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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

03.修練の時篇

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03-06 生存戦略

・ハシバさん関係の文章を修正しました。
ヒデヨシ達が大陸に移り住む前元々住んでいた土地の支配者であったオダ・ノブナガから、彼の刺客である利休を通して伝えられた通告を受け。
急遽ヒデヨシ達の間で大陸での自由権と立場を守るための会議がアサツユ城の会議室で開かれる事となった。

ドーナツ型の大きなテーブルが設置された会議室には街の代表者として、ヒデヨシ兄弟は勿論、今回の話を利休と共に持ち帰ってきたヨシハル、街の自治を担っているシゲル、戦士達を指揮するシカノスケ。

そして、もしもの時の為に機動隊装備の亮太と、その召喚される仲間達の代表者として同じくレザー装備と聖剣を腰に差したアルバインが会議に参加していた。

「やれやれ、流石はノブナガ様だ。ただ逃げ出した住民をわざと泳がせて動向を監視させ、最大限の利益を生むと判断したと同時に釘を刺しに来るとは……。はあ……」

大広場ではしゃいでいた朝のハイテンションなヒデヨシの姿はそこには無く、連休が終わってしまい、その姿はブラック企業への出勤日を明日に控えた社員の様に覇気の無い様子であり。

彼は手元に置かれた温かい緑茶が淹れられた湯飲みを左手で持ち上げて、ちびちびと飲んではため息を吐きながらどうした物かと考える。

「落胆する事はありませんよヒデヨシ殿!! 我々には戦国の武将達でも歯が立たない程の力を持った異国の軍隊を撃退した功績が有ります故!! ノブナガ殿が何をしてこようと、我等が立場は揺るぎ無い筈です!!! ガハッ、うわっちちち!!?」
「どわぁ!!? シカノスケさん何をしてるんですか?!」

そう言って、キラキラした瞳で励ましの声を挙げたのはアサツユ1ポジティブで、天然イケメンなシカノスケであり。彼は熱弁する勢いのまま、手元にあった熱々のお茶を飲んだものだから思わず吹き出してしまい、隣に座っていた亮太の顔面にレスラーの毒霧の如く吹き出してしまう。

一応、身体に防具を施していた事もあり。シカノスケの吹いた熱々のお茶で亮太が火傷を追うことは無かったが、防具はびしょびしょになってしまい。
そのお陰で慌ててアルバインが持ってきてくれた布巾で身体を拭いて貰えると言う御褒美を受けると言う幸運に恵まれる。

「大丈夫ですかマスター!? 今身体をお拭き致しますね!!」
「あっ、ありがとうアルバイン……」

その、まるでお風呂で美少女に身体を拭いて貰える様な素晴らしいシチュエーションを見て、思わずヒデヨシは目を輝かし(自分の身体にもお茶をかければ……ふふふ……)と言う妄想を働かせるのだが。

「ああ……亮太殿申し訳ありませぬ!! 若輩者の私のせいでこの様な辱しめを負わせてしまい、かくなる上は我が腹を裂くことでその怒りをお納めくだされ……!!」
「いやいやいや!!? そこまでしなくて良いですからシカノスケさん?!! 俺、全然怒ってませんし!! 恨んでもいないですから小太刀を納めてくださいよぉぉ!!」
「嫌! それでは亮太殿の面目が建ちませぬ!!! だから私がここでーー」

男泣きしながら自らの浴衣をはだけさせて、床に敷かれた畳に胡座(あぐら)をかきながら小太刀で切腹しようとするものだから、亮太とアルバインは目を丸くしてシカノスケを止めに入ると言う騒ぎを見て、ヒデヨシは胸元まで持ち上げていた湯飲みをゆっくりとテーブルに置き直す。

(シカノスケは誰もが認める槍の達人なのだが、考え方の振れ具合が1か100じゃからなー……。これは暫く続きそうじゃ……)

そんな事を考えている間に、会議室に待ちに待ったゲストがドーナツの穴の中に水面の様に現れたモニター越しに来場する。

《皆様、お待たせ致しました。新生ヴァルハァム王国代表のナバルとハシバ、ここに参上致し……あら、何やら楽しそうですね?》
「おおっ!! 来てくださりましたかナバル様!! 今日も変わらずお美しい!」
《あらあらヒデヨシ様。お口が旨いのですから困ってしまいますわ、うふふ》

そんなやり取りをヒデヨシ達がしている内に、部屋に響くナバルの声を聴いた亮太達は慌てて席に戻り、挨拶を交わす。

「おっ、おはようございますナバルさん!! お見苦しい姿を見せてしまい失礼致しました!!」
《はい、おはようございます。亮太様。皆と仲睦まじい姿を拝見させて頂けて、私は安心しました》

慌てて頭を下げて謝る亮太達にナバルは気にしていないとばかりに口元を片手で覆いながら、可愛らしく微笑みながら挨拶を返してくれ。
そんな彼女の後ろ隣に控えているのは30代程までに若返り、日焼けした肌に良く鍛えられた身体に白髪のオールバックと言う歴戦の戦士特有の風格を持つ軍師ハシバであり。

彼はこれからの話し合いが国を左右する問題である事もあり、渋い表情をしている。

《ごほん……。ナバル様、そろそろ》
《ふふっそうですね。それでは話し合いを始めましょうか皆さん?》
「「はい、王女様!!!」」


色々と物理的に揉め会ってはいたが、その後の話し合いはとんとん拍子に進んでいった。

先ず、今回のノブナガ側の要求から見て、単純にノブナガ側が現在猫の手を借りたいと考える程に切羽詰まっている状況にある事と、彼等がいざと言う時の為にこの大陸を避難所にしたいと言う思惑があるんじゃ無いかとナバル王女は見抜く。

《小さな国が多くの土地と民達を支配する事は手に入れた民達が友好的であったり、支配者がよっぽど国を繁栄させる力が無い限りは反発が強まってしまい。やがては戦いに発展してしまうのが落ちですからね……》

その発想は半分程が当たっており、世界を見る目が有りはするが人材不足に元々苦しんでいたノブナガ側は、桶狭間で返り討ちにしたイマガワ軍の兵力を亮太が学んでいた忠実通りに減らすのではなく、自軍に引き入れてしまったために。

元々痩せた土地で、作物が育てにくい尾張の地で増えた兵達を養うための食料問題や、各地域の指揮系統の整理等でてんてこ舞いとなっていて。

尚且つ、隣接している国との戦いも控えている為に元々足りていない兵糧は分散してしまい、幾らあっても全然足りないと言う墓穴を掘った状況となっているらしく。
欲張って膨らませ過ぎた風船のように、破裂寸前にまで追い込まれる程に強大な力を持ってしまったが故に滅びようとしている典型的な国の例だと言い切る。


「なるほど、と言うことはこのままノブナガ殿の要請を無視してしまっても、俺達には余り脅威とはならないと言う事ですな……」

巨大な大陸で激戦を乗り越えてきた故に説得力のある王女の話を感心した様子で聞き入っていたシゲルは言葉を返す。

《ええ。例えノブナガ殿の国が滅びたとしても結局の所自業自得の一言で片付く話しですし、敗戦を期して、居場所を失った彼等がこの大陸を奪いに押し寄せて来たとしても、我がヴァルハァム水軍が御相手をすれば良いだけの事ですしね……》

その話を聞いて対立を恐れていた者達は安堵していたが、かつて足軽としてノブナガに使えていた過去があるヒデヨシが複雑な表情を見せるなかで。話の内容はもしノブナガに協力する事がこれからどの様な影響を及ぼすのかを考える事となる。


「所でヒデヨシさん。俺はこの世界における日ノ本と言う国の特殊性と、話の接点になっているノブナガと言う人がどんな人なのか知らないんだ。良かったらそこを教えて貰えると助かるんですけど」

「うむ、そうじゃなぁ。先ず、日ノ本と言う国についてはじゃが、日ノ本には各地域を支配する大勢の王様の様な役回りである【大名】達が土地を管理し、その大名達が管理している土地にはワシらの様な農民達が暮らしておってな。
そこで暮らす者達は勿論戦争が起これば足軽として位の高い武将達と共に親の代から引き継がれて来た土地を守る為に戦地に赴くわけじゃあ」

その現代で言えば県や市が互いに生き残りを掛けて戦っていた戦国時代の常識に、現代の戦争とは縁がない日本で生きていた亮太は思わず解ってはいたが、ぞっとさせられる。


「そんな戦いが絶えない日ノ本の現状を嘆かれていたのがノブナガ様と言う人物でな。
殿は戦いが続き疲弊している日ノ本と、その民を救う為に暴力を禁じ、戦をやめ、大を保ち、功を定め、民を安んじ、衆を和し、財を豊かにすると言う七つの掟があり。
それら全てを兼ね揃えた者が天下を治めるに相応しいという意味である【天下布武てんかふぶ)】を掲げられた方でな……」

その後のヒデヨシの話を纏めると、将来訪れるであろう外国との交流が本格的になった時すら見据えていたノブナガは、古い考えに縛られている支配者達と真っ向勝負を行って、日ノ本を一つの国として統一する為に奮闘していた小国の大名であり。

ノブナガは自らの目的のためならば有無を言わさずに突き進み、やるべきと判断した事ならばあらゆる手段を用いて達成する有言実行な人間で。

その突き進むが故に反感を持つ者達も外部だけでなく身内にも敵を多く作ってしまい、その反対者に対して迎え撃つだけの兵力も地盤もまだ築き切れていないノブナガはその権力と国を守るために、連日綱渡りの様な日々を繰り返していた為に国は不安定となり。

何度か住んでいた土地を敵国に脅かされて危険を感じていたヒデヨシ達は海を横断して、この大陸に移り住むと言う結果に結びついたと言う。

「成る程なあ。でっかい夢を持つ革命家ではあるけどもその考え方に周りがついていけてなくて、じゃあ自分一人ででもやって見せると行動したら奇跡を起こしてしまって。身内には叩かれ無くなったけれど、今度は外から叩かれている感じか……」

《尚且つ、ノブナガ殿がかなりの問題児とされている以上、数少ない同盟者として我々が手を組むことになれば彼の思想に合わせて行動しなければ行けなくなるかも知れませんし。下手をすれば、不必要な敵を増やしてしまうと思います》

そう分析したのは、激戦を乗り越えてきた軍師ハシバであり。彼は次いで妥協案も出す。

《ですので、我々が協力するとするならば。我々が暮らす大陸が安定して余力が生まれたときにその余力分を贈り物として差し出し、見返りにこちらの要求を飲んで貰う程度でよろしいかと……》

その提案に皆が納得した様に頷く中で、ハシバは我慢する事が出来なかった様に辛そうな表情でだめ押しの言葉を吐く。

《皆さん、忘れないでいて欲しい事があります。誰かを懐に招き入れると言う事は、自分達がその者達に対しては無防備な姿を晒していると言う事でもあります。
現に、今回貴方達に接触を図るために遣わされた間者を貴方達は易々と大陸に受け入れてしまい、発展している街や、設備等の多くの情報を漏らしてしまいました。それだけでもノブナガ殿に取っては大きな収穫となる事でしょう》

その言葉を聴かされて、何だかんだ様々な訓練を受けた兵士と言うよりも只の農民の集まりであったヒデヨシ達は、自分達が犯していたその重大な失敗に気がつかされて顔色を青色に替える。

その様子を見て、ヒデヨシ達の認識が変わった事を見届けたハシバは依り思いを引き締めさせる。

《これは何ら大袈裟な事ではありません。巨大な武力を持った大国であってもその力に溺れ、油断して何の対策や考えも無しに来るものを両手を広げて全て受け入れ続けていれば、やがては屈強で千人をほふる力を持つものであったとしても両手を塞がれてしまう様に。
今まで見えていた筈の目線の先を、持たされた物に視線を遮られてしまえば、簡単に真っ直ぐ進む事すら出来ない様になり、やがてはその重みで身動きが出来ない只の的に様変わりしてしまうでしょう。
その後はそのまま敵達の傀儡となるか、最悪の場合その小さな失態は国を蝕み滅ぼす原因となりましょう……》
《ハシバ……》

その話は決して只の脅しではなく、現に国の転覆を狙う悪者も含めた全ての人々を受け入れてしまった結果、その支配権を奪われてしまったヴァルハァム王国の軍師として奮闘してきた者の大きな後悔が滲み出た様な忠告であり。

その事を感じ取った会議に望んだ者達全員は、最高の軍師として奮闘してきたハシバの思いと知恵を確かに受け止め。彼等のその表情には、大切な家族達を守ると言う決意が宿っていた。

《でしゃばった真似をして失礼致しました……》

そう言って、自分が思っていた以上に感情的になっていた事に気がついたハシバが慌てて頭を下げるが、彼に対して非難を浴びせる者は無く、代わりに亮太達からの熱い拍手が贈られる。

「ハシバ殿!! 我等の様な農民上がりの素人に、本気で教えを項てくれた事!! このヒデヨシ、決して忘れはしません!!!」
《ヒデヨシ殿……皆さん、感謝します……》

かくして、約一時間に及ぶ会議の末に亮太達はノブナガとのこれからの関わる上での結論として、ノブナガ達に対する敵対の意志は全く無い事を伝えて貰う事を前提に。

亮太達はノブナガだけに限定するのではなく、日ノ本全体を発展させる為に尾張の様に栄養の薄い土地をより良くして作物を育て易くする様な支援はするが。交流を主とした外部からの客人や、難民、商人等者達の受け入れは現時点では禁止する事。

また、武力支援等に関してはまだノブナガの事を深く知っていない事と、大陸の安全の為に簡単には承諾出来ないと言う事を記した手紙が完成し、纏められる事となる。

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