まどうしとつくりもの
あるまどうしがつくった
いつわりのいのち
いつか かれのすべてを
くいつくすことこそ そのしめい
まどうしは つくりものに
ことばをあたえた
── じぶんのことばをつたえるために
まどうしは つくりものに
ちしきをあたえた
── じぶんのねがいをりかいさせるために
まどうしは つくりものに
じがをあたえた
── じぶんのねがいをかんすいさせるために
けれど まどうしはひとつだけ
あたえることができなかった
── それは”かんじょう”
それはまどうしがあたえるものではなく
つくりものが じぶんでえるものだから
+ + +
あるまどうしがつくった
いつわりのいのち
いつか かれのいのちを
くいつくすことこそ そのしめい
つくりものは まどうしに
ことばをもらった
── けれどおもうようにことばはでなかった
つくりものは まどうしに
ちしきをもらった
── けれどそれはつくりものをなやませた
つくりものは まどうしに
じがをもらった
── けれどそれはつくりものをくるしめた
まどうしがあたえられなかった”かんじょう”
それがそだつにつれ つくりものはむねをいためた
なぜなら つくりものはまどうしのねがいを
うけいれることができなかったから
+ + +
なんのために うまれた
── あるじをいつかくいつくすため
なんのために あたえられた
── あるじのねがいをかなえるため
なのにどうして
”かんじょう”はそれをじゃまするのだろう?
+ + +
── ”あなたがすきです”
+ + +
それはとても おかしなはなし
それはとても ふしぎなはなし
それはとても かなしいはなし
あたえられなかった”かんじょう”
うまれるはずのなかった”こころ”
つくりものは まどうしをたべなければならない
それこそが うまれてきたりゆうなのだから……
+ + +
あるまどうしがつくった
いつわりのいのち
いつか かれのねがいを
かなえることこそ そのしめい
まどうしは つくりものに
ひとつたずねた
── うまれてきたことをこうかいしているか?
つくりものは まどうしに
はじめて ”はい”いがいのこたえをかえした
── ”あなたがすきです”
+ + +
そのとし さいしょのゆきがふったひ
まどうしのいのちは つきはて
つくりものは
まどうしのねがいを かなえた
+ + +
まどうしは さいごにいった
── おまえにもうひとつ あたえられなかったものがあった
しらないはずだったなみだをこぼし
つくりものは まどうしをかきいだく
あたえられなかった”かんじょう”
うまれるはずのなかった”かんじょう”
いつのまにかそだった”かんじょう”
すべては ゆいいつのひとへのおもいゆえに
── わらえ
まどうしは つくりものにそういいのこし
しずかにいきをひきとった
+ + +
それはとても おかしなはなし
それはとても ふしぎなはなし
それはとても しあわせでかなしい
まどうしとつくりもののはなし
以前「みてみん」でアップしたイラスト+テキストと同じというか、小説だったらこういう流れになるよ的なものを、童謡(?)っぽく書いたもの。
全部ひらがななのは、この作品の視点が基本的に『つくりもの』側にあって、つくりものが人ではないからです。
知恵がついてくると少し漢字が増えるんですけど、後半だけ漢字があってもあれかと思って全編ひらがなにしました。
ちょっとどころか、まんまネタバレですので小説という形で彼等の話を書く事は多分ないかと思います。
書く余裕がないのが一番大きいですが、結末でわかるように食人描写とかも入るんでなろうで書いていいのか悩ましいってのもあります(笑)