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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

01. 出会い篇

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01-08 協力者との会談

「う……何処だここは……」

初日にして2連続で戦闘に巻き込まれ、疲労が限界を越えた結果意識を失った亮太がふと気が付くと自分が住んでいたボロアパートに良く似たワンルームのアパートの一室にいた。


その部屋には殺風景な亮太の和室の家とは違い、フローリングが敷かれた8畳間の洋風の部屋の中には可愛らしい白い鈴蘭(すずらん)の花が彩りを飾るカーペットや同じく白色で金色の細やかな装飾が施された化粧台があり。

視線を動かすと今は部屋の奥に片付けられている折り畳み式のベットと緑色をした木製のクローゼット等の家具が置かれており。

ベランダがある窓には夕暮れの淡い光と風で揺られる少し高級感のある純白のシルクのカーテンがあった。

(夢って確か見る人の記憶を整理したり、心を落ち着かせる為に見るんだよな……。なのに何で俺は女性の家に不法侵入してる夢なんかみてるんだよ……)

そんな考察を女性が暮らしているらしき家の玄関で複雑な表情で右頬を掻きながらしていた亮太であったが、ふと足元を見てみると木を編んで造られた犬用のベットが置かれており。

中には耳をウサギのようにピクピクと動かして、誰かを待っているコーギー犬を発見する。

亮太がまさかと考えたその瞬間、突然コーギー犬が立ち上がり、亮太の居る玄関の方へと尻尾を激しく左右に振りながら猛ダッシュしてきたものだから亮太は大慌てになる。


「ワン! ワンワン!!」
「どわぁぁぁ!!? ちっ、違うんだ俺は泥棒とかじゃなくて!!! ……って、あれ?」

慌てて両手を前に突き出して制止しようとしていた亮太の足元をコーギー犬はまるで亮太の事が見えていないかの様に通り過ぎて行ったものだから、亮太は呆けた顔でコーギー犬がいるであろう木製の玄関ドアへと振り替える。

「おい……俺を無視したってことは……。もしかして見えてないのかよ?」


その質問に行動で返答しているのかは分からないが、玄関の前では行儀よくお座りしながら尻尾をはち切れんばかりにパタパタと振るコーギー犬と、そのコーギー犬の期待に応えるかの様に玄関扉の左側にあるモザイクがかった窓越しに、ビニール袋が擦れる音と足音ともに166㎝程の女性の影が通り過ぎて扉の前で止まる。

「まずい! まずい! まずいって!!!」

その後、通常なら起きるであろう大量の社会問題が頭の中を巡った亮太は大慌てで今いる玄関からダイニングに入り、両開きで人二人が入れる程のクローゼットに慌てて隠れて、扉に開けられた通気用の横に空けられた隙間から玄関の様子を伺う。

(って、何やってんだよ俺は!? まさか今見ている物が夢じゃなくて、酒で酔い潰れて女性の家に転がり込んでいただなんて結末は流石に無いよな!? 勘弁してくださいよ!?)

そんなパニックになりながらも亮太は頬をつねったり、息を止めて夢かどうかを確認する事すら忘れて室内で不振な行動を取る25歳男性が慌てふためいている事と露知らず。

やがてゆっくりとドアノブが開けられ、玄関から入ってきたのは夕日の眩まばゆい光に負けないほどに明るい笑顔でスーパーの袋を両手にぶら下げたコンサバ系の清楚な服装をした、何処か猫っぽい20代の女性が帰宅する。

彼女は可愛さと上品さをあわせ持った様な金色の首元まで伸びたショートヘアで、前髪をM字にわけており。彼女が外国人の血を引いている事を匂わせる綺麗な白い肌とパッチリとした青い目をもつお嬢さんであった。

そんな彼女は玄関で健気にお出迎えしてくれたコーギー犬をまるで娘の様に抱き上げて、優しく抱き締める。

「たっだいまー!! マリナちゃん、良くぞ今日も立派に我が家を守ってくれました!! お利口さんなマリナちゃんにはご褒美をあげないとね~」
「ワン! キューン……キューン……」

その労いの言葉が伝わったと言うより、かなりの時間を独りぼっちで過ごしていた寂しさからかマリナと呼ばれたコーギー犬は御主人にずっと家に居て欲しいとねだるかのように尻尾を垂らし、甘えた鳴き声を出しながら彼女を潤んだ瞳で見つめる。

そんな子供が寂しがるような気持ちをマリナが感じている事を理解した女性は赤ちゃんをあやすように背中を優しく撫でながら、優しい声で語りかける。

「そうだね……最近は仕事が忙しかったから、散歩もまともに行ってあげれなかったもんね。ごめんね、マリナちゃん。明日から三連休だから久し振りに旅行にでも行こうか?」

そう言って微笑みながら語りかける言葉の意味を理解したのかは解らないが、マリナはコーギー犬の特長である愛らしい笑顔を見せ。嬉しそうに一吠えしてから、彼女の口許を舐め始めるものだから飼い主である彼女も嬉し恥ずかしそうに声をあげる。

「ちょっ、も、もうマリナちゃんたら!! わっ! あははは! くすぐったいよー!!」
(本当に親子みたいに仲の良い二人だな……。でも……マリナちゃんって名前……まさかな……)

先程からずっと気になっていたコーギー犬の名前が【マリナ】である事に引っ掛かりを亮太が感じている間に二人は数時間ぶりの再開を喜びつつ、彼女とマリナは楽しくおしゃべりしながら晩御飯を作り始めていた。


「今日はミンチと野菜が安かったから、マリナちゃんが大好きな野菜ハンバーグを作るね? 期待して待っていなさい!」

「ワンワンワン!!」

散歩と言う言葉を聴いて犬が喜ぶ様にハンバーグと言う言葉を聴いてマリナはエプロン姿になった御主人の足に感謝を伝えるようにすりすりと体を擦り付ける。

その余りのマリナの喜び様を見た亮太は何となく台所で扱われている料理の材料を確認していたのだが、ある異変に気付かされる。

(牛ミンチ 1パック、人参 1/3、キャベツ 1枚、鳥ササミ 1パックか……。あれっ……何か揺れてなーー)

カタカタとクロゼットが揺れている事に亮太が気づいたそんな時だった。

突然彼女のショルダーバッグに入れられていた携帯電話が《ピュイィ! ピュイィ!! ピュイィ!!》と言うけたたましい緊急地震速報を鳴らしたのは。

「いけない! 早く、火ぃ止めんと!」

彼女の素なのか、関西弁を口走りながら慌てて火の元栓を絞めて、まな板の上に置いてあった刃物を戸棚の中にある刃物入れへと戻そうとしたが次の瞬間、彼女が住んでいた大阪の堺市に似た地域を地震の最大値である震度8の激しい揺れが襲った。


「きゃん! きゃん!!」
「この揺れはあかんでしょ……!! マリナちゃん、下手に外にでたらあかんよ!? 一先ずトイレに隠れよう!!!」

家が斜めに左右交互に揺られる程の大きな揺れであったために綾瀬もマリナもその場から動く事が出来ず。パニックになるマリナを何とか小脇に抱えた女性が窓ガラスの破片や、台所の置いていた洗剤や、油の容器を身体にぶつけられながらも何とかして家の中でも頑丈だと言われているトイレに向かおうとするのだが。

クローゼットから何とかして飛び出した亮太が聴こえないと解ってはいても、大声で地を這いながらトイレに向かう彼女を止めにはいる。

「そっちは駄目だ! 木造の家は天井から丸ごと崩れる恐れがあるから、頭を守れる物を被って外に出るんだ!!!」

だがその言葉はやはり聴こえていない様で、次第に激し過ぎる揺れに耐えられなくなった建物が倒壊を始め、亮太の言う通り頭上から天井が落ちてくる事を悟り逃げられないと感じた彼女は本能的にマリナに覆い被さり。

そのまま大量の木材と煙りに飲み込まれていく映像を最後に、亮太の視界も闇に飲み込まれていった。


ーーーーー◇ーーーーー


「マリナ!!!」
「お母さん!!!」

「「……え? あ、おはよう……」」

亮太が勢い良く目を覚まし、腹筋の如く上半身を起こした場所は8畳間の来客用の和室の布団の中であり。
何故か亮太と一緒の布団の右側で寝ていたであろう、薄いピンク色の旅館に置かれている寝間着を着たマリナも絶叫と共に飛び起きていた。

御互いに完璧なタイミングかつ同じ様な叫び声をあげてしまったため、思わず御互いに会釈してしまう二人であったが。亮太は先程見せられた悪夢の内容からある仮定が頭をよぎる。


「あれ……もしかして、マリナちゃんが見ていた悪夢を俺も見てしまっていたのか?」
「私が見ていた悪夢って……亮太見たの? 私が経験した悪夢を?」
「……ああ。マリナちゃんの御主人さんが物凄く優しい人であった事と、家がねじ曲げられる様なとんでもない地震を体感した……」
「うそ……でしょ? どうしてそんな事が」

「それは私がマリナくんの記憶を夢として亮太くんと共有させたからだよ」

その疑問に答えを持つハスキーボイスの黒いスーツ姿の銀髪の青年が二人が休んでいた客室の天井裏からぶら下がる形で顔を出したものだから、二人は驚いてついつい大声を上げてしまう。


「どわぁぁぁ?!! 誰だあんた!?」
「びっ、びっくりさせないでよトレノさん!! 折角起きたばかりなのにまた寝込む所でしたよ!!」
「え? トレノさん!!? 顔が猫から人間になってるじゃ無いですか?! 実は最初から人間で猫被ってたんですね!?」
「ハハハハハハ!! いや、驚かせてすまない二人とも。後、亮太くんには座布団を一枚あげるね」

そんないたずらっ子の様に無邪気に笑うのは現在の亮太の上司件、猫人間であった筈のトレノであり。彼は一笑いした後に颯爽と着地を決めて見せる。


「私の悪夢を亮太にも見せた訳は何ですかトレノさん? 亮太の同情を引くためですか? それとも……」
「落ち着いて聴いてくれたまえマリナくん。実は、二人には伝えておかなければいけない事があってね」
「まさか……」

その思わせ振りな彼の前振りにマリナが身を乗り出す。


「生前、マリナくんの飼い主であった綾瀬花奈(あやせかな)さんが我々の仲間として先にこの惑星で働いて貰っていたんだよ」

その朗報を誰よりも知りたかったであろうマリナは思わず布団の中ではあるがトレノにすがり付くようにその話の続きを聴く。

「それで! お母さんは元気なんですか?! 地震のせいでまた塞ぎ込んだりしていませんでしたか?!」

「実は彼女には今、君達が今朝戦った南の大陸の者達と共に行動して頂いています」
「「なっ!!?」」

そのとんでもない発言に流石に亮太とマリナは絶句してしまう。

何故なら南の大陸の者達は大陸を武力によって制圧し、民を魔物に襲わせ、あわよくば拉致して奴隷としてこき使う様な蛮族であると言う認識であったからだ。

これには彼女の事を母の様に慕っていたマリナは怒りに燃え、布団から飛び出してトレノに疾風の様な速さで詰め寄った。

「どういう事ですかトレノさん!! お母さんをそんな危険な地に放り出すだなんて私には考えられない話です! 失礼します!!!」

そう言って背を向けて部屋から飛び出そうとするマリナの両肩をトレノは掴まえて見せるが、マリナは力付くで振り払おうとする。

「離して! 離してよ!!! 私がお母さんを助けに行かないと奴等のおもちゃにされてしまうかもしれないんですよ!?」

「落ち着いて、落ち着いて話の続きを聴いてくださいマリナくん!! 誰も彼女を迎えにいかないとは言っていません!!! 綾瀬さんとは必ず無事に合流します!! だから、先ずはそれを成功させるための計画を聴いてください!」

トレノによる必死の説得は実を結び、何とかマリナを踏みとどまらせる事に成功するが。再度マリナからの鋭い視線が浴びせられる。

「お母さんは本当に大丈夫なのよね?」
「ええ、だってこの通りーー」

そう言って、亮太がしているように虚空に手を横にトレノがスライドした所にテレビ電話の様に別の密林の様な場所にいる、少し日焼けした綾瀬花奈さんの顔のドアップが映し出された。

《マリナちゃん!! 心配してくれる気持ちは物凄~く嬉しいけど!! あんまりトレノくんを困らせたら駄目やで?》
「あっ……ああ……。お母さん……本物なの?」

《そうやで、マリナちゃん! 私達が死んでから3年振りやけど……。でも、マリナちゃんがとっても可愛く、しかも立派になった姿が見られて。お母さんは幸せやよ! ふふっ》

「私も! 私も転生して、良いことをいっぱいすればお母さんとまた会える日が来ると信じて……ずっと、ずっと楽しみにして、辛い事も頑張ってこれたんだよ……?」

《うん……うん。本当に良う頑張ったねマリナ。私もまたマリナと会えて物凄く嬉しいんよ……》

人間と犬と言う垣根を越えて再開を果たした二人の親子は画面越しにではあるが御互いに手を合わせ合い、少し声に嗚咽(おえつ)を含みながら離れていた時間を埋め合わせていく。

そんな二人の裏事情を手が空いたトレノがまだ疲労が取れずに動けない亮太の隣に座り、語り始める。

「三年前に二人が転生した時に二人が同じ場所に転生させて欲しいと揉めてね。私の前の案内人が困り果てていた所に私が割り込んで【転生者の護衛役を引き受けてくれるなら】と言う契約の後、数年の訓練を終えて今回初めて亮太くんと同行する事となったわけさ……」

「なるほどな……。いや、ちょっとまてよ。マリナの飼い主さん今確かに関西弁を喋っていたけど、近畿で三年前にあんな大地震あったか?!」

「いや、二人がいた惑星は亮太くんが暮らしていた地球と色々と良く似た惑星でね。確か、君達の世界で言うところの南海トラフ大地震が彼女達の住む惑星で起きてしまったみたいでね……。あっ、煙草吸っても良いかな? 人体に害はない様に造られている者なんだけど……」

「俺の住む惑星とは違う惑星だって? てことは、地球と同じ太陽系の惑星が幾つもあるってことなのか。……本当にファンタジーの話ですね色々と。あっ、煙草は部屋に臭いが(こも)りそうなので窓際でお願いしますね」

「ハハハハ! 宇宙は広かったと言う事さ。しかしあれだけド派手に暴れておいてファンタジーとは、面白い事を言うね。すぅ……ふう~」


そう言って、窓際で何やら緑色の粒子を煙の代わりに撒き散らす、見た目的には危険な臭いしかしない煙草をトレノが複雑な表情で(くゆ)らせている姿から、ふと目線を正面に移した時に亮太はハッとさせられる。

モニター越しにではあるが、お嬢様が亮太に熱い視線を浴びせてきていた事に気がついたからであった。

《うーん、見た目的にはマリナちゃんが嫌いそうなチャラ男さんだけど……。極度の人見知りだったマリナちゃんが添い寝する程になつくなんて、亮太さん実はいい人ですね?》
「いや、“実は”は余計だよ! あっ、すいませんつい……」

情景反射でつい突っ込みを入れてしまい、亮太と画面の中に映るきょとんとした表情をした綾瀬の視線がふと重なりあい。実は女性が子供以外は苦手な亮太は頬を赤らめて緊張してしまう。

そんな亮太の様子がよっぽどおかしかったのか、綾瀬は左手で手を塞ぎながら笑いを噛み殺していた。

《フフフッ……面白い程に純情なんですね亮太さんは! うん! うん! 貴方となら旨くやれそうな気がしてきたわ! 改めまして、私の名前は綾瀬花奈!! 得意な事は道や地形の整備が出来ますので、荒れた場所等があれば私にお任せくださいね!》

「あ、ありがとうございます! 所で、綾瀬さんとは何処で合流すれば良いですか? 出来れば綾瀬さんの安全も考慮して出来るだけ早く合流したいのですが。そこら辺どうなんでしょうかトレノさん?」

その亮太の質問に乗っかるように、一秒でも速く綾瀬と再開したいマリナも食いつく。

「そうよ! 例え訓練をこなしているとはいえ、お母さんの身の安全は保証されている訳じゃないんだから! 出来るだけ早くーー」

「まあまあ……落ち着いてくださいマリナくん。一先ず、今の我々の目的は南の大陸の人達に各大陸から拉致され働かされている人達を救出する事と。この荒れ果てている大陸を整備して人が安心して住むことが出来る様にすることです。
それと、南の大陸の軍団に関しては私が裏で何とかしておきますから、お二人は引き続き持ち場での任務をお願い致しますね」

その綾瀬との合流ではなく現状維持と言うトレノの指示を聴いて、愛する飼い主を心底心配しているマリナは憤慨する。

「何とかって……まさかお母さんを見殺しにする訳じゃないでしょうねトレノさん!? 私はそんなの絶対にーー」

《マリナちゃん!! 少し言い過ぎよ? トレノくんは私達の事をいつも心配してくれていて本当だったら認めて貰えないのに、こうしてお話しする事が出来る様にしてくれたの》

その言葉を聴いてマリナはハッとした顔になって目の前で苦笑いしているトレノを見る。

「私がマリナくんから見ても、信頼に足りない新人所長である事は認めます。ただ、彼女には私が見込んだ信頼できる仲間達もついていますので御安心ください」
《マリナちゃん。もう少しでこの大陸にいるヴァルハァムの軍隊を血を流させずに引き上げさせられそうなの。だから、それまで時間を頂戴》


二人の真剣な説得を受け、何かを口に出そうとしたマリナであったが呑み込み。二人に向き直って頭を下げる。

「感情的になって、思ったままに失礼な事を言ってしまいごめんなさい……」
「良いんですよ、マリナくん。子犬である貴方を私が雇ったのはその情熱的な心に惹かれたからですからね」

そう言って、お茶目にウインクしてみせるトレノにマリナは思わず恥ずかしくなって赤面する中。トレノは本格的にこれからの事を話し出す。

「さて。亮太くん達の間で問題になっていたのは確かヴァルハァム王国が扱っている下級の洗脳道具についてだったね。一先ず、この家の地下に閉じ込められ、彼等に洗脳されている人達を助ける為にこんなものを用意させて貰ったよ。受け取ってほしい」
「これは……新しいカード?」

そう言って、煙草を口にしたままトレノは一人、周りの言葉を聴く事に専念していた亮太に近寄り。1枚のカードを手渡す。

そのカードの表面には名前の部分に【苦痛を払う光】と書かれており。絵の部分に目を移すと、光輝く後光を背景に美しい美女天使が微笑みながら胸元にバレーボール程のサイズの輝く球状の光を抱き抱えている絵があり。

その絵の美しさに余り絵画等を観に行く趣味の無い亮太も思わず見とれてしまうのだが、下部に書かれている説明文を確認した時の反応はそれを更に上回る喜び様であった。

「ありがとうございますトレノさん!! これなら、奴等に脅かされる事も無くなると思います!!」

「お気に召して頂けた様で良かったよ。そのカードの能力を用いれば亮太くんが扱う物全てに状態異常を打ち消す能力を付与する事が出来る様になる。例えば、君が扱う水等に能力を付与すればその水を身体に浴びせるだけでもその人の病気を含めた状態異常を治せる」

そのとんでもない回復スキルの内容に皆が驚き、目を輝かせる。

《それはえらい能力やねトレノさん!! 良かったら大陸を平定した後でもエエからウチのいる領内にもその水を贈って貰ってもエエかな? 最近、体調を崩している人が増えてきているんよねぇ》
「亮太くんがよろしければ、ね?」

そう言って、イタズラっぽい表情でトレノに話を振られた為に、亮太は緊張の余りに耳を赤くしてアタフタとしながら勢い良く答える。

「え、あっ! 勿論ですよ!! 綾瀬さんが必要だと思った時には直ぐに言ってください!! いくらでも用意出来ますから!!」
《ありがとうねぇ! 亮太くん!! 物凄く助かるわ~。実は、南の大陸の人達にも大勢友人が出来てなぁ! その人達とも仲ようしたいんよぉ》

その発言を聴いて、ドキッとしたマリナが心配そうな顔になるが。綾瀬はすかさずフォローを入れる。

「それって……」
《あっ、大丈夫やでマリナちゃん? ちゃんとトレノくんお墨付きの人やからね?》
「……それなら」

渋々と引き下がるマリナを見て、綾瀬はトレノの評価が少しでも上がった事に安心しつつ、言葉を続ける。

《亮太くん。これから沢山仕事をこなさないといけないかも知れないけど。私達も一緒に頑張るから、よろしくお願いいたしますね!!》
「あ、はい!! こちらこそよろしくお願いいたします!!」
《うん、うん! それじゃあ、またね!!》

その言葉を残して綾瀬は笑顔で片手を振りながら画面が消え、それを確認して少し落ち込んでいるマリナを亮太が頭をなでて慰めている所にトレノが締め括る。


「それじゃあ、二人とも。遅くなったけど無事に村を守ってくれて本当にありがとう。君達の成果を決して無駄にしないように私も頑張るよ。じゃあ先ずは亮太くん、疲れている所済まないが早速その力を用いて地下にいる人達を助けてあげてくれ」

「わかりました。マリナ、付き合って貰っても良いかな? 俺だけじゃ食べられてしまうかもしれないからさ」
「しっ、仕方ないわね……。まだ勇者見習いの亮太を一人だけにする訳にはいかないからね!」

そう言い合いながら肩を並べて自分に会釈をしてから仲良く部屋を出ていく二人を目を細めて見送ってからトレノは胸のポケットからもう一本煙草を取り出して、口にくわえてからジッポライターで火をつける。

「ふう……。皆が無事で良かった。これならエビス様の御許しが出るだろう」

そう言って、携帯灰皿にまだ吸い始めたばかりのエメラルドカラーの煙りを出す怪しい煙草を捩じ込み、亮太達をこの大陸に送った時と同じ様に転送用の人が二人通れる程の円形の空間を開けて通り抜けて行く。

「……共にこの試練を乗り切るんだ。誰一人欠ける事無く」

そんな決意を込めた言葉を吐きながら。

この話を持ちまして、思っていたよりも長くなりました第1章と言う名の説明会が終わりまして。次章からはアサツユ村の発展と、新たな仲間達も加え。今までは戦闘でしか扱われていなかった亮太の万能な召還能力が本領を発揮して行く形になると思います!

まだまだ始まったばかりで、(つたな)い作者で御座いますが。よろしければ引き続きお付き合いして頂ければ嬉しく思います!

読んでくださりありがとうございました!!

※綾瀬の髪型に関する説明を書き加えました。(2016.7/18)
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