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新年明けましておめでとうございます。本年度もよろしくお願いします。
最初に謝っておきます。
今回、自分の恋姫主要メンバーは桔梗、紫苑以外は名前しか出て来ません。
次回は出ますので御許し下さい。
後、今回出て来る者達は12話のサブキャラばっかりです。
解らないようであれば一度12話のサブキャラ紹介を読む事をお勧めします。
また、途中で出てくる徹里吉・越吉は今後も少し出てくるかも知れません。


夷陵及び嘉陵江での戦い
 時は少し戻って白帝城で法正(明実)が会議室を彷徨っていた。
原因は自国を挟んでの隣国同士の劉焉が劉表と手を組み
自分達を挟み討ちにしようとしていた為である。横で見ていた鄧芝(真佳)が尋ねる。

「多分、皆が出て行った隙を狙ってたんだね。どうしよう?明実ちゃん。
一刀ちゃんに連絡しなくて大丈夫かな~」

「たかが劉表・劉焉の為に一刀を呼び返せって。冗談きついよ真佳」

「でも~相手は私達の倍以上だよ。西から劉焉さんが4万。東から劉表さんの4万。
私達が厳顔さんの兵も足しても4万にいくかどうか~……」

「西の劉焉は厳顔だけで殲滅出来るから任せても構わない。その為の策は打った。
俺達は東の劉表だけを相手にすればいい。しかし水軍と陸軍の連携が厄介なんだよなー」

そう言って再び室内をウロウロし出した。そこに董允(信思)が現れて

「明実。お前が言った通り奴等の目標はここ白帝城だ。脇目も振らずここを目指して来てる。
率いる将軍は水軍の蔡瑁と陸軍の王威、軍師に王粲。もう少しで国境に来る」

それを聞くと明実は自分の周りに居る2人と伝令に矢継ぎ早に指示を出していった。
伝令に巴郡の厳顔と自分の所から行っている費緯(彩加)と李厳(還樹)に
手紙を書き劉焉軍を殲滅させた後の事を記し渡す。
そして信思と真佳に「作戦通りで」と告げると彼女達も納得して準備を始めた。
更には内政担当の蒋エン(昇華)に何かを尋ねて彼女から了承を貰い会議室を出ていった。
そして軍団長を別室に集めてこういった。

「夷陵で劉表軍を殲滅させる。全員これから言う事をよく聞け。用意して貰う物が有る」
と言い軍団長達に指示し、必要な物を集めさせて出陣した。

 一方、桔梗達の所には劉焉の部隊が嘉陵江の対岸まであと少しの処まで迫っていた。
数日前に来た明実から来た書簡を見ると

「嘉陵江の対岸に劉焉軍が来る前に城を出て対陣せよ」

と書かれており桔梗は初め目を疑った。
しかし書簡を読んでいく内に段々と策の内容が解るにつれて感心する程準備され
練られた策が書いてあった。
書簡を見てこの城に居る兵約2万の内の1万5千を出陣させて
支持通りに陣を張り物資を溜めこみ、翌日に現れた劉焉軍の到着前に準備を終わらす事が出来た。
 桔梗は北郷軍の2人を前に軍議をしていた。

「敵の大将は呉懿、副将に呉蘭、雷銅、冷苞、総数は約4万。まったくもって嫌になるのう。
とうとう劉焉も本気になったか。だが此処で奴等を叩ければこちらが有利になる
ここが正念場じゃな。準備は良いか2人とも」

そう言うと李厳は笑顔を浮かべて

「あたいも部隊の連中も問題なしですよ、桔梗の姉貴。しかし明実の策が決まった時の
奴等の顔が見ものだなー。どんな顔になるのか楽しみで、楽しみで」

費緯はお気楽そうな李厳をみて

「還樹はいいよねーお気楽そうで。桔梗様、我が隊も特に問題ありません。
明実の書簡通りに仕掛けは準備終了しました。後は彼女達を待つだけです」

 2人の報告を聞くと桔梗は横でワイワイ言いながら話している2人を見て考えていた。
自分達のすぐ近くにこんなにも優秀な者達がいたのかと。
桔梗も何度か諷陵や白帝城にも行ったことが有り何週間か駐屯した事もある。
その時に何名か優秀な者を見つけ巴郡に誘った事はあるが、
この者達や白帝城に居る者達に比べると雲泥の差であった。

 この者達は自分達で考えて堂々と対処している。主や重臣が居ないのにだ。
それだけでも驚愕に値する。これが自分の所だったらと思うとゾッとした。
桔梗がいない時は焔耶が軍の指揮をとる事になる。
焔耶の性格からしてこの様な時は撃って出て活路を見出そうとするだろう。
そこから導き出される結果は敗北する確率が高い。

 しかし彼女等は一刀が主力の将軍や部隊、軍師達を連れて行って首脳陣が
不在時でも自分達の考えや行動に対する意思統一が出来ており
基本方針さえ守れば何をしても良いと言われているという。
だからその考えに沿って自分達のやる事を行なっていた。
 しかし、その考えに盲信する事なく、自分の考えと照し合せてから行動する徹底ぶりだった。
書簡の策も他国の情報を相当詳しく知って無いと無理な程に詰められており桔梗を驚かせた。
 桔梗がこのような事を考えていると城の方から伝令がやって来て言った。

「桔梗様にもうしあげます。只今、門の方に黄漢升と仰られる方が
面会を求めて居られますがいかが致しましょう?」

それを聞いた彼女は立ち上がり自分が迎えると言って門の方に走って行った。
門が見える所まで行くと見覚えのある顔が二つ見えてきた。そして

「久しぶりだな、紫苑。璃々も元気か?」

と桔梗が言うと元気な声が返ってきた。

「うん!!璃々は元気だよ。桔梗さん!!」

と愛娘が親友にちゃんと挨拶出来た事に微笑みながら落ち着きのある声で

「桔梗の方こそ大丈夫なの?噂では州牧劉焉殿と争っていると聞いたのだけど?」

すると桔梗の方は璃々の頭を撫で少し笑い二人を居城に向かい入れつつ

「初めはどうなる事かと思ったが御館様の方が数倍も上手だったわ。
自分達が居ない時を狙って劉焉や劉表が来る事が見抜いておられた。
その為の準備も疾うの昔に終わっていたと見える。ワシは殆どする事がないわ」

そう言って両手を広げおどけて見せた。それを見て

「そう、流石は「天の御遣い。北郷一刀」といったとこかしら。
まあ貴女が自ら配下になったという、それだけで私にとっては名君だと
信じるに足る証拠なのだけどもね」

そう言う紫苑を李厳と費緯のいる軍議場に連れて行って紹介した。
 
 その日の翌日のこと夷陵付近で少数の軍勢で劉表軍と戦う鄧芝の姿が有った。
彼女は陣に籠り劉表軍が攻撃してきて有る程度の時間が経つと呑気な声で

「う~ん、もう良いかな?じゃあ皆、明実ちゃんの作戦通り、ゆっくり慌てず撤退しようか~」

と言って後方に作って有る陣に逃げ込む事を繰返し陸上の軍勢を徐々に川辺より離して行った。
 当初余りに手応えが無い為に策を疑っていた王威であったが、
相手が撤退を繰り返すばかりの戦が何度も続き、彼も周りの将兵も或る噂を信じるに至る。
その噂とは、北郷領に放った斥候の諜報網に引っ掛ったもので、

「北郷軍は主力の帰りを待つ為にわざと撤退を繰り返し疑心暗鬼を誘い時間稼ぎをしている。
そうやって時間を稼ぎ主力が戻れば一気に劉表・劉焉を叩くつもりだ」

というもので今の状況にぴたりと当て嵌まった。
彼らは奪った陣に罠や伏兵が居ないかを気にし陣を奪う度に捜索し深追いを避けていた。
陣には多いとは言えない位の糧食しかなく籠って戦うとは思えず、
それらの事を考え、王威は自分の前に居る部下達に軍議で一気に攻めると発言する。

 しかし軍師の王粲は反対し今まで通り水軍と連携を密にし慎重に進軍する事を提言するが
王威はそれを却下するのであった。
王粲は軍議の後一人その場に残り空を眺め溜息をつくのだった。

 王威が罠とは知らずに進軍し水軍より引離された頃 
夷陵近辺に停泊してあった劉表軍の軍船が謎の衝撃音とともに次々と燃えていた。

「何だ!!何が起こっている、誰か報告しろ!!」

と水軍大将の蔡瑁が大声で喚き散らすその横でまた軍船が燃え始めた。
周りでは兵達が反狂乱状態で

「北郷軍の夜襲だー」
「早く逃げろー」
「こっちにも火が着いたぞー」

と逃げ惑い大きな声を出していた。
 本来なら蔡瑁は彼ら大声を出す者や逃げる者を斬ってでも大人しくさせないといけない。
そうしないと何時まで経っても混乱は収まらず余計に被害を拡大してしまう。
しかし彼はそれをやらず結局、彼らは無事な船を燃えない様に後方に下げる事しか出来ず
朝を迎える。そこにあった光景は悪夢としか言えなかった。
昨日までこの長江を雄大に登って来た船の3分の1を失ってしまっていたのである。

 明実が立てた策は結論から言えば大成功と言って良かった。
彼女の作戦は、まず初めに鄧芝に劉表軍の陸上部隊に攻撃を仕掛けてわざと負けさせ
設営した陣地を明け渡す事までして自領の奥深くまで敵軍を引き摺り込ませる事で
陸上部隊を夷陵に誘導し水軍との連携を難くする事で、まず水軍から叩く作戦だった。
 
 水軍に火を放ったのは長江流域をねぐらに水運業者の護衛を生業とし
水上の戦いに慣れている「錦帆賊」と呼ばれる者達に協力を求めた。
彼らは初め北郷軍より劉表軍に味方しようと考えていた。
 しかし劉表の配下である黄祖が彼らを賊としてこの際、北郷軍と一緒に滅ぼそうと
劉表に進言する。この話を聞き彼ら「錦帆賊」は怒り狂い北郷軍に味方する。
 
 彼らはまず陸軍が水軍との連携が取れなくなったのを確認し夜陰に乗じ近づき
火を放って行った。そして予め潜入させておいた者に大きな声を出させ
劉表軍の混乱に拍車をかけさせて被害を大きくさせた。

 水軍が被害を受けていると聞き軍師の王粲は大将の王威に後退する様に進言するが
此処まで進軍し大した被害も無く敵陣を幾つも奪い油断しきっていた王威は
進言に聞く耳を持たずこのまま進軍すると言ってその場を後にする。
王粲は自らの配下に撤退準備をさせ一番初めに奪った陣地に戻るとだけ告げたという。
その事を聞いた王威は「構わん、好きにさせて置け」とだけ言い
王粲はそのまま江陵方面にに撤退していった。

 その日の夜密偵から劉表軍の大将と軍師が仲違いをし軍規も乱れており油断していると
報告が有り法正と鄧芝それに董允は今夜が勝負という事で準備にかかっていた。
今彼女達が居るのは王威達が奪った陣を見降ろす事が出来る場所である。
 王威は敵が来るなら白帝城方向からだと決めその方向には警備を厳重にしていたが
自分達が奪った陣にはわずかな兵しか残さず警備は緩かった。

 そこで水軍が後退したことにより警備が薄くなった地点を通って
彼女達は後方の陣より一気に攻め込み王威の籠る陣に烈火の如く迫って行く。
王威は後方の陣に異変ありと報告を受け何個かの小隊を向かわせ
様子を見に行かせたが帰って来る小隊は無かった。
 見に行かせた小隊が返ってこないと報告を受け王威は慌てて戦闘態勢を指示するが
時すでに遅く指示を受けた部下が体制を整えようとして外に出た時には北郷軍がすでに
門前に迫っており門を破壊しようとしていた。

 外が騒がしい事を不審に思い外に出た王威は北郷軍の来襲に気付き
周りに居た者達を静めようとするが来る者は僅かで他の者は討たれるか逃げるか
投降するかのどちらかであった。
王威は周りに来た者達を纏め一点突破を掛けようと陣形を整え突撃し後方に逃げていく。
彼が周りを見渡すと側に居る者は千名にも満たず、このままでは何も出来ないと考え
そのまま後方の陣に逃げ込むしかなかった。
後方の陣に着き朝を迎えてから戻って来た者を含めても8千に届か無いほど減っている事を
報告に受けて江陵まで撤退する事を決め迎えに来た王粲に合流した。
水軍が陸軍が大敗したと聞いたのは翌日であり彼らもそのまま江陵に撤退するのだった。

 一方の明実達は追撃は無用と全軍に徹底し作った陣や戦後の後始末をして白帝城に帰還するが
損害や戦利品の分配などの報告書作成という激務が三人を待っていた。

 夷陵にて劉表軍が敗れたのとほぼ同時間の事、厳顔達と対陣していた劉焉軍の後方に
近づく部隊が有った。青羌部隊である。大将の呉懿は

「青羌部隊が援軍に来ると誰か劉焉様に聞いていたか?」
と隣に居た副将の呉蘭に尋ねるが、彼も「知りません」と答えるだけで残りの雷銅も冷苞も
尋ねられるが答えは同じであった為に呉懿は冷苞に様子を見に行くよう命令した。
命令を受けた冷苞は自分の部隊の何名かを連れこちらに向かって来る青羌部隊の行軍を
遮ろうと正面に立ち行軍を停止させ彼らの隊長の下へ案内するように大声で叫ぶ。
行軍が停止し軍が二つに割れ、開いた間から二人の者がこちらにやって来ていた。

 その姿は二人とも鎧を着ず毛皮を着て毛皮の隙間から見える胸には胸当てが見え
頭には毛皮を貼った帽子を被り、靴も毛皮を貼ったブーツを履いている女性がやって来る。
冷苞の目の前に自分より背の高い二人の女性が来て挨拶をし彼女達の一人が話を始めた。

「久しぶりですね、冷苞殿。どうして私達の進軍を邪魔なさるのか聞きましょう?」

自分より背の高い女性にそう言われながらも冷苞は

「それはこちらが聞こう。何故お前達が此処に居るのだ。徹里吉てつりきつ越吉えつきつ

徹里吉と呼ばれた女性は目の前に居る冷苞を見下ろしながら

「私達が此処に来たのは貴方達の君主様から命令されたから以外無いでしょう?
それ以外に私達が此処に来る用事なんて無いですもの」

そう言うと彼女は横に居る越吉に目配せする。越吉は手に持っていた竹簡を無言で冷苞に渡す。
越吉から竹簡を乱暴に受け取った冷苞はそれを読み始めた。そしてしばらくし

「劉焉様から言われたというのは本当みたいだな、少し待っていろ、呉懿殿に報告してくる」

そう言い本陣に去っていく冷苞を見て徹里吉・越吉の二人はお互いを見合って微笑した。

 前回、彼女達は大将の劉璋に奇襲が有るから注意しろと何度も進言したが、
劉璋はそれを無視し無謀にも総攻撃に移ろうとした所を背後から突かれ敗北した。
しかも事も有ろうに劉璋はその敗北の理由を彼女達が積極的に動かなかった為と報告し
彼女達は劉焉から叱責されていた。彼女達は最後まで戦場に残り敵を食い止めていたのにだ。
徹里吉はそれを我慢し、叱責の後に劉焉にその時の戦の報奨金を要求した。
彼女達「青羌部隊」は劉焉の正規兵ではなく一傭兵部隊に過ぎない。
その為、戦一回に幾らと交渉する。前回の戦の時もそうやって交渉し参加したのだ。
しかし劉焉はそれを拒否し挙句の果てには彼女達に約1週間の謹慎処分を言い渡した。

 謹慎処分に怒り如何しようかと考えて3日程した時に北郷を名乗る者が接触してきた。
徹里吉に使者を送ったのは法正である。
彼女は劉焉軍の動向を逐一調べ何処かに付入る隙を探していたのである。
法正は密偵から徹里吉等の状況報告を聞くと直ぐに風に相談し策を実行する。

 まず彼女等に接近しこちらに付く積りが有るかを配下に聞きに行かせた。
これが北郷軍の策略である事は解ったので慎重に対処する事にしその場での返答は避け
使者が帰った後、部下達を集め話し合った。
 
 皆は劉焉に対し反感を持ってはいたが表だって反抗するのは得策ではないし
第一、北郷軍を本当に信じて良いのか疑問があるとの意見が出され
話は纏らず最後に徹里吉に決断は委ねられた。彼女はその場で皆に対し

「北郷が信じられるか幾つか条件を出して試そうと思うのだが」

そう言って彼女が出した条件が以下の3つであった。
1 まず味方になるにあたって、戦の協力資金を用意する事
2 成功の暁には依然もらっていたより更に報酬に上乗せする事
3 寝返った時の自分達の安全の保障
 
 翌日、彼女からの条件を使者が持ち帰りそれから5日程した時、彼女の下に新たな使者が来た。
その使者はその場で金塊と誓約書を差し出してこう言う。

「まず面会させて頂けた事を感謝いたします。私は全権を委任されました費緯と申します。
早速ですが、我らが主は貴女達の条件を全て飲まれ、まず準備金としてこの金塊をとの事です」

そう言い金塊を彼女の方に差し出して続ける。

「そして、この誓約書は条件等の事を記してあるとの事です」

そう言って徹里吉がその誓約書を読むと、自分達が提案した物より増額された金額が書かれ、
そして一番驚いたのは彼女達との関係を傭兵として雇うではなく一軍団として同盟を結びたいと
書かれていた事であった。まるで国家間で結ばれる約定のようである。
 徹里吉以外の者は目の前に置かれた金塊や誓約書を見て読み驚き
徹里吉自身も此処までの条件を出してくるとは思ってもいなかったらしく多少呆然としていた。
少しして自分を取り戻した彼女は費緯に尋ねる。

「貴方達はこれが劉焉と我らが組んで仕掛けた罠だとは疑わなかったのかしら?
今ここで貴女を捉え劉焉に突き出せば私たちの利益になると考えない?」
彼女が言うと同時に右手を上げると費緯の周囲に兵が集まり拘束しようとする。
しかし拘束されようとしている張本人はその瞬間大笑いし出し

「はっはっはははっ、自分を拘束し劉焉に突き出し埋まる位の亀裂なら
ウチの軍師達はこんな事させませんよ。
それに貴方達が自分を突き出しても信用はされないと貴方達も御分かりでしょう?
今回は約束を破られ、その上責任を押付けられて叱責され、その前は汚れ仕事をさせられ」

費緯はそこまで言うと皆を見まわし

「故郷に送るためとはいえ良くそこまで我慢したものです。ですが考えてみて下さい。
貴方達をそこまで扱き使い、約束を破る。一方的に悪いのはどちらかということを。
それでも劉焉に付くと言うなら仕方ありません。自分を劉焉の下に連れて行って下さい」

そう言うと費緯は黙ってその場に正座で座り込み目を瞑って彼女の判断を待った。
 費緯に言いたい放題に言われて頭に来た徹里吉であったが翌々考えているうちに
彼女への怒りが段々と劉焉に向かっていく事に気づく。
確かに彼女を劉焉の下に連れて行っても彼らはそれを当然の如く振舞うのは目に見えているし
彼女が言った通り一方的に約束を破り、汚れ仕事を押し付けたのは劉焉だった。

 徹里吉が自分に向けられる視線に気づき視線を向けると、
何人もの者が目に涙を溜め視線を合わし、しゃくり上げている者もいて、
そしてそれは自分の横に居る越吉も一緒だった。
それを見て彼女は目を閉じ暫く考えてから決断する。

「費緯と言いましたか?もし私達を貴女の主が裏切ろうものなら
私は貴女とその主を許しません。何が有ろうとも必ず命を頂きます。
その代わり我等を信じてくれるなら我等もそれに応え奮迅の働きをして見せましょう」

費緯にそう言うと自分の配下には

「我等は此処まで劉焉に騙され、脅され、彼に従ってきました。それも終わりにしましょう。
私達は次の戦より北郷軍に味方します。これに異議のある者はいますか?」

そう言い配下の者を見渡すと誰もが皆、声を揃えていった。
   
「「「「「「異議なし!!」」」」」

その場で北郷・青羌同盟が締結され、費緯は法正から預かった策を説明し次回の戦に対し
どう動いてもらいたい等の要望が費緯から出され徹里吉達は驚かされることとなる。

 そんな事が有り此処まで彼女達は来ていた。ちなみに先程冷苞に見せた竹簡は
筆跡を真似た偽物であり、それも法正が用意させていたのである。
彼女達は呉懿や他の将軍達を欺き劉焉軍の退路に当たる街道沿いに布陣するのであった。

 そんな事とは知らない呉懿達はどうやって厳顔達を叩こうか思案していた。
雷銅や冷苞は策など弄せず対岸に正面からの攻撃を加える事を主張したが
呉懿や呉蘭は慎重に行くべきだとし平行線を辿る。

 そしてその夜も議論が平行線を辿り軍議も御開きになって解散し皆が寝静まった頃、
厳顔軍の陣地より火の手が上がり、呉懿ら諸将は当直の兵に起こされて早速、
小隊に様子を見に行かせた。
すると厳顔軍の陣地の至る所より火の手が上がり大混乱しているとの事で有った。
その報告を聞き雷銅と冷苞は呉懿らが策略だという制止も聞かずに
自分の連れて来た軍、約1万5千を率い攻め込みに行ってしまう。その場に残された呉懿らは
策略だと解ってはいたが二人を失うわけには行かないので此処の本陣に3千程を残し、
青羌部隊に伝令をだし本陣を守らせてから残りの兵2万2千を率い二人の後を追った。
 
 冷苞等は嘉陵江を渡り厳顔軍の陣に雪崩れ込んだが、そこには誰も居無かった。
旗や武具兵糧等はそのまま放置しておりその量は彼らの目を釘付するのに十分な量であった。
厳顔軍は何処にも居ないとの報告を受けて、最初に呉懿達の前に報告に来た者を呼ぶように言い
少し待つが探しに行った者が何処にも居ないと報告してきたのでそのまま帰ろうとしたが、
雷銅達はその物資をそのままにするのは勿体無いと思い命令を出す。

「これだけの物資を置いて行くのも勿体無いし、我等が陣へと運びこめ」

そして何部隊かの者に周りを見張らせる様に命令し、彼等も戦利品を物色に行った。

 陣を物色している劉焉軍を少し離れて見ている者達が居た。桔梗達である。
自陣にある物資を運び出している彼等を見て、作戦の成功を確信し別働隊として別れた
費緯と李厳に合図を送る様に指示し自分達も準備に掛かる。

 そして火矢を上げ二人に合図すると横にいた黄忠こと紫苑に目配せし

「では奴等を殲滅しに行こうかのう、紫苑」
「ええ、では桔梗。私も久しぶりに軍を率いらせてもらうわ」

そう言って戦闘は開始された。

 火矢が上がりそれを合図に桔梗率いる部隊が姿を現した為、それを報告に来た者を連れ
外に出て雷銅と冷苞は周りで物資漁りをしている者達に命令するが兵達はそんな事より
物資漁りに夢中で彼等の命令に従う者は僅かしかなく攻め込んで来た桔梗達に気付いた時には
時既に遅く彼等は桔梗や紫苑率いる弓隊によって次々と倒されていくのだった。
雷銅達は周りに集まった部隊を率い撤退を開始したが、彼等も手一杯に戦利品を抱えており
行動も遅く、士気も先程の奇襲により大幅に落ち込んでいた。

 そこに「ジャーン、ジャーン」と銅鑼の音とともに彼等の側面から李厳の部隊が現れて

「うっしゃあ、流石はあたい!!狙うは敵将のみ。全軍突撃」

奇襲を受けた事により見る間に兵は倒れていく。

 二人が此処までかと思った時、後方より河を渡って来た呉懿達の部隊が李厳の部隊に当たり
その隙に雷銅達は呉懿達と合流しそのまま本陣に撤退しようとして行く。

 呉懿達が部隊を河に進めようとした時だった。対岸の自陣が燃えている事に気づく。
対岸の渡河地点には自分達を迎える様に武装した青羌部隊と費緯の部隊が待ち構えていた。

 彼女達は呉懿らが渡河した後、既に渡河し隠れていた費緯の部隊を迎え入れて素早く
本陣に残っていた将を討ち取り、その事を兵達に大声で伝え戦意を喪失させ制圧し
兵達を一か所に集めて拘束し憂いを無くしてから呉懿達が戻って来るのを待ち構えていた。
こっちにやって来ようとする呉懿達をみて

「うふふ、さあ皆の者に命じます。今まで我等を扱き使ってくれた彼等に御礼なさい」
「皆に命じます。こちらに渡って来る者を一人残らず殲滅ます。用意、打てー」

彼女等の言葉が発せられると同時に呉懿達に向かって弓矢の嵐が襲う。
 更に桔梗達も対岸に現れて矢を放ち徐々に河に追い詰められて行く。
盾を並べて防戦しているが両岸から放たれた矢が上空からも襲いかかり
飛んできては劉焉軍の命を奪っていき更に大混乱に陥った。
 
 5分程して弓矢での攻撃が止み呉懿が周りを見渡すと3万以上いた兵が半分ほどまで減らされ
残った兵も何処かに傷を負い士気も低く、戦える状態ではない事が一目に解ってしまう。
対岸から見ていた桔梗もそれが解った為、投降するように使者を出した。
桔梗の使者から投降せよとの文が届き、呉懿と呉蘭、雷銅は如何し様も無いと諦め投降した。
ちなみに冷苞は先程の攻撃にて矢が何か所も当たり治療を受けていた。

 桔梗はまず劉焉軍の負傷者を手当てする様に全軍に伝え呉懿らにもそれを伝える。
更に対岸に居る費緯や徹里吉に伝令をだして呉懿らは投降したと伝え、そちらも
負傷者等の救助を優先する様に伝えた。

 負傷者の手当てが粗方済むと呉懿、呉蘭、雷銅、冷苞を呼び北郷軍に仕える積りが有るかを
尋ねるが4人とも北郷には従わないと言った。李厳や徹里吉は討つべきだと主張したが
桔梗や費緯は一刀の裁定を待つべきだと言って彼等を諷陵に護送することを決める。
更にその場で法正より来ていた指示に従い李厳、費緯、徹里吉等は周辺の劉焉に味方する
諸侯を牽制する為に彼女等の兵を各地に派遣し、此処での戦闘を大々的に噂として流した。
その効果もあってか、何日後には続々と北郷軍に寝返りたいと記した書簡が白帝城に届けられる。
彼女達は一刀が戻って来るまでそれらの作業に追われることとなった。






 本拠地に戻った袁紹が見た物は虎牢関で大敗した事、その後の董卓軍の長安追撃戦での敗戦が
大きな噂として民に広まっており、それを鎮静化する為に走り回っている文官達からの報告書と
今まで武力で抑えていた諸侯達の一部が反乱の兆しを見せているとの報告であった。
当然それに関し袁紹自身が何らかの手を打たなければいけないのだが、彼女は側近や片腕の顔良に
それを押付けてしまう。結局全てを片付けるのに結構な時間を費やしてしまう。
またその時の時間のロスが袁紹の運命を左右するとは思っても見ないのだった。

 しかしそれは袁紹だけに有らず袁術、韓馥、孔融等の広まった噂に対し何も対処しなかった
者達の領地では尽く袁紹と同じ様に何かしらの噂や一時期収まっていた黄巾の残党が幅を利かせ
領地を荒らすなどの被害をもたらしていた。

 反対に広がった噂に対し対処をした曹操や孫堅、劉備達の領地では噂は広がっていたものの
それ以上広がる気配を抑える事に成功し、大きな被害を出す事も無く短期の内に次の行動に
移ることができるようになった。

 これから後、曹操と劉備に勅使が訪れて州刺史に任じられた事が始まりであったかの様に
群雄割拠の時代が動き出すのだった。
此処まで御読み頂きまして有難うございます。憂鬱です。
今回もきつかったです。体中に今(1月6日現在)帯状疱疹が出来て痛いです。
真面目に睡眠中、2~3時間置きに目が覚めて困っております。
でも読んでくれる方が居る限り頑張ります。

今回出て来た徹里吉や越吉は三国演義の方に出てくる五胡の内の一つ羌の
君主及び武将です。詳しく知りたいなら検索すれば出て来ます。
また今回出て来たオリサブキャラ達は今後偶に名前だけでも出せればと
考えております。

次回は或る方の目線で少し話を進めたいと思います。
それと出来れば一刀達が帰って来た後の拠点等もやれればと考えております
今回も御読み下さいまして有難うございました。
恋姫無双 稟 風


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