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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

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00-01 終わりであり、始まり

午後4時30分頃。

 夕暮れには少し早いこの時刻に、六畳間の狭い風呂無しアパートの部屋の真ん中に置かれた透明のガラスで出来た四脚のミニテーブルの上に目覚まし時計が置かれており、その目覚まし時計が突然けたたましい音を鳴り響かせる。

 その音が暫く鳴り響いた所で、部屋と外を区切る為に造られた木製のスモークガラスが上部にはめ込まれた、横開き式の引き戸が開けられ。
 玄関と台所が一体となっている引き戸の外側から、頭をシャンプーの泡だらけにしたままの状態で赤いボクサーパンツ1丁の青年が入ってくる。

「はいはい、わかりましたよーっと」

 そう言いながら青年は鳴り響く時計を止めて、再び陽気に鼻歌を鳴らしながら頭に乗ったシャンプーの泡を落とすために台所の流し場に歩いていく。

「ふーん、ふーんふふーん♪ うし、これでよしっと!」

 濡れた頭をバスタオルで拭き取り、さっぱりした様子でこの家賃2万7000円の風呂無しアパートにおける【入浴】を終えた貧乏ぐらしの男の名は豊口亮太とよぐちりょうたと言い。

 今年の春から一人暮らしをするためにこの部屋に住んでいる若い家の主であり、彼は5時半から出勤する予定の夜勤のコンビニバイトに向かう用意をしている、一見すると何処にでもいる様な25才のフリーターであった。

 一つ、彼が他の人と変わっているとすれば、彼が高校時代からバイトを始めて25才になるまでに彼が働いた職場が必ずといって繁盛はんじょうしている事と。
 彼は自分の必要としている以上のお金を蓄える事はせず、職場の発展の為に給料を使用する程に働く事と職場が純粋に好きな、変わり者である事等であろうか。

(今日は川辺さんが休みだから、雑誌類の陳列とビニール巻きは俺がやらないとな……。あとは……)

 そんな変わり者である彼の脳内では、今日の仕事の段取りがシュミレーションされているが、身体の方は濡れた頭に続いて、身体もバスタオルでしっかりと拭き終えており。

 台所の壁に張られたマグネットが裏についているB4サイズの鏡を見ながら、少し赤みがかったショートヘアーの髪の毛をワックスで軽く固めて、彼の何時もの髪型である揺らぐ火の様に整え。
 着替えには英語が書かれた無難な白いシャツと青いジーンズに着替えた亮太は財布に、手のひらサイズのスマホ、家の鍵に中型バイクの鍵をそれぞれポケットに入れ。
 何時もの出勤するためのセットが揃えられた事を確認してから、我が家を後にする。


 ーーーーーーーー◇ーーーーーーーーーー


 夕方の帰宅ラッシュに巻き込まれる訳でも無く、無事に駅前の駐輪所にバイクを預け終えた亮太は通いなれた改札口の近くに店を構えているコンビニへと入っていく。

 軽快な音楽と共に開く自動ドアを通り抜けると、そこには平日の夕方と言う事もあり仕事帰りの男性や、買い食いに立ち寄る学生さん達が大勢来店しており。その忙しそうな光景を確認した亮太は頭を仕事モードに切り替えて行く。


(我ながら、中々に店が忙しい良い時に来れたものだ)と感じた亮太は、お客さんがずらりと並び、二つのレジで慌ただしくレジ打ちに終われる中年のおじさん店長と最近入った若いアルバイトの女の子に急ぎ気味に挨拶を交わす。

「おはようございます、店長! うめちゃん!! 直ぐに着替えて応援に入りますね!」
「おおっ!! 丁度良いところに来てくれたね亮太くん!!」
「良かったー……亮太先輩が来てくれたなら何とかなりそう!」


 そんな安堵する二人の声を耳に入れつつ、亮太は急いでバックヤードに置かれている自分用のロッカーから取り出した制服に着替え、タイムカードを切ってからまだ仕事に完全には慣れきっていない後輩のレジ打ちを半分手伝いに向かう。

「店長、うめちゃんのレジ打ちのヘルプに回りますね!」
「おう! 頼んだよ!」
「ひい~、お願いします先輩!! お客様が途切れなくて困っていたんです!」
「こらこら、悲鳴を吐くのは店員として立っている内は禁止だぞうめちゃん?」

 そんなやり取りをしつつ、亮太達がてきぱきとお客さんを捌いて行く作業を二時間程こなした所でやっと客足が落ち着いて来たため、3人はやっと一息つく事が出来た。

「ひや~なんとか乗りきりましたね~。やっぱりあれだけの人が一度に来ると私じゃ捌ききれないですよ~」

「そうかい? 最初の時と比べると別人と言えるぐらい良い動きが出来るようになったじゃないか」

「ありがとうございます店長……。でも酷いですよね亮太さん、こんなに仕事が忙しいなら面接の時に最初から言ってくれたら良かったのに~」

 わざとらしく目を閉じて、辛そうに溜め息を吐く彼女に亮太は少し苦笑いしながら、ふてくされる彼女を励ます。

「何事も経験だようめちゃん? それに、大変な仕事と分かっていても諦めずにうめちゃんがこの仕事を続けてくれているお陰で大勢の人が助かっているんだよ?」

「本当ですか?」

 その言葉を聴いて、犬ならばピンッと尻尾と耳を立てていそうな何かを期待する表情で、彼女は亮太の次の言葉に期待する。

「勿論。俺を含めて大勢の人がうめちゃんに感謝していると思うよ?」

「えへへ~亮太さんに感謝されてしまいました! どうしましょ~店長~」

「はいはい、じゃあお客さんが少ないうちに他の仕事を終わらせてしまおうか」

「あー、そんな冷たい対応するんですね店長!! 良いですよ、良いですよ!! 私、もう店長が白髪染め手伝って欲しいって言ってきても知りませんから!! ふん!」

「え?! ちょっとそれは困るようめちゃん~」

「店長、俺の知らない間になにやってるんですか……」

 そんな仲が良いから出来る軽いやり取りを楽しみながら聴いていた亮太であったが、彼の背後にある出入口が突然轟音に包まれ、それと同時に飛び散って飛んできたガラスとATMが目の前に吹き飛んで来たために、亮太は思わず身構えるのだが。

「ぐあっ……?!!」

 亮太が気付いた時には彼の身体はATMに弾き飛ばされて宙に投げ出されており。
 突然の出来事にただ小さく悲鳴をあげて二メートル程吹き飛ばされるしか無かった亮太は床に叩きつけられ、全身に走っている激痛に顔をしかめつつ。
 お店の出入口を吹き飛ばした原因を地べたに這いつくばった体勢のまま確認する。

「中型トラックが……店に突っ込んで来たのか……!! ぐうぅ……」

 全身を打撲し、吹き飛ばされてきたATMに巻き込まれた時に折れたのであろう、くの字に曲がった右足の痛みによる苦痛に苛まれつつ。
 亮太は店の入口を破壊した原因でろう衝撃でガラスが割れ、バンパーを歪ませた中型トラックを視線に捉える。

 そのトラックを運転していたのであろう、くすんだネズミ色の雨ガッパで全身を覆い、フードを深く被っている小柄で不審な人物が、衝撃でフレームが歪みガタガタになった運転席の扉を無理矢理に開けていく姿が目に入る。
 その姿は亮太よりも背が低く、フードの影に隠れていても解るほどに真っ赤に血走らせた目と細い体型であり。
 その不審者は運転席のドアを蹴り開けて店内に降り立ち、その右手に持たれている【凶器】を見て亮太はこの不審者がこの店に何を目的としてやって来たのかを初めて理解させられる。


(あれは、サバイバルナイフじゃないか?!!)

 そう、不審者が大切そうに持ってきた凶器は良く通り魔事件等で扱われる刃渡り40㎝程の頑丈で、良く研がれて光輝くサバイバルナイフであり。
 不審者は目は血走らせたまま口元を歪ませたイカれた表情のまま、彼の一番近くのレジで頭から血を流して倒れている店長へと狙いをつける。

「あは……あはは……私が……私が待ちに待った解体の時間だぁぁぁ!!!」

 声変わりをする前の様な中性的な声の不審者は側で倒れている店長に向かって走り出そうとする。

「このっ……!! 止めろ!!!」
 
 その動きからコンビニの出入口近くで倒れている店長がいる場所と衝撃で自分が吹き飛ばされた位置から見て、自分が今から走って駆け寄っても間に合わないことは流石に亮太にも解っている。
 だから亮太は手元に転がっていた手のひらサイズの砕けたコンクリートの固まりを、おもいっきり通り魔の頭目掛けて投げつけた。

 本来ならば掛け声で気づかれて避けられるのがお約束なのだが、よっぽど通り魔は欲求不満だったのか、亮太が投げた石が亮太から見て不審者の左目に直撃したため、丁度店長にナイフが届くか届かないかの瀬戸際で刃物と供に彼の動きがピタッと止まる。

 一瞬の静寂の後、通り魔は石を顔にめり込ませたままゆっくりと亮太へと向き直る。

「つっ、……お兄さんが……私をイジメたの?」

 今まで店長に向けられていた通り魔の強烈な殺気が今度は亮太を打ち、亮太が投げてめり込んだ石を受けた通り魔が痛がる処か遊び相手を見つけた子供の様な笑顔でいる事から、亮太はこの不審者が絶対に関わっては行けない相手であったことを自覚する頃には遅すぎた。

「じゃあまずは、お兄さんと遊ぼうかな……!!
 」

 一瞬とも言える刹那の時ーー

「ねえ、」

 狂喜の化身と言える人間の皮を被った常軌を逸した物がーー

「お兄さんの心臓は」

 気付けば床に倒れている亮太の目の前に立っていてーー

「……どんな味がするのかな?」

 途端に亮太の背中に何かがのし掛かる感覚と共に、一気に背中が熱くなる。

 何故そうなってしまったか理由は解っている。自分は猛獣の尻尾を踏んでしまい捕食される草食動物が如く切り刻まれ、補食されようとしているのだと。

 亮太が最後に目と耳にした物は赤く染まった視界と、トンネルの中にいる様に反響して聴こえて来るうめちゃんの悲鳴。

 そして、数発の銃声であった。
・段落の始めに空白をあける事が出来る機能を見つけたので、修正しています。
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