視線を向けて見ると、何やら案内のお姉さんらしき人に必死に抗議しているようだ。

「幾らなんでも緑亀は無いだろ?! 緑亀は!!」

「じゃあカマキリの雄にしましょうか? その方が女性に対する自己犠牲の精神を学べるかもしれませんよ?」

「な……!! ふざけんな!!! それじゃあただの餌じゃねーか!!」

「はー……丸米さん。元はといえば貴方が愛する妻を裏切ったにも関わらず、反省処か奥さんに逆恨みまでしている事が原因なんですよ?
だから一旦貴方の中にある自己中心的な記憶と考え方を白紙にするために、この提案をしたんですよ?」

「畜生!! やっぱり女たんかじゃ話にならねぇ!! おい、誰か代わりのやつを読んできてくれ!!」

 その声を受け入れたのか、先程俺を案内してくれたマフィアな外見の人が喚わめく男に近寄っていく。
 それを見て自分の意見が優先されたと感じた男性は女性の前で腕を組み、鼻息荒く勝ち誇る。

「へっ、ざまぁみやがれってんだ!! おまえさんは年上の人への礼儀でも教わってくるんーー」

 男性がそう言い切ろうとした所でマフィア風の男が男性を小脇に抱えて立ち上がる。

「へ? いや、おい!? 俺じゃなくて、あの生意気な女をどうにかしてくれよ! おいってば!?」

 手足を男の脇の中でばたつかせて必死に講義する男性だが。
 やがてこの案内所の出入り口であろう白く、金の装飾が施された両開きの扉をマフィアの男が空いた手で開けて、ゴミを捨てるかの如く男を外に放り投げて締め出した。

 座席があるここからじゃあ扉の向こうに何があるかは見えなかったが、放り出された男性が下を見た瞬間、驚愕の表情をしたまま下に消えていった所は見えてしまった。

 これ以上は余り詮索しない方が自分の為かも知れない……。

「お兄さん、お兄さん。どうやら呼ばれているみたいだよ?」

「え? あ、ありがとうございます!」

 そんな事を思いに止めた所で、男に注意が逸らされていた間にどうやら俺の番号が呼び出されていたらしく。
後ろに座られていた仲睦まじいお爺さんとお婆さんが俺が呼ばれている事を親切に教えてくれたので、慌ててお礼を伝えしつつ空いた受付に向かおうとするのだが。
 気がつくと、マフィアなお兄さんが俺の手をがっしりと掴んでいた。

「おう兄ちゃん、そっちじゃねーよこっちだこっち。案内するから俺に着いてきな!」

「はっ、はい! わかりました!」

 さっき、さらっとクレーマーを地獄に叩き落としたであろう男に手を掴まれて何とか悲鳴を上げずに済んだが。
 自分が今連れていかれている方向が先程開けられた地獄行きの扉である事に気づき、自分の顔色が自分で見えていなくても一気に血の気が引いていくのを感じた。

「す、すいません! 俺何か失礼な事しましたっけ?」

 その質問を背中で受けた男性は“何故そんな事を聴くのか?”と言ったトーンで、返事を返す。

「いんや? 俺はただ上司にあんたを連れてこいと言われただけさ」

「それってまさか……閻魔様とかですか……?」

「閻魔だって? ははは、そんなわけないだろ。今から会うのは神様の代理者である方だよ」

 その神様の代理者と言う言葉にイマイチイメージが沸かなかったが、男が「まあ、これからあんたを世話する上司の様な方だよ。ビックチャンスだ、物にしてきな!」

 そう言って、頭の中で何一つ話が纏まらないまま。俺は縦横長さ四メートル程の茶色の扉の前に立たされたと思いきや、部屋の中から「入りなさい」と言う渋い声が聴こえたので覚悟を決め、一言添えて中に失礼させて貰う。

「失礼します!」

 そこには金の装飾が施された赤いカーペットが敷き詰められ、部屋の左右両側には様々な物や書類等が収納されている大きな戸棚があり。
 部屋の後ろには、明るい光を取り込む白色の薄くて綺麗なカーテンがかけられている四角い大窓がある広い間取りの部屋であり。

 何よりその中央に置かれている社長机に一人……。
 いや、人と同じ体格と大きさをした黒と白の毛並みを持つ猫である、アメリカン・ショートヘアーに似たタキシード服姿の何とも威厳と清潔感がある猫であった。

「わざわざご苦労様。持ち場に戻ってくれたまえ」
「はっ、失礼いたします」

 そんな猫人間が伯爵の様なダンディボイスでマフィアの様な厳つい男を猫の手をくいくいさせて帰らせるのだから、中々にシュールな絵面だと思う。

「さて。先ずは君が何故、目を覚ましたときにこのような場所に連れてこられているか分かるかな?」

「それは……俺が死んだからですか?」

「うん、そうだね。正式に言えば仲間を助けるために囮になって殺されたからの様だね……」

 そう言って俺に関する資料なのか、手に持ったファイルを見ながら状況説明をする猫に幾つかの疑問が浮かぶ。

「すいません。幾つか質問をしても宜しいでしょうか?」

「構わないよ、言ってごらん?」

「そこまで知っておられるのは、私達が襲われている姿を貴方が傍観していたからですか?」

「いいや、これは君達の住んでいる惑星を担当している者からの情報だ。私がリアルタイムで見ていた訳じゃない。すまないね」

「そうでしたか、こちらこそすいません。ではここはどういった施設なのですか?」

「ここはセントラルと言って、神様が私達【働き手】の為に造ってくださった全部で1000階層に階層別けされた多目的施設だよ」

「せっ、千階層ですって?! そんな膨大な質量があるであろう建造物がまともに建っていられる筈が……!」
「だが、こうして現実に建っている。理由はまだ君には教えられない。質問は以上でいいかな?」

 俺と話をする為に割り当てられた時間が尽きようとしているのか、猫さんがそろそろ本題に入らなければならないと言う雰囲気を醸し出しているのを感じたので。まだ色々と聴きたいことはあったが身を引くことにする。

「はい、お時間をくださりありがとうございます」

「いや、これからする話に君が同意してくれるなら、これから幾らでも話し合える時間は取れるから気にしないでくれたまえ」

「と、言いますと?」

「名乗るのが遅れてしまい申し訳無い。私は亡くなった方達に、新たなる門出へと案内する仕事をさせて頂いている転生科所長のトレノと言うものだ。以後、お見知りおきお」

「こちらこそ、名乗りが遅れてしまいすいません。知っておられるかも知れませんが豊口亮太と申します」

「よろしく頼むね、豊口くん。さて、簡単に述べさせて貰うと私は是非とも豊口くんをスカウトしたくてここに来て貰ったんだ。優秀な仲間としてね」

「それは……転生して再び地球で暮らせるのではなく、ここで永遠に一緒に働くと言うことですか?」

「少し違うかな。寧ろ君にやって欲しいのは生物が住める惑星に移住して貰って様々な調査をしてもらったり。
悪い方向に向かおうとしている文明や、生き物達による悪影響を中和する事が出来るだけの能力を君に託すので。
その力を生かして子供が危ない道に行かない様に手を引っ張る親のように、人々を導いてあげて欲しいんだ」

「ちょっと待ってくださいよ!? 俺はただの人間で、例えどれだけ力を与えられたとしてもそんな大それた事は出来ませんよ!」

 実際に俺はたがが通り魔一人に殆ど何も出来ずに一方的に滅多刺しにされて殺された男なんだよ、俺は……。

 その返答を予想してか、もしくは心の声が読まれたのかは解らないが、何故かトレノさんはにこやかな表情で何度か頷いた後「よし、ではこうしよう」とふかふかのソファーから立ち上がったかと思うと、突然目の前に両手を突き出して見せた。

 何を伝えたいのかと俺が戸惑っているうちに、トレノさんが突き出している両手の前である現象が起きていた。

「ふう……穴の大きさはこんなもので良いかな?」

 何と、トレノさんが両手を突き出している左右の両手を基準にして空間に穴が空いており。その穴の向こうには何と森林があり、奥の方には土を踏み鳴らして出来た様な長い山道が続いている。

「これは一体どういう仕組みで?」
「ついてくれば解るさ! さあ、きたまえ豊口くん! 私が案内しよう」

 そう言ってタキシードを翻しながら穴を潜っていくトレノさんはさながら映画俳優の様であり、気付けば勢いに乗って俺自身も穴を潜り抜けてしまっていた。

 だが内心全く後悔はなく、寧ろこれから始まるであろう出来事を早く見てみたいと言う感情が沸き上がってくるのが、自分の駄目な部分だと解っていても抑えられない。

「うん、先ずは第一の難関は乗り越えられた様だね。歓迎するよ豊口くん」

 まだこの時俺は、彼についていった事が人生の中でした最良の決定であった事を知らずにいた。
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