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乾は男の意

男らしさ
男の役割
ジェンダーアイデンティティ

ってなんだ?

※W・B・Arrianceはファンタジー小説です。
11.2.黒い三日月―乾―
7年前 ロロ・ウー 16歳

道士となって2年

その活躍は周囲の期待以上にめざましく

一族は早々に縁談を持ち込んだ。

相手は権力者の娘。

縁談はトントン拍子に進められ、
数か月でロロと娘は夫婦となった。

いわゆる政略結婚だった。

同じ時期、ロロの同輩たちもまた道士として巣立ち始めていた。

それは修業時代の同輩たちの間の、ロロに関する噂が
今度は同僚達にも広まる原因となった。



夫婦生活が始まりしばらくして、
娘はあることに気づいた。

ロロのじぶんへの扱いは、
まるで教科書のように型通り、理想通りだった。

しかし、
それは行動のみで、
気持は全く伴っていなかった。

娘はロロに尋ねた。

「あなたから気持ちが感じられません。
 私のことを、本当に愛して下さっているのかしら」

ロロはその女特有の面倒くさい質問に、
心底面倒くさいと感じながらも、
当然のように「是」と答えた。

しかしそれは"一族に有利となるモノ"として、という意味だった。

女のカンは鋭く、
娘はそれに気がついた。



うわべだけの夫婦の関係が冷え切ってほどなく、
ロロは寺院の上層部に召喚された。

「同僚たちから苦情が来ておる」

ロロには心当たりがなかった。

"すべてを完璧にこなしている"

常日頃そう思っていたからだ。

「お前の同僚たちへの態度が、
 "友を超えたもの"に感じ、気持ちが悪いと」

ロロはきょとんとした。

ロロ「態度?」

上司は改めるようにコホンと咳払いをした。

「具体的には
 身体への不必要な接触が多い、
 視線や言動が友との関係を超越したもののように感じる」

ロロは誰からの苦情かすぐに見当がついた。

ロロにとって「唯一」と言っていいほど、
「完璧」を装わなくてもよかった、
一番仲が良いと思っていた、
ある同僚だ。

ロロは生まれて初めて「言葉を失った」という体験をした。

「つまり」

上司は押し黙るロロに侮蔑の目を向けながら続けた。

「男色の気があると」



桃花源国に広まる神使教の宗派の多くは
同性愛を固く禁じていた。

生物の生きる目的=子孫の繁栄としており、
それに反するという理由からだ。


言われてロロは気がついた。

同僚の苦情の意味を、
妻の問いの意味を。


同時にロロは否定した。

一族に対して"完璧"である自分が、
"そのような間違い"を犯すはずがない、
これは単なる"言いがかり"だと。



話は即刻一族にも伝えられ、
ロロは激しく非難された。

「男色などもってのほか」
「はやく子どもを作らないからだ」
「同僚とは一切かかわるな」
「その同僚が悪い」
「嫁の一族に何といえば」
「家の恥」
「どうするつもりだ」


ロロ(おれが一体いつどんな"間違い"を犯した?)

"全く意図していないことを謂れのない理由でとがめられている。"

ロロは自分の何が悪いのか、
どうして非難されているのか、
全く理解できなかった。

なぜなら
自分は"完璧"であり、"間違い"を犯すハズがない
と考えていたからだ。



こうした
孤立無援の環境、
本心に耳を傾けぬまま"間違い"を否定し続ける自分、
そして周囲への反抗心、

それは
本当の気持ちに気づけぬまま、
ロロ自身を歪めていった。


ロロは変わった。

現実逃避のように、ひたすら"ある研究"に没頭し、
自分を蔑視する者に対してや気分によって、他人に暴力を振るうようになり、
事が自分の思い通りにならないと、ひどくヒステリックになった。


やがて、
妻から離縁され、
寺院から破門され、
一族から勘当された。


ロロは一人になった。


孤独は、
誰にも正されることのない自分の歪みきった心と日々向き合う時間を与えた。

誰にも正されることのないその時間は、
ロロの歪みきった思いを、ただただ増強させていった。





今思えば、
家で甘えられず、
子供らしくふるまうこともできず、
それができる唯一の場が友達や同僚たちだったのかもしれませんね。

徐々に闇に落ちてゆくロロ。
彼はどこへたどりつくのか…?

残り2話分かけて、追ってゆきたいと思います。
最後まで読むと、もしかしたらロロという人間の考え方が、
ちょっとだけわかるかもしれません。

次回は2/20更新予定