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プロローグ
棺桶は散るか
隆見ヲサム
プロローグ
科学技術は歪んだ発達を遂げていた。人類の欲望に忠実な奴隷として、モラル・ハザードを強引に自己正当化して戒めを破っていく月国家の科学者たち。
そして人類は目先の利益を求める自由経済システムの限界から狭い太陽系に縛り付けられていた。
火星へは太陽系企業が惑星改造に莫大な資本資産をもって繰り出し、さまざまな人種の社員たちが送り込まれた。しかし、彼らは開拓者である前に薄給のサラリーマンであった。まず地表にコロニーが建設され、惑星全土に電力を用いる重力メタルを網メロン表面のように張りめぐらせると、テラ・フォーミングは急加速度的に進行。人工的に1Gの重力を得て、大気および水を宇宙に放出せずとも、しっかりと定着させることが、できるようになった。
金星軌道上のソーラー・パネルで発電した大電力を抵抗ゼロの性質を利用した超電導キャパシタ電池に蓄え、安価な水星を使ったスイング・バイで受け取って供給を受ける。そのような国家プロジェクトでさえ、経済上不可能なことについては巨大太陽系企業に依存している。
月に次ぐ第二の居住惑星として発展した火星の歴史の始まりは、構成人口の大半が太陽系全体規模の市場を抱える企業に属する単なる社員待遇にすぎず、M&A、人種・宗教・性差別、リストラされたり、勝手気ままな配置転換と、経済効率重視の横暴によって不安定な生活を強いられて抑圧され、翻弄される苛立ちと不満が募り、小規模なテロリズムを発端に独立の夢という希望を手にした。やがて暴動と混乱の時代を迎え、火星帝国レッド・テラが生まれた。しかし、投下された莫大な資本権益をめぐり、火星帝国に奪われるのを拒み続けた地球評議会は、国家主権を承認しなかった。それどころか、不平等規約を結び横暴を働き続けていた。
当時、惑星自主独立を謳う「赤さび大地の運動」のリーダーが、火星帝国レッド・テラ、大グラン朝を初代皇帝ジェシカとして打ち立てたばかりで、政治的決断を迫られていた。
この物語は、そんな時代の断片である。
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