挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

01. 出会い篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

10/102

01-05 アサツユ村会議

時間は亮太達がお茶会をしている頃にさか戻る。

小さな港の村であるアサツユの中でも一際大きい屋敷があった。とはいってもそれはワンルームの風呂無しアパートの様な村の中にある家と比べた上での話で、大きさ的には庭付き一戸建ての家と変わらない村長の家であり。

その家の中にある大の大人が12人程入っても大丈夫な土壁と木で作られた畳の居間の真ん中で、八人の男達が円を描く形で話し合いを行っていた。その話の論題はと言うと40代後半の男が語っているとは考えられないほどに現実離れした話であった。


「おいおい、そいつは嘘だろ。突然石を降らせる少年が現れて、襲ってきた猪どもから助けてくれたなんて!」

「朝だから寝ぼけていたんじゃないのか?」

「本当なんだ! ワシは確かにこの目で見たんだ!!! 何故か頭に獣の耳を生やした少女と家の息子の年とかわらないぐらいの男が20頭以上の猪を返り討ちにしたんだよ!」

白熱していると言うよりも呆れられていると言った方が正しい討論の場であったが、その白けきった流れは話の結末にあった。


「なるほどのうシゲルさん……。あんたが正直に物を言うとるのは解ったよ。ただのう、一つだけ聴いてよいですかい?」

円陣の中で6時の方向に座るシゲルの正面に座る形で12方向にいる、髪を切らずに後ろでくくってちょんまげの様にした小柄で細目の青年が言葉を挟む。

「どうぞ、ヒデヨシさん」

「そこまでその人の力を認め、尚且つ助けて貰った恩人に対してシゲルさんは何故槍を向けて追い出したんだ? そいつに条件付きでもこの村に居て貰えれば、猪に怯えずに居られるようになって色々な事が出来ただろうに」

その指摘に対してシゲルは額に薄く浮かんでいる青筋を動かし、大きく溜め息をついてからこの話し合いの最中に一度した説明を繰り返す。

「だから言っただろ、奴が我々をただ助けに着ただけの者には見えなかったからだとな!」

「……シゲルさん。あんた本当にそんな事を繰り返していれば平和が保たれると思っているんですかい?」

「なんだと小僧?! 俺がどれだけこの村に近づこうとする魔物や、侵入しようとして来た奴等を追い返してきたと思っている!! そのお陰でこの村は外敵から守られているではないか!! これが平和じゃないとどうして言える!?」


まだ歳が30歳にも満たないヒデヨシに煽られたと感じた血の気の大いシゲルは興奮した様子でヒデヨシに掴みかかろうとする。それを周りにいた男達が必死になって止める。


「くそっ!! 離さんか!!! この小僧はワシのしてきた事を良くも知らずにバカにして腐ってからに!!! 一発殴らんと気がすまん!!」

「落ち着いてくれシゲルさん!!」

「仲間内でもめても仕方ないだろうがよ!!」

「ほら! 村長も謝ってくれ! そうすれば一件落着だろう?!」


そんな様子を耳をほじりながら聴いていたヒデヨシは指先に集まった耳赤を軽く口で吹いてから、はっきりとした口調で返す。

「わしは嫌だね。間違っていながら独りよがりで自己顕示欲の強い老人にペコペコするのなんざ、死んでも御免じゃ」

それを周りに取り押さえられながら聴いていたシゲルは顔を真っ赤にさせて周りの人達を振りほどき、再びヒデヨシに掴みかかり、胸ぐらを掴んだまま軽々と宙に持ち上げてみせる。

それはさながら鬼に捕まった人間の様であり、辺りにいた人達も余りの恐怖に尻餅をついて短い悲鳴をあげる。だが、ヒデヨシは一切怖じ気づく事もなくそのほぼ閉じているに近い細目で鬼を見つめ返す。


「小僧……遺言変わりに言いたい事があるなら最後に聴いてやろう!!!」

「へっ……そんなに気に食わないなら教えてやるよ。あんたがやって来た愚かな行動をこの村に与えてきた苦しみをな。ヒデナガ、例の物を頼む」

「失礼します」

そう言って別の部屋から廊下を渡って現れたのはヒデヨシの弟であり、彼の補佐をしている生意気小僧であるヒデヨシとは違い、ヒデヨシ達が着ている安い着物着ですら栄える好青年で男前のヒデナガが巻物を片手に現れた。

「ありがとうヒデナガ。あー……この姿勢だと話しにくいから、下ろしてくれんかのう?」

「チッ、仕方ねぇ」

そう言って鬼から解放されたヒデヨシはついついホッとして溜め息をついてしまうが、直ぐ様に何を考えているか解らないポーカーフェイスに戻る。

「やれやれ、お気に入りの一枚が少し破れちまった……。さてと、じゃあ皆の者ちこうよれ。これは4の年前にワシらがこの大陸に移り住んで来た時の人数じゃ。どうじゃ? 今の4倍以上は居るじゃろ?」

その懐かしい記録と現在の寂れた村とのギャップで集まった者達はつい黙り混んでしまう。正しく「あの時は良かった」と言う過去であったからだ。

「あの時は良かったのー。貧乏生活をおくってきた皆が自分の土地を自由に持ち、自然を楽しみ、明日は何をしようかと期待に胸を膨らませながら寝床に毎晩就いていたもんじゃ……。皆、どうしてこうなったと思う?」

その言葉に怒り狂っていたシゲルですら顔をしかめて言葉を濁す。皆の思いと過去を代弁するかの様にヒデヨシは語り続ける。

「簡単な話じゃ、この大陸の土地は既に先駆者である魔物達が住みかとしており。勝手に大陸にやって来て住み始めたワシらは奴等から見れば只の侵入者であり、盗人でしか無かった訳だから。軽はずみで奴等の住みかに入ったワシらは怒りを買いここまで追い散らされて来た……」

皆が黙り込みながらじっとヒデヨシを見ながら話の続きを待つ。

「そしてここまで魔物達と揉め逢いをする羽目になったのは魔物との徹底抗戦を掲げるシゲルさんに大勢の人が同調してしまい、彼等との間に大きすぎる溝を作ってしまったからなんじゃよ。
知っとるかお前達? 奴等は元々、自分達の暮らしている場所以外からは出ては来なかった、我々が暮らすようになった二年目まで一度もだ」

その驚きの事実に集まった男達はざわつき始める。何故なら彼等も死んでいった者達と同じく、魔物は動物と違い狂暴で、解り会えない物であると教えられて来たからだ。

そしてその事を伝えたのは側にいる自分達の村を守るために魔物との徹底抗戦を指示した男シゲルであった。

「……あいつらはこっちが一年間も毎日攻めに行かなければ共存出来ていた相手何だよ。シゲルさん、あんた……それが面白くなくて我慢できずに勝手に戦争起こしやがったな」

閉じられていたヒデヨシの目が開かれ、そこには死んでいった仲間の為に熱く燃える怒りを宿した本物の戦士の目があった。

先程までは小僧と見下し続けていた狂戦士のシゲルですら、自然と後退りさせられる。

「くっ、言い掛かりだ! 俺は、俺は村を皆をーー」

「何も知らせずに死地に追いやり、子供から親を奪い、そしてその子供達も戦士として育て上げて戦地で殺す……」

「あっぐっ……違う、違うのだ!! 俺はただ、戦い続けたい! 戦士であり続けたいだけなんだ!」

その言葉を聞き、シゲルに騙されてきた周囲の者達からは怒りよりもその狂気故に恐怖が勝り、血の気が引いていき。そして、かつては英雄と呼ばれていた男のその余りに惨めな姿にヒデヨシはもう一切の迷いを捨てていた。

「この男を地下の独房に連れていけ、抵抗するならば切り捨てても構わん! そして、彼等を救ってくれた男の足取りを急いで調査させろ! 馬を使っても構わん!!!」

「「「「御意!!」」」

ヒデヨシの力強い指示にかっかされた男達は直ぐ様に黙って項垂れているシゲルを暴れられないように縄でくくり、五人の刀を帯に指した者達が地下の独房へと護送していき。

続いて、三人の者達が足早に出ていく。

その様子を見送ったヒデヨシからはドッと汗が滲み出てきて思わず溜め息をつきながら座り込んでしまい。その隣にヒデヨシの身を心配したヒデナガが支え、水が入った土で作った(さかづき)をヒデヨシに渡す。

「兄上……仲間の内だからといって危険が過ぎますよ。下手をすれば父上達と同じ様に……」

「はっはっはっ。何……もう済んだことをくよくよ言っても仕方あるまいて弟よ! まあ、一つだけ杭が残ると言えば、もっと早くに気づければ良かったと言うものだな……。うぐっ、なんだこれは!? 酒と思ったら水ではないかヒデナガよ!?」

「当たり前でしょ、兄上。昼まっから酔いどれる等、魔物達に餌にして欲しいと言っている様なものです」

「いや、しかしなぁー。勝利の美酒は戦いの一部であってだなーー」

そんな屁理屈を言おうとヒデヨシがした所で、突然鐘が鳴る音が村全体に響き始める。

「11時の方角……確か今日は若いミツナリ達が担当していた筈……」

冷静に分析するヒデナガの言うとおり村から見て11時の方角の500m先の場所に三階建てで小さな鐘が吊るされた見張り台が設置されており。
そこから魔物が襲来した事を告げる、三三拍子のリズムで鳴らされる鐘の音が聴こえて来た為に直ぐ様にヒデヨシはあちこちに伝令を仲間を通して飛ばし始める。

「女と子供を優先して小舟に乗せてやってくれ! 俺達がいても子供は産まれねぇからな!!」

そうやって緊張を取るためにもヒデヨシが激を飛ばすなか、ヒデヨシ達にとって聴いたことが無い地鳴りの音が聴こえて来る。

「何だ……このやけに多い地鳴りは……」

山の向こうから迫り来る大きな足音達と共にやがて聴こえ始める見張り台から数回発せられて沈黙した発砲音と、歪んだ音をたてて止まった鐘の音。

そんな音を聴かされて、何がこれから起こるか何て事は嫌でも想像がつく。

「ひ、東の見張り台が飲み込まれたぞぉぉぉ!!! 早く船に載るんだ! 早くしろ!!」
「荷物なんて捨てて早く!!」

外から聴こえてきた仲間達の悲鳴を聴きながらヒデヨシ達は今起こっているであろう最悪の事態を考えた上で行動を開始する。

「思っていたより随分と早いな、ヒデナガ!!」

「そうだな兄上。残念だが、朝から海岸に脱出用の小舟を並べておいて正解だったようだ」

そんなやり取りをしながら二人は村長の家から出て、大勢の村人達が逃げ惑う人混みの中へと入っていった。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ