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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

01. 出会い篇

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01-07 勝利の裏にちらつく影

村が発足以来、最大の危機を乗り越えたアサツユ村の村長の家で勝利を祝う大きな宴が開かれていた。

総勢36人と言う大勢の村人達が一軒家規模の大きさの村長の家に集まり、体育館での朝会の様にほぼぎゅうぎゅう詰めなのだが。
皆、今日は無礼講とばかりに真ん中にあった木製の四角いテーブルをどけて畳の上で酒を飲んだり、取れ立ての魚で造った料理を亮太が雑貨店から提供した皿の上に乗せた物を箸でつつきながら宴会は続いていく。


その中でも一番話しかけられているのは今回の勝利の立役者である亮太達であり、老若男女に限らず大勢の村人が亮太達に感謝と質問攻めを繰り返していた。

「いや~しかし大したもんなんだよな~! あれだけの猪を追い返すだなんて、本当に大したもんなんだよな~!!」
「あっどうもありがとうございます!」
「ねえねえ兄さん!! 良かったら内に14才の娘がいるんだけど、嫁さんにして貰えませんかねぇ?」
「すいません……流石に捕まってしまうので……」

そんなやり取りを繰り返していた亮太の背中に突然おぶさるようにマリナが抱き付いてきた。

「りょうたしゃ~ん! この亮太しゃんが持ってこられた、白いおしゃけと言うのみもの。すごくおいしいでしゅよ~!」
「マリナちゃん?!! ちょっと酔いすぎと言うか、確か未成年だったろ?!」
「えっふっ……今日はめでたい日だから……いいんでしゅ♪」
「いやいや、何だんじり祭のおじさん達みたいな事言ってるんだよ!! 不味いって! 目が座ってるーー」
「むぅ……。うるさいお口しゃんは……こうしましゅ!」

そう言ってマリナは突然亮太の後ろから前に回り込んでから口回りを犬の様にペロペロし始めだした為に辺りからは黄色い声が飛び交い、親の方達は咄嗟に子供達の目を手で覆う。

「むぁーー駄目だってマリナ!? こう言うのは大切な時まで取っておく物なんだって!」
「……ううぅ。亮太しゃんは私のこと……きらいでしゅか?」
「いや、寧ろ好きだし、信頼してるよ? ただ、その……」
「しょの?」

酔っ払って舌足らずになっているマリナがうるうるした目で上目使いで見つめるものだから思わず亮太も照れてしまい、目を逸らしながらポリポリと頬を掻く亮太の返事を待つ。

「ここじゃあ……人目がつくだろ? それに今のマリナは酔っ払っているから俺にこんな事出来るけど酔いが覚めたらきっと悶える事になるぞ? ……あれ? マリナ?」
「スー……スー……」
「俺の胡座(あぐら)の中で丸くなって寝ちゃったよ……。よっぽど疲れてたんだな……ありがとう……」

そう言って寝息をたてるマリナの頭を亮太は優しく撫で、マリナは眠っていながらも微笑んでいた。
そんな二人の様子を見ていたヒデヨシの好青年の弟ヒデナガが村中から集まってくれていた人達に穏やかに声をかけていく。

「皆さん、夜も更けて参りましたので今日は御開きとしましょう……」

二人の様子を微笑ましく見ていた村人達も穏やかな表情で静かに立ち上がり、皆が皆空になった食器を玄関に設置されている台所(?)にある水を浸したタライへと浸けてから、全員が亮太達に頭を下げてから静かに実家へと帰っていった。

その場には胡座(あぐら)をかいている亮太とその胡座の中で気持ち良さそうに眠るマリナと村人達が帰る時を待っていた様にヒデナガが正面左側に座り、空いた右側にほろ酔い気味のヒデヨシが亮太が渡した【日本酒:男咲き】を片手にどかっと座り込んだ。

「いやぁ! 今回は本当に亮太殿達には世話になった!!! 何卒これからもよろーーもごご?!」
「……兄上、彼女がせっかく気持ち良さそうに寝ておられるのですからお静かにお願い致します。それと飲み過ぎです」
「仕方無いじゃろ~! こんな美酒ワシらがいた大陸にも無かったであろう絶品物だぞ?! これが騒がずにーーぐえっ……ウグッ?」
「いい加減にしてください」

顔を真っ赤にしてがはは系男子と成り果てているヒデヨシの背中をヒデナガが軽快に叩き、下を向いた所で水が満たされた杯で水を飲ませる。すると先程までは顔を真っ赤にさせていたヒデヨシの顔色が戻っており、酔いも覚めていた。

「げっほげほ!! いきなり何をするんじゃあヒデナガ!? あれ? ワシは今まで何を?」
「はあ……お酒が好きなのは良いのですが、自分が悪酔いする事は覚えておいてくださいね兄上?」
「おっ、おう。それで何の話し合いじゃったかのう? ……おっ、そうだそうだ。これからの事で亮太殿達に引き続き我らと協力関係でいて欲しいと言う話であったな。亮太殿、すまないが少し話に付き合って頂けないか?」

その話題に移るに辺り、先程までは只の酔っ払いであった筈のヒデヨシが纏う雰囲気がガラッと変わった為に亮太にも緊張が走るが、元々この大陸に住む人達の保護を課せられていた亮太は喜んで同意する。

「全然構いませんよ、俺も興味がありますから」
「かたじけない。では、我々がこの大陸に移住してきた4年前からざっくりと話をしようかのう……。元々ワシらは日ノ本と言う大陸の尾張(おわり)と言う場所に住んでおったのじゃが、日ノ本と言う島国は複数の権力を持った者達が各地で暮らす、(いくさ)が絶えない場所でのう……」

話は現在からだけではなく、今までシラツユ村を蝕んできた不可解な事から話が始まる。

大間かに話を纏めると、日ノ本大陸内で次第に悪化する権力争いに危機感を感じた比較的少数民族であったシラツユの人々はたまに銀を求めてやって来る他の大陸の商人から日ノ本以外の大陸に避難するために世界地図と航海図を複製させて貰い。

当時の村人130名全員が大陸に渡るための木製の小舟を周りの敵勢力にばれないようにすこしづつ購入していき。

彼等は比較的波も穏やかで日ノ本の大陸からは海路で三日程かかるが自然に恵まれており、人間の手が加えられていないと言う今亮太達がいる大陸へと無事に移り住む事が出来、二年の間は平和な時を過ごしていたのだが……。

「突然、今まで見られなかった大型で凶暴化した大牙猪達が現れ、その戦いの際に多くの村人が何故か行方不明になり。無事に帰ってきた村人達も何故か好戦的になっていたと……」

全体の話を聴き終えた亮太はあることが引っ掛かり質問する。

「それはもしかして、猪の肉を食べた後からでは無かったですか?」

その質問を受けたヒデヨシとヒデナガは何か思い当たる節が有るのか顔をひきつらせる。

「確かに、村の食料が猪達に食い荒らされていたのでやむお得なく猪の肉を調理して食べましたが……。そういえば、猪の肉を進めてきたのは猪達を仕留めて先に食べていた人達でしたね」
「まあ、臭いが凄いもんでワシら兄弟は喰わなかったから、どうなるか解らんかったが……。まさかあれが原因で?」

話がキナ臭くなってきた所で亮太はシステムウィンドウを出現させて所持アイテム一覧を開き、正面の二人に見せる。

「少し、これを見てもらってもよろしいですか?」

そこには猪達を倒した時にアイテムストレージに獲得した素材が全て標示されており。特に一際目を惹かれる物があった。

「どれどれ……いやまて、何じゃこいつは!?」
「これは……!!」

足にマリナが寝ている為に動けない亮太の側に寄って見た物に二人は驚かされる。

それは何かと言うと、エメラルドカラーの綺麗に輝く結晶石【魔力の結晶×800】であり、そしてその素材の説明にはこう書かれていた。


・魔力の結晶【ランクN+】:結晶に魔力を送る事により効果を保存する事が出来る初級のマジックアイテム。この結晶を所持している限り、その付与された魔法の効果(初級魔法に限る)が発揮される。


「この結晶は魔法を使う者が石に力を籠めて初めて効果を発揮する。つまり、猪を使って意図的にヒデヨシさん達、アサツユ村の人達を襲わせていた魔法使いがこの大陸にいると言う事が解ります!」
「なん……じゃと……」

その衝撃的な説にヒデヨシは目を見開き冷や汗を一筋垂らす。

何故なら元々誰も人間がいないと言う説明を情報筋から聞いてから上陸した大陸であった事と、多くの仲間達が亮太の言う猪をけしかけてきた者のせいで犠牲になってきた事を考えただけでいてもたってもいられなくなり。

思わず右腕を振り上げて畳に叩きつける程にヒデヨシは心を掻き乱された。


「なんと言う事じゃあ!! ワシらは二年間もの間その事に気が付けずに多くの仲間達を犠牲にしてしまったのか……!!」

現に村が今日亮太達によって助けて貰えなければその何者かの為に壊滅していた事は言わずもながらだが、それを除いてもこの村が生まれた当所共にいた140人近かった仲間達は現在では半分以下である36人程に減少してしまっている事も合わさり。ヒデヨシの後悔と怒りは凄まじい物であった。


「ヒデヨシさん……」

その内心を完全に理解してあげる事が出来ない亮太はただ悶え苦しむヒデヨシを見ている事しか出来なかったが、そんなヒデヨシを労るように耳元でヒデナガが小声で何かを囁き、それを聴いたヒデナガは正気を取り戻し。水杯を飲み干してから亮太と再び向き合う。


「……実はな亮太殿。貴方が今朝がた助けて下さった親子がいたじゃろ?」
「えっ……ええ。いきなり槍で突かれて追い出されてしまいましたが……」

亮太としては余り思い出したくない記憶ではあったが、ヒデヨシが出した次の言葉に驚かされる。


「実は、あのシゲルと言う男。猪を毎日食っておったんじゃよ!」
「なっ、何ですって!? てことはもしかして!!」
「ああ! もしかしたら魔術師の影響を受けているかも知れぬのじゃ! 奴を捕まえている独房まで案内するから着いてきてくれ!!」
「えっ、あっでも……」

マリナが足元で寝ている事を思い出した亮太がふと足元を見てみると、不機嫌そうに欠伸(あくび)をしているマリナがいた。

「……あれだけ大声出されたら、誰だって起きるわよ……」
「ご、ごめんよマリナちゃん……」

思わず苦笑いを浮かべながら謝罪する亮太に、マリナはキスしてしまう程に近い距離で頬を赤く染めてつぶやく。

「……さっき、酔っ払って亮太に絡んでいた時の私の記憶を忘れなさい。それでチャラにしてあげる!」
「……え? あっ、あの時のーー」
「良・い・わ・ね!?」
「アッハイ!! マリナ様!!!」

そんな仲の良い二人の様子を微笑ましくヒデヨシ兄弟はある程度見守り、丁度良い所でヒデナガが声をかける。


「では、お二人ともそろそろよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。いっ行くわよ亮太?」
「わかった! わかったから腕をそんなに引っ張るなって! どうしたんだよさっきから?! 顔が赤いし、様子が変だぞマリナ!?」
「べべべ別に変な所なんて無いわよ!!」
「はははは! いやはやワシも可愛い冥土さんとやらを雇ってみるかのう、ヒデナガよ?」
「そんな余裕も人材も家の村にはありませんから、私で我慢してくだされ。兄上」
「いや、流石にワシも男同士であれをやるとなると……のう?」
「では、地下牢に参りますので、皆さん私の後ろに着いてきてくださいねー」
「「はーい!」」
「ええいヒデナガー!! 無視するでないわー!」


そんなやり取りをしつつ、一同は居間の畳の下に隠されている地下老への真っ暗な階段を先頭で土皿の上に火のついた蝋燭(ろうそく)を載せた物を持って歩くヒデナガに続いて降りていく。

約2階分階段を降りたところで、左側の土壁から火のついた蝋燭が斜めに1m間隔で置かれている廊下へと突き当たり、その右側の廊下には数人の刀で武装した見張り役の男達が立っており。

そしてその右側には竹を縦にした形で作られた柵とその柵の向こう側には獣の様な言動を取る、男女問わず複数のボロ布の様な服を着た人達が投獄されていて。

丁度その前を亮太達が通り抜けようとした所で中にいた一人の少年が牢屋に近い右側を歩いていたマリナの腕を柵の隙間から手を伸ばして掴んできた。

「ウオォォォォ!!!」
「きゃあああ!?」
「マリナ?! その手を離せ!」

直ぐ様にその少年の手を引き剥がそうと亮太と見張り役の兵士の二人がかりで挑んだ結果、何とか事なきを得るのだが。ふと、その手を伸ばして来た少年を見て亮太は驚かされる。


「ちょっと待てよ……この子もしかして、確か今朝出会った親子の息子さんか?」

その違和感を確かめるために今度は亮太自ら牢屋に近寄るものだから慌ててその場にいた者達が止めに入る。

「亮太駄目よ! その子、私でも振り切れない程のとんでもない力を持っていたわ!! まともに掴まれれば骨ごと持っていかれるかも知れない!」
「お嬢ちゃんの言う通りだ亮太殿! 彼等は猪達の肉を喰らったが故に理性を失う代わりにとんでもない力を持っているんじゃ!!! 決して無策で近付いてはならん!!」


必死に止めてくれたマリナとヒデヨシの言葉を聞いた亮太は御互いに手が届かないギリギリの所に立ち、少年の観察を始める。
やがて、蝋燭の光を浴びて見えて来たその光景は亮太の想像を越えた物であった。

「うっ……。まるで野性動物じゃないか……?!」

牢の中で犬のように裸に近いボロボロの服で四足歩行で歩く老人や、年端もいかぬ少女、壁をひっ掻きながら叫んでいる男性に、楽しそうに殴りあいをしている少年達。

その光景の中に何人か見た事がある人がいる事を確認した亮太は、思わず軽い目眩に襲われるが直ぐにマリナが背中を支えて貰えた故に、無事ですむ。


「こんなの……絶対おかしいだろ……。皆、理性を失って本能で動いている……マリナちゃん、トレノさんに至急連絡を取ってくれ……。非常事態が起こっているとな」
「わかった……今すぐに連絡を送るわ。亮太、貴方も休んでね」
「すまない……頼んだよマリナちゃん」


その会話の数秒後亮太は激戦の疲れの為か自然と(まぶた)を閉ざしてしまい、眠りにつく事となる。



ーーーーー◇ーーーーー

亮太達が村の中で蔓延している謎の症状と向き合っている頃。

村から北に数百キロ離れたあるとてつもなく長い距離を牧場の様に木製の柵で繋いでいる大牙猪達が走り回る平原の中で、古代エジプト人の軍人の様に上半身は半裸で腰からはスカートのようなキルトを履いて、膝から下はすね当てを着けた二人の人物が丸太を半分に割って作ったであろう4mのベンチの真ん中で肩を並べて座っており。

左側には良く日焼けしたたくましい身体つきの中年の凛々しい指揮官らしき人物が座っていて、その右隣には同じく日焼けした肌に沢山のしわと黒いソバカスがあり、頭の髪は無いが立派な白い髭を蓄えた60以上の年齢に見える老人が木の杖を持っていた。

そんな二人の会話と言えば、やはり亮太達がいるアサツユ村の事であった。

「南にあった小さな村を壊滅させる為に送った牙猪達がほぼ全滅したと言う話を聴かれましたかハシバ様? 奴等にはもう300頭の牙猪達ですら太刀打ち出来ない力しか残っていなかった筈だったのですが……」
「実はのう……生き残った猪達のマテリアルコアから情報を引き出して見た所、南の村に見た事が無い冒険者達らしき者達が村を死守した事が原因らしくてな……」
「そんな!! 冒険者ギルドの奴等には事前に多額の賄賂が流されていて、この大陸には入らないようにとお触れが出ていると言うのに!! ああ……イザベラ様に何とご説明すれば良いか……。依りにもよって国王様にこの大陸を献上する日が間近に近付いているこの大切な時に……」
「でしたら、今度は牙猪達だけではなく南側の大陸を視察する為と言って大型のガレー船を用いればどうでしょうか? どれだけ腕のたつ者達とは言えど、牙猪達と海上からの挟み撃ちには敵いますまい」
「おお……それはとても良い提案です。流石はアルステン大陸を網羅して見せた軍団長でありますね!」
「よせ、今は第一線を退いた只の老いぼれじゃよ。さあ、姫様が大陸の首都の工事に熱中しておられる間にさっさと済ませてしまおう。お前さんも英雄として二年ぶりに故郷に帰りたいじゃろ?」
「軍団長……御手数をお掛け致してすいません。御言葉に甘えさせて頂きます」
「ハハハ! なあに、老いぼれの暇潰しには豪華過ぎる時よ。さあ、そうと解れば策を練ろうでは無いかラムセス軍団長……。まだ夜は長いからのう……」


そう言いながら満天の星空を見上げる軍師と軍団長は相手がただの冒険者では無いことと、これから巻き起ころうとしている事態に気付ける筈もなく。

ただ穏やかな夜を過ごしていくのであった。
ー防具店ー

ユリ「亮太さんたち帰ってきませんね……」

リフレ「そうですね~。良かったら泊まっていきませんかユリちゃん? 部屋が空いてますので~」

ユリ「いいんですか? ありがとうございますリフレさん!」

※アサツユ村の人達が元々住んでいた大陸名を尾張から、日ノ本へと変更しました。
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