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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

02.アサツユ国建国篇

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02-14 それぞれの国へ

・軍艦の速力を変更いたしました。
イスカ姫と転生者としてその命を取り戻した母である王女ナバルとその兵士達で構成された新生ヴァルハァム王国の者達は、王女を暗殺し、その暗殺した者達により影から支配されている祖国の傘下から独立し。

本国を奪還する為に動き出す一歩として、以前までは植民地として扱っていた本拠地に戻る為に動き出そうとしていたのだが……。


「帰る為の足になるものが無いと……」
「そうなの! だから申し訳無いんだけど、亮太さんの召喚出来る物から御借りする事は出来ないかな?」

激戦の末に大破したガレー船と陸路を進む為のチャリオットの代わりになる移動手段が無い為に、彼等の代表者件、交渉人である綾瀬がヴァルハァム王国の兵士達を召喚する為に訪れていた西の草原からの帰り道で亮太の側に駆け寄り、申し訳なさそうに亮太と交渉を行っていた。


「その話、俺は全然構いませんよ! 元々彼等をテーマにしたアイテムと共に生活に必要なものは全て差し上げる予定でしたし。それに……」

そう言いながら亮太は召喚用の20インチの画面を出現させ、その画面を操作して王女ナバルの説明欄を表示させて綾瀬に見せる。

「これは……」

そこに表示されていた説明欄を綾瀬は目を通し、驚かされる。


◇王女ナバル《Rank,UR》

《能力》
①ヴァルハァム王国に関わる、カードにより登録されストックされたものを制限なく召喚する事が出来。召喚士に危害を加える様な指示以外の事は指示を出すことが出来る。

②味方の能力を強化する事が出来。本来では取得出来ない様なスキルを目覚めさせ、身体能力の限界突破も可能とする。

③召喚されるものの能力を全て把握する事が出来。その使用法等を配下と共有する事も出来る。


「これってつまり、亮太さんの召喚能力に似た力を王女様が持っているって事だよね!? 大丈夫なの?」

その簡易版召喚士の様なとんでもない能力を見て、思わず声をあげてしまう綾瀬とは対照的に亮太は落ち着いた様子で補足を入れる。

「大丈夫。ナバルさんはただ召喚された人ではなく転生者だから、怪しい行動をしていたり、考えていたとしてもトレノさんが監視しているみたいだし。俺が念じれば、ナバルさんは引き戻す事が出来るから」

「むうー……。私も疑いたい訳じゃ無いけど、権力を持った人は後々怖くなる可能性もあるから……。イスカちゃんが喜んでくれているだけに心配なの……」


心配のためか、胸に両手を添えながらそう語る綾瀬は前の方で嬉しそうに母であるナバルと手を繋いで談笑しあっているイスカ姫の姿を見つめながら語る。

その口調はおちゃらけているが立派なお姉さんと言える綾瀬の姿に、亮太はマリナとイスカ姫だけによらず、親衛隊達にも慕われている事を何となく感じとった亮太は自分以上に難しい環境で今も闘い続けている先輩の姿に敬意を改めて抱きつつ。自信に満ちた様な表情で力強く後を押す。


「大丈夫。召喚した時からあの人の感情が少しずつ流れ込んで来ているんだけど。ナバルさんは純粋に辛い思いをしている夫と国民を救いたいと考えているだけで。復讐をしたいとか、独裁者になりたいと言ったような感情は考えていないみたいだからさ」

「わかった。亮太さんがそこまで後押しをしてくれるなら私も信じてみるよ。ありがと」
「ど、どう致しまして……」

一つの議題は保留と言う形で解決され。可愛らしい微笑みを浮かべた綾瀬に思わず照れて亮太がどもっている間に、気がつけば一団はお昼前にアサツユ国に辿り着く事が出来。

アサツユ国からは風の魔石により吹き飛ばされた家を住民達が建て直している途中であり、周辺には木材に釘を打ち付けている音と木をノコギリで整形している音。そして住民達の楽しそうな話し声や、鼻歌も聴こえてきていた。


その光景を見たかつては彼等を命令とはいえ苦しめていたヴァルハァム王国の人達は複雑な表情で集落の中へと入って行く。すると、建設作業を行っていた人達も申し訳なさそうな顔をしている彼等に暖かい声がかけられていく。

「おうおう、またぞろぞろと大勢のお客さんが来たもんだな!」
「いらっしゃい!! 遠い所から来たんでしょ? ユリ、お客さん達にお茶の準備をするわよ!」
「はーいお母さん!!」

その反応の良さに200人近いヴァルハァムの人達は戸惑っている間に、歓迎してくれているアサツユの人達のペースに次第に飲み込まれていき。

最終的には言葉は通じないが、お互いにジェスチャーや表情等でコミュニケーションを取っている光景がアサツユ国のあちこちで広がっていく。


その穏やかな光景を見て、大規模な反発が起こるかもしれないと恐れていた亮太達とイスカ姫達は胸を撫で下ろす。

「良かった。昨日の宴会の途中で話はしていたから大丈夫だとは思っていたけどさ」
「昨日までは家族を浚われたり、二年間辛い思いをさせられていたせいでヴァルハァム王国の人達に反感を持っていて、同盟に断固反対している人達もいたものね……」
「それに関しては、まだもう少し時間は掛かりそうだね……」

亮太は歓迎しているアサツユの人達の他に、歓迎処か視線にいれないように黙々と家の柱を石の土台の上で組み合わせている屈強なシゲルさんを含めた男達を視野にいれつつ。最初の内は仕方がないことだと割り切る。


「問題はこれからの話だからな……。さて、早速ヴァルハァム王国の人達が無事に拠点に帰るための乗り物を用意するとしますか。ナバル様、少しよろしいでしょうか? あっ……。日本語は通じないんだっけ」

その亮太の言葉を愛娘であるイスカ姫と手を繋いでいるナバル王女はくすりと笑ってから、驚くべきことに亮太達と同じ日本語で返事を返した。

「大丈夫ですよ亮太くん。貴方に召喚された私には言葉を使わずとも、テレパシーの様に相手の心に直接思いを伝える事が出来ますので」
「何ですって?! いや、それならとても助かります。いちいち言葉を学ばないと御互いに会話が出来なくて、綾瀬さんだけでは大変だと感じていましたので」
「ふふふ、お役に立てた様で良かったわ。因みにですが、今私達が交わしている言葉も私の能力を通して皆さんの心に届いていますので。よしなに」
「えっ?! そんな中継もする事が出来るのですか?! 流石は王女様ですね……、お見逸れしました」

王女ナバルの言ったとおり、王女が受け取った言葉の意味が脳内で変換されて周囲一キロの人々に会話がテレパシーで直接脳内にささやく形で送られている事を証明するかの様に。

側にいたヴァルハァムの人達だけでなく、先程までは(しか)めっ面で釘を軽快な音と共に打ち付けていた男達も口にくわえていた釘を驚きの余りに地面に落として、思わず後ろに振り返り。
穏やかな笑みを浮かべている女王に視線が吸い込まれていく。


「アサツユの皆様。私はヴァルハァム王国の第9代目王女であったナバルと申します。昨日から何度も伝えられているかも知れませぬが、我がヴァルハァム王国は現在他の王国の者達により実権を握られており。とても危険な状況にあります」

王女のその真剣な声と雰囲気に自然と大勢の視線は集められていき。その事を確認した王女は、一人一人に訴えかけるかの様に言葉を続ける。

「なので奇跡的に彼等の支配している大陸から離れている、今私達が立っている独立した大陸を拠点にし、私達は元々は王国の民だけではなく全ての民達と平和な関係を保とうと努力していたかつての祖国を取り戻すために闘いたいと考えております! そこで、皆様に一つお願いがあるのです」

「お願い?」

その数人の人達がつい言葉に出してしまった、皆の内心を表す言葉に王女は「ええ」と軽く返事をしてから説明する。

「今日から私達がこの大陸の上部に建国する新生ヴァルハァム王国は改めて、多くの犠牲を払わせてしまったアサツユ国の皆様に謝罪をさせて頂きたいと同時に。共に手を取り合い、困難を乗り越えられる様な友国となるためにあらゆる努力と協力を惜しまず。
これからは御互いに敵対するのではなく、精神相違(せいしんそうい)向き合っていきたいと考えております!」

口からでた出任せとは思えない、王女の情熱の籠められたその言葉を聞き。先程までは見向きすらしようとしていなかった者達も王女の次の言葉を無意識に聞き入る。


「ですのでどうか……我々の心の内を今は信じることは出来ないとは思いますが。我が国は皆様の見ているその目前で改めて行くこととなりますので、どうか、見極めてください。お願い致します」
「何て熱い思いを宿した王女様だ……」
「嘘を言っている様には見えないぞ」

その王女から出たとは思えない程に低姿勢で、尚且つ彼女の本気の覚悟を感じさせる言葉にアサツユ国の人達は身体に電気が走った様な衝撃を受け。

「ああ、ナバル王女様が本当に帰ってこられた!!」
「懐かしや……王女様は何時もその燃え上がる情熱で、不可能と感じた事であっても我々国民の心をたぎらせて可能なのだと伝えてくれていたのでしたね……」

その堂々とした威厳ある王女の懐かしき後ろ姿を見ていた新生ヴァルハァム王国の民達は、心に彼女の情熱が燃え移り。必ず王女の思いを実現したいと言う様な情熱を心に宿す。


「皆さん、私の話を聴いてくださり感謝致します。亮太くん」
「はっ、はい!! 何で御座いましょうか陛下?」
「私達は予定通り、一日我々が空けてしまった拠点へと急いで戻り。あの土地が植民地として機能しているかをずっと監視していたイザベラの手の者達を急いで捕らえようと思ってはいるのですが。
私達の民の中には貴方に恩を受け、亮太くんに付いていきたいと心から志願している者達も居ましてね」

その紹介の言葉を待っていたかの様に、王女の後ろに横一列で並んでいたのは驚くべき事に亮太達と激戦を繰り広げたラムセスとガレー船に乗っていた男達25人。そしてイスカ姫の親衛隊であったであろう、気の強そうな一人の女兵士が並んでおり。

その視線は亮太に集められている。

「どうかしら。彼等は私から見ても皆、とても良い特質を持った優秀な人達なのですが」
「とても嬉しいお話であるのですが、良いのですか? これから王女様はお忙しくなると思うのですが……」
「あら。私の心配してくださるのですね。ふふ、大丈夫ですよ。私も亮太くんの様に力を頂いておりますから、現在の民達だけで目的を達成する事が出来るかを判別する事は出来ていますから」
「あはは! そうでしたか、解りました! では陛下の大切な家族を僭越(せんえつ)ながら御借りさせて頂きます」
「はい! よろしくお願いいたしますね?」

その王女と言うよりも、弟や妹を自慢する姉の様に誇らしそうに語る王女に亮太も思わず微笑みを浮かべて、その提案を承諾する事となる。


彼女達がそうこうしている間に時間は過ぎており。それを察した王女ナバル達は帰路に着くための用意として昨日海戦に参加していた兵士達185名、亮太により改めて召喚された軍師ハシバを含めた236人の様々な能力を身に付けた兵士達。

そしてイスカ姫と綾瀬を含めた424人と言う全校生徒レベルの大勢の人達をどの様にして拠点まで輸送するのかと、皆が王女ナバルに注目する中で。

彼女は亮太と同じ様に目の前の空間に手を当てて、タブレットの様な画面を出現させ。皆が色々な意味で驚きの声をあげている中、楽しそうにメニューを操作して亮太が事前にカード召喚で手にしていた、高速カーフェリーを連想させる巨大な風魔石機関式大型軍艦《Rank,SR+》2隻を沖合いに召喚する。


この魔石機関式大型軍艦は海をオール等を使い、人力で漕いで進むガレー船とは違い。

風の魔石100個程を動力とした魔石機関を使用して、船の後方左右に二個ずつ備えられている噴出ノズルから高圧の風を海中に噴出する事で推進力を得る、アクアジェットならぬ、ウィンドジェット推進すいしん方式の船であり。

船の形状は中央の主船体と両脇の副船体3つの船体をデッキで繋いだ3階建てであり、その未来感溢れる木製の三胴船(トリマラン型)と言う形式で。3階建ての船内には最大380名近くの人間を収容する事が出来る。


そして尚且つ、全長47.8m・最大幅7.5m・最大速力40ノットと言う大きな船体には武装はまだ積まれてはいないが、その性能はこの世界においてどの船舶も凌駕するとんでもないスペックを誇り。

その船の動力として働く事になる風の魔石を魔道師6人にでコントロールする事により、周囲10キロ圏内のものを船から放出する風に当てて、その物体を観測する事によりレーダーの様に活用し。

船の周囲にも風を纏わせて20cmの防壁を形成する事で、防御にも活かすことが出来るようになっている。


その様な高性能な二隻の大きな船の登場と、王女ナバルが続けて乗船する為の大型ガレー船も座礁(ざしょう)するかしないかの所に人数分次々と召喚して行くものだから、その様子を陸地から見ていた者達のボルテージが上がる中で。

亮太がこの大陸に来てからずっと側でメイド件サポーターとして協力してくれていたマリナと亮太はこれからの事で話し合っていた。


「マリナ。確か生前飼い主であった綾瀬さんとは、二年間再開することを我慢させられて来たんだよな? 良かったら、家族水入らずとは忙しくて行けないかも知れないが。
だからこそ暫くは一緒に行動してみるのはどうかな?」

その考えはマリナの中にも有ったようで、少し難しそうな顔をしながらマリナは亮太を見上げながら胸の内を伝える。

「確かに。この姿になってまでずっと頑張って来たのは、お母さんと再開する為だった……。でも、亮太は平気なの? 私が居なくなれば同じ立場で支え会える相手はいなくなってしまうのよ?」

そのマリナの質問に内心孤立するのを恐れていた亮太は一瞬顔をひきつらせそうになるが、無理矢理そのひきつりを笑顔にすり替えて誤魔化し。しゃがみこんで小学生程の身長のマリナに視線を合わせて語りかける。

「確かに。マリナがいなくなれば、きっと物事が二人の時よりも流れにくくなると思う」
「そうでしょ? だから私はのこーー」

それ見たことかと、マリナが慌てて綾瀬との合流を諦めて残る事を告げようとする前に、亮太がすかさず会話に割り込む。

「でもなマリナ? それだと後々、マリナが色々な理由で共に行動を取れなくなった時に俺はどうなると思う?」
「それは……」
「きっと、一人で行動した経験が無いために、焦ってしまい余計な事をして自分だけによらず周りの皆にも危険な目に遭わせてしまうかもしれないと思うんだ。
だから、今アサツユ国は比較的平和な内にそう言った事を俺が経験する機会でもあると思うから。俺を助けると言う意味で、綾瀬さん達を助けに行って貰えないかな?」

その何ともこじつけた様な亮太の話を聴かされてもマリナは亮太の事が心配で堪らないらしく、もじもじと「でも……」と小声でつぶやきながら、他の気になる点を話そうとした所に綾瀬とヒデヨシの二人が何かあったのかと気になった様子で交じる。


「どうしたの二人とも? そんな別れ話を聴かされたカップル見たいに辛気臭い顔をして?」
「なんじゃ。亮太が若いおなごに手を出しおったのか? かわいそうにの~う」
「ななななな!! 違うわよ!!! ちょっと話し合いをしていただけで、カカカカップルだなんて……!!」

その二人のちゃかしにマリナは慌てて顔を真っ赤にさせながら、量腕をブンブン振りながら否定し。その様子が面白かった為に一同が笑い声をあげた者だから、周りにいた数人の者達の視線も集まっていた。


「ふむふむ、なるほどのうー。要するに里帰りじゃな? 良いではないか、良いではないか!! 親と子供は何時までも一緒に居られる訳ではないし、ここ最近は激戦が続いておったのだから骨休みはした方が良いぞ?」

「うっ。でも亮太は……」
「ははは!! 俺だってマリナより10才以上長生きしている大人だぜ? それに、ここの大陸には大勢の家族達もいる。安心して行ってこいよ、マリナ。別に一生の別れじゃないんだからさ?」
「……わかった。じゃあお言葉に甘えさせて貰うね?」

穏やかな声でマリナの頭を優しく撫でながら説得する亮太の言葉にマリナもついに折れ。その回答をやっと聴けた亮太は頭を撫でつつも、満面の笑顔でマリナを褒める。


「うん! 俺達の間に遠慮はいらないから、たっぷり綾瀬さんに甘えてきな。マリナが帰って来るまでに、アサツユを立派な国に俺達がしておくからさ!」
「うん……楽しみにしているね。亮太」

そう言って照れ臭そうに頬を染めながら、亮太に素直な返事を返したマリナは。亮太の撫でる手が頭から退けられると共に側にいた綾瀬の元に駆け寄り、その動きに生前見覚えがあった綾瀬は嬉しそうにマリナを正面から抱き上げる。


「お母さん……ただいま」
「うん。お帰りなさい、マリナ」

その親子の様な二人の様子には違和感は無く。二年振りに綾瀬の胸元に包まれたマリナは、亮太が見たことも無いほどに幸せそうに微笑みを浮かべていて。

亮太は、マリナが本心ではどれだけこの時を待ちわびていたかをたった数日の付き合いしかしてはいないが感じ取れた。

「綾瀬姉様ー!! 最後のガレー船が出航しますよー!!! お早めにー!!!」

そんな二人を浅瀬に浮いている大型ガレー船に乗っているイスカ姫が慌てて自分の事を呼ぶ声を聴き、感傷に浸っていた綾瀬は穏やかに変事を返す。

「ありがとうイスカちゃん。今行くからね」
「はい! ちゃんと私の隣にスペースも空けて……あれ? その方は確か……」
「うん。私の可愛い娘だよ?」
「え゛?!! それってどういう事ですか姉様!!? 話の内容によっては私と姉様の関係が……ああ……目眩が……」
「ああ! 姫様が振られた!!!」
「この泥棒猫!!」

そんな賑やかなやり取りと、聖人の様に足元に氷の魔力を放出しながら海面を歩いてガレー船に乗り込んだ綾瀬に皆から歓声があがると言うやり取りを挟みながら、綾瀬達を乗せたガレー船は沖で待機している大きな軍艦の船体後部に設けられた、搬入用のサッカーのゴールの様にハッチが解放されている所から軍艦へと引き上げられていき。

その姿はゆっくりと閉じられて行くハッチにより、海岸にいる亮太達には完全に見えなくなり。

それを合図とするかの様に、合金並の強度を持つ謎の木で建造され、高速カーフェリーの様な形状をしている二隻の軍艦の後部部分の左右に設置されている煙突から、風の魔石を利用している為に生じるエメラルド色の光の粒子が吹き上がり始める。


その様子を眺めていたアサツユ国の人達は、オールも帆も張っていない平たい船がどうやって海に出るものかと見守っていた。

「おいおい……。まさか潮の流れに身を任せてずっと待つ訳じゃ無いだろうな?」
「あんなにでかい船だ、簡単には動かんだろうしな……」

そんな観客達の疑問に答えるかの様に、船体を前進させる為のドラム缶程の大きなジェットノズルから猛烈な風の噴射が開始され。ゴボコボゴボ!! と言う猛烈な風により海水が後方に押される猛烈な音が聴こえ始めたかと思うと。軍艦はゆっくりと前進を開始し始め。


その様子を海岸から見ていた人達から驚きの声と歓声が上がる中で、突然船の方からヴァルハァム兵士達の感謝を伝えるかの様な軽快な角笛が鳴らされ。続いて船の後部デッキに手の空いている者達が整列して、皆が手を振っており。その中にはマリナ達もいる事に亮太は気づく。

「マリナーーーー!!! 俺達の事は気にせずにゆっくり楽しんでこいよぉーーー!!!」

その声に気づいたマリナは思わず隠していたキャラメル色の耳と尻尾を出して、亮太に手と尻尾を千切れんばかりに振ることで変事を返してくれた。

やがて25ノット程の巡航速度に到達した二隻の軍艦はみるみる内に亮太達の視線から離れていってしまい。彼らを見送った人々にヒデヨシは明るく声をかける。

「よし! ワシらも負けておれんぞ!!! ワシらの国をこの大陸一の……いや、世界一の国として見せようぞ!!! 覚悟は良いか皆のもの!!」

その煽りに海岸に集まっていた者達は、海の波の音すら書き消す程の大きな声と、生き生きした表情で答えて見せ。

辺りには、春の爽やかな風と昼の暖かな日の光が彼らの新たなる旅立ちを見守っている様であった。



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