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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

03.修練の時篇

41/99

03-13 初めての異世界ダンジョン【Final】

何とかして話を纏める為に、色々と話をカットしたり凝縮した結果。
一万字オーバーの話となってしまいました(白目)

・アルバインとチーターとの戦闘内容を会話に入れました。(10/1)
・最後のやり取りを少し変えました。(10/4)
初めて挑戦したダンジョンで、明らかに初見殺しと言える30頭近くの熊達との戦闘を何とか無傷で避ける事が出来た亮太達は、そのまま次なるステージへと続く階段を登っていた。

どうやら挑戦者が階段まで辿り着くことが出来ると、ステージ内のモンスター達は手出しする事が出来無い様になっているらしく。

学校の階段を思わせる木製の階段は外壁に開けられた窓口の外から聴こえてくる小鳥の鳴き声と、亮太達の階段を登るときに生じているギシギシと言う音以外は聴こえないセーフティーエリアである事を確認した亮太達は、落ち着いてこれから挑む事となるダンジョン対策会議を行っていた。

「しっかし酷い目に遭ったな……。まさか熊の群れに出くわすなんて」
「せやね。マリナの能力が無ければ、うちらの内の誰かが負傷していた事は間違いないねぇ」

亮太と綾瀬はそう言いつつ、簡単なダンジョンだと考えていた上で用意した装備の見直しと、安全面の注意であり。

さっきの様な観光気分で突入すれば天国へと一直線となるバットイベントが続くことを考慮して、御互いに役割を決めたりする等の対策を練る。

「じゃあウチらのフォーメーションと役割を決めて、チームとしての連携を強めよか。先ず、上下左右に皆が位置して周囲を警戒出来る菱形のフォーメーションにしたいんやけどエエかな?」
「特殊部隊見たいに縦一列で行軍するのでは無くてですか?」

その質問を受けた綾瀬は階段を登る足を止めて、解説を始める。

「何で菱形にするかと言うとな。今回の場合ステージが広くて全周囲を警戒しなければ行けないのと、縦一列の陣形では身を隠すことが出来る遮蔽物があれへん場所やと突然奇襲を受けてしまうと動きにくくなってまうから。そういう場合のリスクを考慮したんやわ」

その現代の近代兵器に合わせて考えられた兵士が扱う陣形の説明を受けて、アルバインは甲冑を身に纏って高揚している為か、凛々しい声をあげて感心する。

「なるほど。少人数であっても連携を高める事で互いの死角を補い、守りにも攻めにも転じやすくするわけですね!!」
「確か、アルバインちゃんがいたであろう昔の騎士の時代だと、騎馬隊による縦横無尽な突撃とかが陣形の代表例だよね!!」
「ええ! 綾瀬様達の世界で言うと、40キロのバイクと同等の騎兵隊が集団で敵兵へと突撃して敵兵を散らす訳です!」


そんな陣形談義で場の空気が熱くなってきた所で、一先ずそこで決まったのはさっきと同じ様にマリナだけに索敵を任せるのではなく。
チーム全体が360°をカバーする目となり耳となる事であり。

正面の索敵は引き続きマリナにお願いし、左側を亮太、右側をアルバイン、後方を綾瀬が担当する事となった。

「よし! じゃあ行ける所まで行ってみようか!!」
「「「おおおおお!!!」」」

士気を高めて2階までの階段を上り終えた亮太達を迎えたのは、先程の草原しか無かったシンプルなフィールドに所々木々が設けられたフィールドであり。
亮太が再びスコープを通して五つある木々の周りを確認してみると……。

「……チーター達の親子が木の上で休んでる」

それはさながら見張り台で周囲を警戒している見張り兵であり。2階のフィールドにはその様な木々がある場所がサイコロの5の目の様に設置されているらしく。

前階層て遭遇した熊達よりも凶悪で、全力で挑戦者を殺しにかかっているそのダンジョンに、亮太達は再び頭を抱える事となる。

「……亮太さん。これって明らかに気晴らしでは無くて、レンジャー部隊も本気で挑む様な実戦場やんね? どないすんの?」

「すいません綾瀬さん……ここからは依りいっそうのアクションが求められる事になりそうです。先ずは前回熊達に行った餌を増やす事で囮作戦を強化してみようと思います。
チーターの注意を惹き付けておいて、その間に俺達は次の階層への階段まで車で向かう事にしましょう」

「うん、フォーメーションの検討をまるまる丸投げになってまうけど、それでいこか!! それじゃあウチが階段の前まで車が到着した所で、チーターが入り込まない様に氷の壁で守ってみせるから、到着した後も安心してや!!」

「了解です! マリナとアルバインもそれで良いかな?」
「私はそれで大丈夫よ!!」
「了解致しました!!」

その豪快な作戦に一同は納得し、早速亮太達はチーター達を刺激しないようにゆっくりと部屋の中へと進入し。
亮太はモニターを出現させて、素早く操作してチーター達が休んでいる木の周りに今度はドックフードだけではなく、かつて倒した牙猪達の肉の塊をセットにして各木の周辺に二個ずつ投下していく。

すると周囲を警戒していたチーター達の注意は肉に向けられ、三頭の大人チーターと可愛らしい子供チーター4頭が一つ20キロ程の肉に被りついて行く。

「よし……行くぞ!」

その様子を確認した亮太はパジェロを出現させて、それに合わせて皆がテキパキと乗車していき。

亮太は焦らずに差し込まれたままになっている車のエンジンキーを捻ってエンジンに火を入れつつ、肉が尽きてチーター達が此方に来ないように追加の猪肉を木の周りにばらまきつつ。
恐怖のサファリパークツアーが開始される。

「皆、真ん中を通る最短ルートで行こうと思うんだが良いかな?」
「分かった亮太さん! 真ん中の木に居るチーター達は私が電気の魔方で痺れさせて、行動不能にして見せるからまかしとき!!!」

隣の助手席に座る綾瀬からの元気の良い返事と満面の笑顔を見た亮太は、綾瀬の顔を見て嬉しそうな表情で頷き。

後部座席に座り、亮太からの指示を待っているマリナとアルバインからの熱い視線を感じた亮太は、前を向いたまま指示を飛ばす。

「マリナは周囲の警戒を引き続きお願い! アルバインはチーター達に囲まれた時の為に、直ぐにドアから出られる様に備えておいて欲しい!!」
「うん、任せて!」
「了解しましたマスター!!」

「よし! じゃあ行くぞ皆!!」

やがて走り出したパジェロは次第に速度を上げていき、草原の真ん中を突っ切る形で2階層目のステージフロアから速攻で出るために、東京ドーム2個分並(約400m以上)の奥行きがあるフロアを突っ切り、階段がある場所まで時速80キロで突き進んで行く。

勿論、それだけ豪快な事をすれば周囲にいたチーター達も亮太達に気づいて亮太達に狙いをつけるのだが、既に胃の中に大量の牙猪の肉とドックフードを食べ尽くしていた為に食欲が満たされていた事と、体が重くなっていたこともあり初動の動きが鈍く。

唯一真ん中の木の周辺にいたチーター達は子供を守るために親が動く気配を見せ始めていて。木の下の草原にストンと降り立ち、顔を上げて四頭のチーター達が此方に高速で迫って来ているパジェロに唸り声をあげるのだが。

そんな彼の事など初めから相手にしていないと言わんばかりに、風を切る音共にパジェロは彼等の隣を横切って行き、そのままの勢いで亮太達は次の階層へと続く階段へと急いで行く。

「よし! これで振り切っただろ!!」

木の上にいたチーター達を完全に振り切れたと確信した亮太が声をあげるが、それを上回る程に大きな声が周囲を警戒していたマリナから声があがる。

「亮太!! 前方からバッファローの大群が来てる!!」
「何だって?!」

マリナの絶叫が正しい事を証明するかの様に、正面から200m程先に砂埃(すなぼこり)があがっていて。
良く見てみると大きな二本の白い角と黒い毛並みに覆われた巨体と、ライオンにすら立ち向かう勇敢な心を持つ200頭近い彼等が、伏兵として亮太達の目の前に立ち塞がったのである。

「何でだ?! さっきまでは影一つ見せていなかったじゃないか?!!」

亮太の言うとおり、バッファロー達の姿は草原の中に伏せていたために入口からは全く見えておらず。
二階フロアの真ん中を通りすぎた所で、突然此方に顔を向けて立ち上がり始めた為にやっと認識する事が出来たのである。

「あはは……さっきの熊の時と同じ様に目で見えるものだけとは限らないと言う訳やね。いやはや、うちらが高速で走るチーター対策をしてくると読んだ上で、更に上を行かれた訳やね。うんうん」

目の前で起こっている事を他人事の様に冷静に分析する綾瀬の言葉を耳に入れながら、亮太は心の中で悔しがる。

(くっ、冷静に考えていたら分かっていた筈のミスをしてしまうとは……。油断しちまったな)

その様子を隣で見詰めている綾瀬の視線に気づいた亮太は、綾瀬達に謝罪する。

「すまない皆、ちと俺の考えが浅かったみたいだ。彼等の突撃を止める為に先頭の列にいる牛を足止めしたいんだが、手伝って貰えるかな?」

「勿論ええよ!」
「任せて亮太!」
「かしこまりましたマスター!!」

その元気な返事を聴けた亮太は微笑みながら感謝し、作戦を伝える。

「ありがとう皆! アルバインは車から出て後方の警戒を頼む!!」
「わかりました!」
「綾瀬さん、牛達の動きを止めて貰って良いですか?」
「OK! 任しとき!」
「マリナは引き続き周辺に更なる敵が隠れて居ないか、監視を頼む!」
「任せてよ!」

各員の行動方針が定められた為に残り100mを切り、目視出来る程に近づいてきている黒色の壁と後方から少数迫りつつあるチーター達を相手に亮太達は今まで控えていた戦闘を開始する。

先ず一番先に動いたのは後方警戒を命じられたアルバインであり。彼女は空挺降下をするスカイダイバーの様に、開けられた外開きの後部ハッチから勢い良く飛び出して行き。

高速で流れて行く地面に体が叩きつけられる前に足と足の裏、そして背中に備えられたバックパックに備えられたブースターに魔力を注ぎ込み、アルバインはスペースシャトルの様に猛烈な光の粒子を吹かせて空へと直進して行った。


そして正面から迫りつつあるバッファローの群れに対しては綾瀬が補助席の窓を下げて、左腕と握った杖を窓の外へと突き出してバッファローの群れへとその先端を向ける。

「アイス・ウォール!!」

綾瀬のその叫びに答える様に、杖の先端に取り付けられている4つの色を持つ魔石の内、透き通った水色の魔石が輝きを放った。

次の瞬間、バッファロー達の前方180°を囲う様な高さ15mの氷の壁が形成された事で、まるで亮太がアサツユ村を牙猪達から守った時と同じ様にしてバッファロー達を足止めして見せる。

「亮太!! 一時方向から更にバッファローの群れが出現したわ!」
「ありがとうマリナ!! これ以上直進させるのは危険だから一旦車を停止させる!!」

だが正面からの安全はまだ確保されておらず、更なる増援が亮太達の進行を阻まんと増え始めていた。

(……確かバッファローは草食動物でありながらかなり気性が荒く、縄張りに入り込んだ者に対して容赦なく集団で執拗に追いかけて追い返し。
彼等に抵抗するならば、その猛烈な突進でライオンでさえ吹き飛ばされて宙に舞う動画があったよな……。だとすれば今ある状況は非常に不味い)

思考を回し、今ある危機的状況を再認識した亮太は真剣な態度で指示を飛ばす。

「みんな!! バッファローは非常に気性が荒く、敵対する者に対しては容赦無くとことんまで叩きのめす動物だ!!! ここからは自分達の命を守る事を第一にして全力で事に当たりたいと思う!!」

その言葉を体現するかの様に亮太は先程まではゴム弾が装填されていた89式小銃のマガジンを取り出して、実弾が入れられているマガジンをベストから取り出して入れ換える形で装填する。

その姿と思いを感じ取った綾瀬とマリナは静かに頷いて同意し。亮太と同じ様に戦闘体勢をより強める。

「了解したで亮太さん!! ほな、左半分をウチが受け持つから右側を任せてもエエか?」
「分かりました! 俺が右半分を引き受けます!!」

きっちりと復唱し、互いの意思が伝わった事を確認しあった二人は車から降りて、そびえ立つ氷の壁を迂回して左右から襲い掛かろうとしているバッファロー達の群れがの位置を確認してからそれぞれが攻撃を開始する。

「もう一丁、アイス・ウォール!!」

先ず火蓋を切ったのは綾瀬であり。彼女は新に左側から現れたバッファロー達の進行を阻止する為に、再び氷の壁を出現させて進行を止めてから二本の杖を手に持って上級魔法の詠唱を開始する。

「我が心は太陽にも劣らぬ更なる業火と冷めやらぬ熱き力を望み!! ここに形と成さんとす!! ツイン・エクスプロージョン!!!」

その言葉を掛けられている間中ずっと淡い赤色の光を放っていた杖の魔石が、綾瀬の詠唱を聴き遂げるかの様に強く輝く光を杖の先端に熱く燃える炎として収束させて、バスケットボールサイズの火球を生み出して行く。

「シューーート!!!」

やがて最大まで二つの火球が大きくなったことを確認した綾瀬は、迫撃砲を放つ時の様に杖を斜め前に構えて超エキサイティンな二つの火球を打ち放つ。
すると二つの火球はバレーボールのトスをしたかの様に、緩やかな軌道を描いて氷の壁を越えて左側と真ん中の方へとゆっくりと飛んでいき。

僅かな沈黙が周囲に数秒ほど流れた次の瞬間、大地震でも起きたかの様な大きな揺れと、氷の壁の向こう側が真っ赤な夕日の様に紅い炎の色に染まったのである。

その炎と共に茶色い粒子が火花のように登り上がっていた。

「ふう~。あれは動物の形はしてるけど造り出されたモンスターであり、正当防衛だから許されるよね……。気持ちよかった……」

その地獄の様な光景を見た綾瀬はスッキリとした様な表情で眺めていた。

「亮太さんはどう対処したんやろかな?」

自らのノルマを達成した綾瀬は右側を受けもった亮太の様子を確認するために、視線を右側へと向けるとそこには氷の壁の右側を抜けようとしていたバッファロー達の行軍を阻止する為に設置された、電気が流れている一メートル間隔で設置された三重の電子鉄線であり。

そこに勢い良くバッファロー達が次々と突っ込んでは電気を浴びて身体を反り返らせて、地面に倒れて痙攣させている光景と。

電子鉄線に引っ掛かっている仲間を足場にして、後ろのバッファロー達が乗り越えようとしている戦争のワンシーンのような壮絶な光景であり。

そんな中で亮太達は何をしているのかと言うと、先程まで皆で乗っていたパジェロの代わりに第二次世界大戦前に中国と満州との戦いの為に旧日本軍により開発された九七式中戦車チハ三両が、互いの間に二メートル程の間隔を空けた横並びで投入されていて。

特にその中で注目を引くのは、横に並んでいる3台のチハの真ん中で一際目立っているのは、魔石を原動力として稼働している、魔石機関搭載型九七式中戦車チハ《Rank,SR++》であり。

マフラーからは軽油が燃焼されて排出されて出る黒色の煙ではなく、赤色と黄色のキラキラした粒子が出ている事もおかしいのだが。

一番注目を集めるのはその主砲部分に本来ある筈の戦車砲ではなく、チハに載せる事が出来る様にサイズダウンして装備されている魔道式レールガン《Rank,UR》が搭載されている事であり。

機関部のマナジェネレーターから産み出されるエネルギーを、開発途中の段階では【発射するには発電所2つ分のエネルギーが必要】だと言われていた大食らいのレールガンの為に、チハに搭載されているマナジェネレーターはその要求を満たす為にフル稼働しているらしく。

周囲には発電所並の猛烈な騒音が鳴り響いている。

そして良く耳を澄ませて見ると、車両の中から亮太とマリナが大声で話し合っている声が聴こえて来る。

「2号車、3号車は主砲と機銃による射撃を開始してくれ!!」
「亮太!! マナエネルギー充電完了まで、後2分よ!!」
「ありがとうマリナ!! 兄さん、射撃指揮をお願いします!!!」

その声が途切れない内に左右のチハから機銃の雨が放たれ始め、次々と着弾して行く弾丸の雨はバッファロー達の足を見事に止め。
そこに陸地陣地や家程度ならば何とか吹き飛ばす事が出来る威力を持つ、口径57mmの戦車砲が大きな雄叫びのような発射音と共に火を吹いて、前列にいたバッファロー達を後方へと送り返す。


本来であれば、バッファロー達が恐れをなして退却するかと思われる様な猛烈な攻撃がその後も繰り返されるのだが。バッファロー達は命を惜しまない死兵の様に次々と突撃を繰り返しており。

左側にいるチハの乗員であろう青年が「何なんだこの牛達は!?」と声をあげてしまう程であったが、最初は300頭近くいたであろうその数は次第に少なくなりつつあり。

残り140頭を数える程になった所で、相変わらずマナジェネレーターの騒音は煩いが火砲は沈黙していた亮太達が乗る1号車が動き出す。

「皆に通達する! これよりレールガンの発射を行う!!」
「おお! 遂に準備が整ったんやね!!」

その言葉を実現させる為に、1号車に搭載されている丸く大きなパイプの様な形状をしているレールガンの砲身が、ワニの口の様にゆっくりと上下に開いて行き。

その別れた砲身の間に遠くから見える程に高圧の電気がバチバチと走り始め、それを確認した左右にいた2台のチハは後退して行く形で退避し。

それを確認した亮太はバッファロー達を目標に、戦車を操作する事が出来る召喚された搭乗員達に狙いを定めて貰い、発射命令を下す。

「各員、対ショック・閃光用意!! レールガン発射三秒前!! 3、2、1……発射!!」

その命令に忠実に答えた搭乗員達は手順通りに射撃を行って見せ、そのレールガンによる周囲に轟音を轟かせる程のエネルギーが用いられた射撃が行われ。

【ドンシュゥ!!!】と言う音と、強力な磁力により打ち出された砲弾はマッハ5と言う、全力のマッハ9より少し控えめに設定された弾速だが、それでも驚異的な超高速でバッファロー達の群れへと突き進んでいく。


通常、砲撃と言う物は砲弾の火薬や重量によって相手に与える衝撃やダメージが変わるものであるのだが。マッハ5と言う超音速で砲弾を放つレールガンの場合は弾が軽くてもその運動エネルギーによって相手に大打撃を与える事が出来る。

何故そう言えるかと言うと、例えば野球のピッチャーが投げる150キロの小さなボールを体に受ければ、当たる箇所によれば骨折するし、最悪死に至る事もある。

そして第二次世界大戦中に戦闘機に装備されていた機関砲の弾丸であれば生身で受けてしまうとなると、映画等ではピストルで撃たれた時の様に赤い穴が点々と出来るだけの演出で終わってしまうが。

実際は船すら沈める威力を持つ機関砲を受ければ、人間の身体は簡単に粉々のミンチにされてしまうと言う恐ろしい記録が戦艦武蔵の生還者の方々が話されている事からも良く分かる。

だとすれば、機関砲とは比べ物にならないほどの運動エネルギーを産み出して、当時の戦闘機よりも大きい弾丸を発射するレールガンの威力が小さい訳が無く。

例え火薬の量が現代の爆弾やミサイルよりも少ないとしても。牛の群れ一つ難なく吹き飛ばす事が出来る圧倒的な威力がある事は間違い無いであろう。


そうした事もあり、満を持して切り札として投入されたレールガンの砲撃は通常であれば空気抵抗を極限まで弱め、慣性の力を利用するために砲弾のカバーが空中で上下左右に別れて、ライフル弾よりも更に細い弾が通常であれば途中で姿を現すのだが。

砲弾のカバーが取れる前にバッファローの群れの真ん中へと着弾する。

その新幹線が10倍近くの速度で突っ込んできた様な衝撃と、ダイナマイトで地面を掘り返した様なとんでもない威力を味会わされた彼等の身体は、何が起こったかも理解できない内にその衝撃を受けて文字通り消し飛び。

身体の一部が残っていたとしても紙吹雪の様に粉々になってキラキラと輝く粒子となって跡形もなく消滅してしまい。

彼等がいた地面にはアイスクリームをスプーンで掬った様な長さ80m近くの地面がえぐられており。正しく、レールガンに一撃必殺の威力がある事を皆に知らしめた。

その圧倒的な威力による被害は亮太達にも及んでいて、15tの重量を持つチハであったがしっかりと地面に固定されている訳では無かった為に、衝撃で勢い良く横転してしまっていた。

「マリナ、亮太さん無事?!」

その事に気がついた綾瀬が慌てて安全の為に機関が止められ、沈黙しているチハの元へと駆け寄る。

すると戦車の中からは亮太達の笑い声が少しづつ沸き起こり始め、中から亮太とマリナ、そしてチハを操っていた亮太と同じ機動隊の格好をしている細身の青年と日焼けしたガチムチの肉体を持つ中年の男性が現れる。

「いやー、楽しかったですよ! まさかチハタンに乗れるだけでなく、レールガンまで撃てた訳ですからね!」

細身の青年はその見た目によらず、意外と冒険家らしく。
横転しているチハをその細目の内にあるキラキラとした瞳いっぱいに納めている。

「おいおい、ワシはこんなおっかない武装を積んだ暴れ馬はもう勘弁だぞ。実験台にされた戦車が可哀想だ」

そう言って、戦車を労るベテランの男性はわざとらしく溜め息をつきながら亮太に視線を送る。

「すいません、長瀬さん。次回からはちゃんと調べて、対策を練ってから使用しますので」
「ふん。まあ、取り合えずは初戦を生き残れた事を祝おうか?」

そんな男同士の小さな友情が産まれ中で、亮太の腕の中で抱き抱えられたまま顔を真っ赤にさせているマリナが、震えながら声をあげる。

「りょ、亮太? もう大丈夫だよ?」
「何を行ってるんだよマリナ。後先考えずにレールガンをぶっぱなしたせいで、マリナに迷惑をかけてしまった。本当にごめんな」

その言葉を受けてマリナは首を横にブンブンと振ってから言葉を返す。

「だ、大丈夫よ!! 私達犬の耳はとても良いけど、聴覚を守るために大きな音とかは遮断する事が出来るのよ! だからその……そこまで気にしないで良いんだよ?」
「ありがとうマリナ……。じゃあせめて、街に戻ったら温泉と美味しいデザートを御馳走させてくれ」
「うん……ありがとう亮太」

そのほがらかなマリナの微笑みを見て、亮太のこわばっていた表情と心は緩む。

「綾瀬さんも本当にありがとうございました、お陰で生き延びる事が出来ました」
「いえいえ、ウチこそありがとね? 久しぶりに暴れてスッキリしたし、心強い味方が居てくれるのはホンマに有難い事やから!」

そう言って、笑顔でブイサインをしてくれた綾瀬に亮太も笑顔になり、もう一人の戦友を呼び戻す事にする。

「アルバイン聴こえるかい?」

《こちらアルバイン、感度良好ですマスター! どうぞ》

「アルバインが後方を守ってくれていたお陰でこっちは何とか片付いたよ!! 今日はこのまま階段まで行って、この階層をクリアした事にして帰ろうと思っているんだけどどうかな?」

《勿体無き御言葉ありがとうございますマスター! 私もその方が宜しいかと思います。私の方もチーター達を強力な光を浴びせて気絶させたので、直ぐにそちらに向かいますね!!》

「ありがとうアルバイン。そっちも問題なさそうで本当に良かったよ……」

そう言って一息ついた亮太に、アルバインは言いづらそうに言葉を伝える。

《あの……マスター? 一言良いでしょうか?》

「うん? どうしたんだ改まって? 俺なんかのために遠慮はいらないぞ」

《そんなに自分を蔑まないでくださいマスター。その、私が言いたかったのは……マスターが昔の話をしていて苦しんでおられた事です……》

「あー……ごめん。湿っぽくしてしまったもんなごめん……」

《違うのですマスター! 私はマスターを責めたかった訳では無く、ただ、過去に縛られて必要以上に自らを責めないで欲しいだけなのです!! 
確かに野蛮な人間は男女問わず、昔から何処にでもいます! でも、貴方の事を心から愛している女性もいるのです!》

そのアルバインの必死な説得を受けた亮太は小声で彼女に答える。

「この世界に来て、アルバインや大勢の人達と出会えたお陰で俺も強くなれた気がした。でも心に残っている傷は、切り傷を縫った後の様に消えることは無いことも知ってしまったんだ」

《マスター……》

「そんな悲しそうな声を出さないでくれよアルバイン。これは弱い俺自身の問題であって、アルバインが背負い込む事は無いんだ」

《そんなことない……だって私は幼い頃のマスターのそばで、その事件を見ていたのですから……》

その消え入りそうなアルバインの苦痛に満ちた声は亮太の耳に入る前に、突然フロアにアナウンスと閉店時間に掛かるような音楽が流れ始める。

【本日は異世界の門を御利用頂き誠にありがとうございます。お楽しみの所申し訳無いのですが、時間制限が迫っております。速やかにステージをクリアしてください】

「……聴こえたかアルバイン? 今は取り合えず俺達の元に帰って来てくれ、話の続きは何時でも聴くからさ……」

《……かしこまりました、マスター。今すぐに向かいます》

二人はぎこちない交信を終えたその数十秒後に、戦闘機の様に空を高速で飛行してきたアルバインが無事に合流を果たし。

亮太達は再びこのダンジョンを制覇しようと約束を交わしつつ、第二ステージのクリアを持って帰路に着くこととなるのだが……。

「……つっ!! 亮太さん大変よ!!」
「どうしたんですか綾瀬さん!? そんなに血相を変えて!」

帰還した後亮太達は、トレノから送られてきていたあるメッセージを確認して度肝を抜かれる事となる。

「トレノくんからとんでもないメッセージが届いとるんよ!! ほら、ここ!!」
「嘘だろ……」

それは、亮太達の代わりにヴァルハァム王国が支配している大陸の解放に挑んでいた20人の転生者からなる部隊が壊滅したと言う、非常事態を報せる物であった。
◇ダンジョンクリアボーナス
・バッファローの呼び笛《Rank.N》×80
・背の高い木《Rank.N》×2


◇ノーキルボーナス(チーター)
・リトルチーター《Rank.R》×3
・チーター《Rank.R+》×2
・動物を従える指輪《Rank.R++》×1

・今回の話でレールガンが登場しましたが、現在アメリカ軍が開発途中の艦船用のレールガンをモデルとさせて頂いていまして。

まだ本物の資料は当たり前ですが軍事機密とされていますので、私自身の妄想で無理矢理補っていますので「いや、レールガンはこう言うじゃないから!」と思われる方が大勢おられると思いますが御了承ください。

大勢の皆さんが読んでくださり、とても感謝しています! ありがとうございます!!
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