シェアード・ワールド、「幻創体」マジシャナルズの参加者募集中です。
序
人の命なんてものは、鉛の弾一つで清算されるほど安いものさ。
ほんの十セントで釣りがくる。
誰かが言った。
人の命は大地よりも重いと。
喜ばしいことだ、土塊よりは重いらしい。
鉛弾よりは軽いがね。
戦艦ビスマルクの朝
藤川大和&隆見ヲサム
エピソード 天を撃つ男
水平線の彼方、北大西洋の洋上に巨大な建造物があった。
傍らにも巨大な戦艦が浮かんでいる。全長は二百五十メートルを超えて、雄々しく巨体が太陽の光を浴びていた。
前方に向かい美しい曲線を誇る艦首には、ハーケンクロイツが新たにリペイントされているが、今の時代それが何を意味するかなど歴史の知識にたけたものにしか解らなかった。
その戦艦の名をビスマルクという。
ヴィルヘルム一世のプロイセンの鉄血宰相と呼ばれた、旧西暦1871年一月にヴェルサイユ宮殿でドイツ帝国、ビスマルク体制というヨーロッパの時代を作り上げた歴史上の人物、オットー・フォン・ビスマルク。その男に因んで名付けられたとされる。
旧西暦1940年に就役されたこの戦艦は、いにしえの戦争で撃沈された後、何故か何千年も海中で朽ち果てることなく横たわっていた。ところが、それを、二日前に引き上げられたばかりだった。
引き上げられたとはいえ欠損しているところもあった。主砲砲塔の一番目、アントンという名で呼ばれていた38センチ47口径連装砲もその一箇所だった。
すでに人類は、地球だけではなく月と火星に進出し、スペース・コロニーまで生産できる高い技術力を持っている。その技術力で戦艦ビスマルクの修復も急ピッチで進められていた。
引き上げ作業を、仕切っている科学者たちの興味は何千年も朽ち果てることの無かった外壁と機関室にあり、今も何百人もの科学者が金属測定や機関室の調査をおこなっている。
ビスマルクの甲板で作業員たちが働くなか、引き上げ基地になっている海上メタンハイドレード採掘基地跡、その基地の隅、つまりは海中へ続く柱の上に設けられた四機のクレーンが起動しながら、潮風をうけて泣き声のような音を奏でている。
クレーンはちょうど今も動き続けており海中にとワイヤーを下ろしていた。クレーン操作室の一室に人影があった。操作室の窓ガラスは割れフレームのみになっていたが、クレーンの操作には雨や嵐が来ない限り、支障はなかった。
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