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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

02.アサツユ国建国篇

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02-04 アサツユ村生活環境向上プロジェクト②

※・誤字の修正をしました。・防衛戦時の猪討伐の数が流石に多すぎたので800にしました。(7/25)

・作中で大陸のモデルとなっている中部地方を調べたところ【植民地】として描かれている名古屋港から、亮太達がいる【アサツユ村】事、南知多町の豊浜まで整地された道であれば50キロ(片道、10時間程)程度の距離である事が解りましたので、説明の修正をさせて頂きました。
亮太達が村の西側の視察に向かっていたそのころ、アサツユ村から遠く離れたヴァルハァム王国の植民地では慌ただしく人々と物資が入り乱れていた。

それは800頭の牙猪を返り討ちにしたアサツユ村攻略の為であり、彼等は所有している3隻の内2隻の大型ガレー船の出港準備に追われていた。

「準備の方はまだか? ぼやぼやしていると日が暮れるぞ!!」

それを船の上から取り仕切るのは30代なかばの若き軍団長ラムセスであり、勇ましく兵士の鎧を身に纏った彼はガレー船に様々な大陸で捕らえてきた優秀な漕ぎ手達50人と武装した部下20人をワンセットとして船に乗り込ませており。

軽量化の為にオールを漕ぐ者のスペースしか持たないガレー船の船内には一日分の食料と水が船の後部に置かれ、船首には攻撃の為に設置された投石機と火薬弾に、大弓と矢、更に剣等を続々と積まれていき。

地上では陸路からの専攻隊として牙猪2000頭、馬に引かせる二人乗りのチャリオット300両とそれに乗る600人の兵士達、そして補給隊としてガレー船の分の食料も積んだ牙猪に荷馬車を引かせた物を100両を用意させた。


その一国すら傾けさせられるであろう自慢の戦力を見てラムセスは思わず獣の様に唇を釣り上げ、獰猛な笑みを浮かべる。

「ふっ、ふふ。……これがこの大陸を制覇する最後の戦、せいぜい楽しませて欲しい物だが。まあ、結果は考えるまでも無いだろうな」
「はっはっはっ随分と油が載っておるようじゃのう、ラムセスよ」

そんな悦に浸るラムセスに出撃前の挨拶に来た軍師であるハシバが杖をつき、空笑いをしながら陸からスロープの様に架けられた渡し橋を渡ってやって来た。

その姿を見て、慌てて作業をしていた兵士達が地面に身を屈めて敬礼をしようとするのだが、ハシバは杖を持っていない左手を挙げて制止する。

「よいよい。ワシの事は気にせずに準備を進めてくれたまえ」

その言葉を聴いた兵士達は軽く頭を下げてから再び元の作業へと戻っていった。

「ラムセスよ、ワシらは先に出立(しゅったつ)するが、間に合いそうか?」
「大丈夫でございます軍師様。後、数10プルもしない内に出港出来ます」
「しっかりと物資と武器は積んだか? 相手は未知数の相手じゃ。情報が無い今、無理は即敗北に繋がると解っておるか?」

そのたがが廃村寸前で、冒険者が数名いるだけのアサツユ村に余りにハシバが慎重な態度であったため。若く、強国に属していたが故に敗北を知らないラムセスは思わず苦笑いしてしまい、穏やかに答える。

「そこまで心配されなくとも大丈夫で御座いますよ、軍師様。彼等の様子を偵察兵に確認させておりますが、彼等には小さな小船と農機具しか有りませんでした。大丈夫です、必ずやこの地を王に捧げられるよう奮闘します」

その力強い言葉を聴き、ハシバは少し肩の力を抜くことにした。

「そうか、うむ。ではまた勝利の美酒を飲む時まで」
「はい。ではその時まで」

御互いに胸に右手を当てるヴァルハァム王国式の敬礼を二人は交わした後、二人は陸と海に別れる事となる。

「……必ずや、必ずや我々に勝利を引き寄せて見せます」

その後ろから聴こえたラムセスの言葉を耳に入れつつ、自分を待つ騎兵隊の元へと歩くハシバはぼんやりと考える。

(どうにも良くない風が吹いておる……。だが、その流れを変えてこそ価値がある勝利と言えるのかも知れんな)


不可解な気の流れに導かれる様にヴァルハァム王国の陸軍と海軍は午後1:20分頃、大軍を従えて南50キロ先にあるアサツユ村へと二日間と言う長き行軍を開始した。


しかし、その姿を思わしく見ていないヴァルハァム王国の者と女性がいた。

「……ああ、遂に行ってしまわれたのですね」

その女性の名はイスカ・ヒクソス。セミロングの黒髪で日焼けした肌に、幼さの中にも品のあるその顔立ちは猫の様であり、頭を覆うフードが付いたクリーム色のサラサラとした生地の身体を包む天布を身に纏う154㎝程の幼い少女ではあるが。

この少女はヴァルハァム王国の若き姫であり、彼女は砂漠地帯が広がり資源が余り取れない為に征服と言う名の略奪を繰り返している母国を何とかして支援したいと思い、単身で遠征軍に同行した優しき姫であったのだが……。


「ごめんなさい、綾瀬お姉さん……。私は彼等を止める力は何もない事をこの大陸に来てから解っていた筈でしたのに……」

軍隊と共に上陸した彼女が経験した物は、民を救いたいと言う意思とは真逆である、ヴァルハァム王国軍による力による迫害に次ぐ迫害であり。彼女に許されたのは、民を納める上での簡単で尚且つ、片手で数えられる程度の規則を制定しただけであった。

だが、港が一望出来る窓辺の椅子に座り、悔しそうに両手で膝を握るイスカの両手をひざまずきながら、優しく両手で包み込む女性が彼女の前にはいた。


「そんな事は御座いませんイスカ姫様。イスカ様は捕虜にされた人達を守るために最低限の人権を確保してくださり、迫害を強く罰してくださいました。だからこそ私も今日までの二年間姫様と共に戦う事が出来ました」

「綾瀬お姉さん……。うっ、ううう……」

その言葉で心が軽くなったのか、イスカ姫の涙腺も緩んで涙がポタポタと膝元に落ちていく。そんな彼女をより一層励ますために綾瀬は子供をあやすお母さんの様に彼女を優しく抱き締めて、目を閉じながら背中をポン、ポンと優しく叩いていく。

「大丈夫……アサツユ村には私の仲間がいるから安心してください。必ず、良くなりますから」
「うん、うん……」

そう言って励ましの言葉を受けたイスカは落ち着きを取り戻し、事前に話し合っていたある計画を開始する。

「それじゃあ、捕まっているアサツユ村の人達を解放しに行きましょう、綾瀬お姉さん。それが、お姉さんとの約束でしたからね」

陰が落ちた彼女の爽やかな笑顔に思わず綾瀬も笑顔で応じる。

「うん! ありがとうイスカちゃん。……あっ、ごめんなさい。つい素になっちゃいました」
「あはは! ううん、良いのです。綾瀬お姉さんならば私は何をされても構いませんから……」

そんな爆弾発言を赤面してもじもじしながら言うイスカに思わず綾瀬も我慢出来ずに抱き締めてしまう。

「もー、可愛い顔でさらっとそんな事を言うんだからこの子は~。かわいいなぁーもー!!」
「ふふっ、ごめんなさい。では、私の部下に命じて捕虜さん達を宮殿に集めて貰いますね!」

そう言ってトテトテと走っていく若き御姫様を見送りつつ、綾瀬も自分に課せられた仕事をこなしていく。

「うん! お任せするね! さーて、私も早速連絡しないとねー。亮太くん達がずっと待っている筈だから」

そう言って綾瀬からトレノに送られたメールから事態は大きく動き出す。


ーーーーー◇ーーーーー


ヴァルハァム王国軍が進軍を開始したその頃、5キロ程牙猪達に整地された道をパジェロで走り抜けていた亮太達は一度足を停めて、大体の防衛ラインの目星をつけていく。

「うーん。村から程よく離れているし、【最後の(とりで)】を造るのはここら辺で良いかな?」

そう言って車内から辺りを見渡し、そう告げた亮太にマリナが声をあげる。

「なに最後の砦って?」
「良かったら戦国時代を現役で戦っていたヒデヨシさんに聴いてみた方が良いかもよ?」

その話の振られように思わずヒデヨシは顔をしかめながら説明してくれた。

「おいおい、それは戦いから離れたワシへの当て付けか亮太よ? 仕方ない、失礼な亮太に変わってワシが教えてしんぜよう!!」
「よっ! ヒデヨシ様待ってました!!」

その亮太の茶化しにヒデヨシが「やかましい!」と半笑いで吠えてからゆっくりと説明をする。

「お城を造るときにその周りに砦を築いて、敵の侵入や攻撃をくいとめて城を守る事は知っておるだろ? じゃから亮太の言う「最後の砦」とはお城に一番近い砦で、その砦を突破されればお城が直接攻められてしまう。
じゃから、その砦の役目は大変重要で今のワシらで言うところの【アサツユ村≒城】を守る為の砦を造るから【最後の砦】と言う表現を使ったんだと思うのじゃが。どうかの?」

その解説を聴き言っていたマリナはヒデヨシを初めて尊敬の目で見詰めながら、同意する。

「なるほど、良く解りましたヒデヨシさん! 確かにそれは重要な拠点となりそうですね」
「はははは!! どうじゃヒデナガ? ワシもなかなか博識とやらに近付いておるじゃろ?」
「そうだね兄上。その調子で読み書きも上手くなって、村の子供達を教えてあげられる様になれればもっと良くなると思うよ」
「うげっ……ワシは勉学は嫌いではないが、誰かを教える事とかは苦手なんじゃよ……」

そんなネガティブになってしまっているヒデヨシをマリナと亮太が励ます。

「そんな事は無いですよ! ヒデヨシさん丁寧に話そうと思えばちゃんと出来ていたじゃ無いですか!」
「ヒデヨシさんは何にも縛られない性格だから、色々な考えを持つ子供達にも対応出来ると思いますよ?」

そんな三人のプッシュにヒデヨシは顔を真っ赤にしながら両手を前に突き出して話を押し止める。

「ええい! ワシの事はええからその最後の砦とやらを作ろうではないか!! ワシは何をすれば良いんじゃ亮太よ?!」

「ははは、解りました。では建築に定評があるヒデヨシさんにお願いがあります」
「おっ、何じゃ何じゃ?」
「これから村まで続いている薙ぎ倒された木材を回収して、更に扱いやすいように加工してアサツユ村にお送りします。それを用いて敵の進行を妨害する為の兵士達を待機させる砦を左右の山にある程度の間隔を空けつつ建設したいんです。その為の準備をして頂けないでしょうか? 材料と道具が無ければお送りしますので」
「何と……確かに建築は長年学んできたが、素人のワシらに出来るだろうか?」
「大丈夫です! 建築術を纏めた資料等を手配いたしますので」
「そうか! よし、ならば期待に応えるとするかのう!!」

そういう流れでヒデヨシから同意を得られた中で突然、亮太にトレノからの連絡が来た為に亮太の目の前に半透明なディスプレイが現れ、電話の受話器が揺れている様なアニメが映される。

「トレノさんからだ、何だろう」
慌てて通信を繋ぎ、通話がONになった亮太達が見たものは遥か西にある筈のヴァルハァム王国の植民地の映像であり。今はがらんとしている港をバックにしたトレノが映し出される。

《やあ、亮太くん! ヒデヨシさん達も御元気そうで何よりです》
「トレノさん、何かあったと聞く前に……。その背景の港は合成じゃないですよね?」
《おお、良くわかったね亮太くん! そう、私は今ヴァルハァム王国が拠点としていた町に来ているんだ。皆を支配していたヴァルハァム王国の兵士達が今は出払っているからね》

そのとんでも無い話を聴かされて一同が一瞬耳を疑うが、次に最悪のシナリオが浮かび上がる。

「もしかして、ヴァルハァム王国の軍隊がアサツユ村を目指して進軍を始めたんじゃ!?」
《うん。良くわかったね! その通りさ》

その亮太が浮かべた最悪のシナリオは以外と軽いノリで認められてしまい、思わず皆が言葉を失う中でトレノはそれすらもめでたいと言う明るいトーンで話を続ける。

《それで、この町は今我々に協力してくれている仲間達が管理していてね。良かったらアサツユ村の皆さんが此方に移住されるのはどうかと考えているのですが、どうですかヒデヨシさん?》

その少数の仲間と共に難攻不落と呼ばれていた稲葉山城を奪って見せた天才軍師、竹中半兵衛の様なとんでも無い城取り話に一同が唖然とさせられた後。我に帰った亮太達の口からからすこしづつ笑いが漏れ始め、最終的にトレノ達を称える大笑いが起きる。


「わはははは!!! そうかそうか! ワシらの考え何ぞ、ちゃぶ台ごとひっくり返して来るとは!! いやー愉快に愉快よ!!! よし! そうと解れば動かねばな!! トレノ殿、勿論そこには浚われた仲間達もおるんだろうな?」

その質問を待っていたかの様にトレノは微笑んでから後ずさって行き、少ししてから浚われて洗脳を受けて傀儡の様になっていた村の仲間達が甲子園の学校紹介の如く画面の前に集まって来て、ヒデヨシ達に笑顔で声をかけながら手を振っている。

その数は100人を越えており、行方不明となっていた村人達全員である事を確認したヒデヨシは思わず嬉しさで涙ぐみながら一人一人に声をかけて行く。

「おお、サノスケ! 相変わらず元気そうじゃのう!! そっちでも奥さんに尻に敷かれとるんか? あははは!」

《よしてくださいよ村長!! おっ母の視線がキツくなったじゃねーですか!!》

「いやーすまんすまん。次は、タツジ……良く生きとったな。お前さんのお医者様になると言う夢はまだ覚めておらんか?」
《ええ。お陰様で、彼等からも色々な医療本を頂けましたから。寧ろ、前よりも夢に近付けたと思いますよ!》

「そうか……ズズッ……そうか……。皆の元気な姿をこの世でまた見れて良かった。ワシは、悪運が強いから簡単には死ねんからのう……」
「……兄上」
「ああ。解っておる。お前さん達の元気な姿を皆にも見て欲しいからのう。トレノ殿、引き続き村の皆にも説得をお願いしても構わんか?」

その質問を受けたトレノは群がる村人達の後ろで、画面に映るために跳び跳ねながら了承する。

《勿論です! ヒデヨシさんにも通信システムの使用方法を記憶させ、使用許可を発行して使えるようにしますので。村に戻っても大丈夫ですよ!》

「かたじけない。では、亮太殿。頼めるか?」
「ええ、勿論です! 来い、転送の杖!」

いつの間にか音声認識でも召喚が可能となった転送の杖にマリナが少し驚いている中で、亮太はヒデヨシとヒデナガの二人をアサツユ村へと転送させる。杖の効果により光に包まれていくヒデヨシと目を合わせていた亮太は満面の笑顔のヒデヨシに声をかけられる。

「本当に、ありがとうな。亮太」
「……何を今更。みんなをよろしく頼みますよ、ヒデヨシさん」

光に書き消されていくヒデヨシの口許が「まかせろ」と動いた所で、二人は姿を消した。

「さてと……残された俺達は何をすれば良いですかトレノさん?」

てっきりヒデヨシ達と共に綾瀬達もいるであろう解放された植民地に行くのかと考えていた亮太は、先程までほがらかだったトレノの顔が辛そうな顔つきになった事に戸惑いを感じた所で驚きの一言を聞かされる。

《亮太くん達にはすまないが……誰も居なくなったアサツユ村周辺の防衛力の強化と、この土地をヴァルハァム王国軍から死守して欲しい》

「え……」
「どういう事……」
思わず頭が真っ白になる亮太とマリナ。

二人の脳内で、今まで聞こえていなかった軍靴の音が響き始めていた。
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