今年度最後の本編。
山越え中、仲間とはぐれてしまったよしの。
どうする!?
よしの「フィード様ー!エオル様ー!」
吹きすさむ雪
一歩先の視界すらままならぬ雪山で
よしのは必死に目の前にわずかに霞んで見える2つの影を追っていた。
ヴィンディア連峰"乗り越えた先の楽園"8合目
灼熱の砂漠地帯だった下界とはうって変わって、
極寒の猛吹雪
膝まで埋まる積雪
寒さは寒さを通り越して肌を突き刺し
辺りは息をするのもやっとの猛烈な風の音以外、何もない
白い闇の世界―
―――― white shout(白い叫び) ――――
突然、よしのが追っていた大小2つの影のうち大きい影がパタリと倒れた。
よしの(えっ!!)
「エオル様!!」
「あんたぁ!大丈夫かぁ!」
男の声がきこえた。
右方向からだ。
声のする方から、
ぼんやりと陰が濃くなり、
それはよしのの目の前でようやく弓を構えた男の形をくっきりと映し出した。
よしの(あの弓…まさか…エオル様!!)
男が何かを話しかけてくるのを振り切り、
よしのは雪をかき分け倒れた影に駆け寄った。
視界ほぼゼロの中、小さい影が大きい影を抱えて引きずっている。
よしの「フィード様!お手伝いしますわっ!」
よしのも大きいほうの影の大きな腕を担ぎ、
先ほどの男から逃れるように必死に雪をかき分けた。
やがて、大人の背丈ほどの高さの小さな洞穴にたどり着いた。
よしのは体に積もった雪にわき目もふらず、ヤサカニを発動した。
よしの「エオル様!傷を…」
ヤサカニの仄かな灯りで、よしのは初めて気づいた。
真っ白い毛むくじゃらの、
ゴリラのような生物が二匹、
よしのを見つめていた。
よしの「…」
(追う影を間違えてしまったようです)
よしのは目の前の"間違えた影の正体"をまじまじと見つめた。
大きい白ゴリラと小さい白ゴリラ、親子のようだ。
親のほうは、息が荒い。
その脇腹からは真っ赤な血が噴き出していた。
よしの「おケガを…!今、治しますね!"せんゆ"!」
ヤサカニがよしのを中心に横に回転し、
よしのの正面に黄緑色の宝珠が現れた。
黄緑色の宝珠は黄緑色に輝きだし
ガウゥゥ!
ヤサカニに驚いたのか、親ゴリラの平手打ちがよしのを襲った。
よしの「!!」
バチイ!
親ゴリラはヤサカニの結界に弾かれ吹き飛んだ。
よしの「あっ!」
親ゴリラはぐったりしている。
「キー!」
子ゴリラがよしのに向かって走り出した。
よしのは慌ててヤサカニをしまった。
よしのの太股ほどの背丈の小さな毛むくじゃらは、
ポカポカとよしのをたたき始めた。
しかし、
ポスポスとよしのの服を揺らすだけで、
よしのは全く痛くなかった。
よしの「ご、ごめんなさい…!こんなつもりでは…」
「ミュー!」
よしのの服の中から、クリスが飛び出した。
クリス 「ミューミュミューミュー」
子ゴリラ「キー…?」
クリス 「ミュ!」
よしのはポカンと二匹のやり取りを眺めていた。
少しして、
クリスはよしのに向かい、「ミュ!」と短く鳴いた。
続いて子ゴリラがよしののスカートの裾をグイグイと引っ張った。
よしの「お母さん(←よしのの妄想)の手当て、してもいいのですか…?」
子ゴリラはしきりに親ゴリラによしのを近づけようとしている。
よしのは固く目をつぶった。
よしの「ありがとうございます!絶対、助けますから!」
よしのは親ゴリラのそばに膝をついた。
よしの「危ないから、離れていてください」
子ゴリラはよしのをグイグイと引っ張り続ける。
よしの「どうしましょう…」
よしのはおもむろに子ゴリラを抱き上げた。
よしの「お願いします。どうか、この子を拒絶しないで…」
フワリ、とヤサカニは優しい光を湛え、よしのと子ゴリラを囲うように発動した。
よしのはホッとした。
しかし、安堵はすぐに引っ込め、"せんゆ"を呼び出した。
せんゆは瞬く間に親ゴリラの傷を治した。
よしの「ありがとう、せんゆ」
ヤサカニの仄かな光の中、
よしのと子ゴリラは親ゴリラが目覚めるのを待った。
腕の中にスッポリと収まる子ゴリラは、
不謹慎だが、愛らしい、
よしのはそう思った。
しかし、それはほんの一瞬で。
自分の胸に不安そうな顔をうずめる子ゴリラに
よしのは自分を恥じた。
そして、
子ゴリラの頭のてっぺんに頬を寄せた。
吹雪の音のみが洞窟に鳴り響いた。
一体どれだけ時間がたっただろう。
外はすでに真っ暗で、ヤサカニの仄かな灯りが余計に明るく感じた。
「ヴヴ…」
親ゴリラの指先がピクリと動いた。
よしの「!!」
よしのは自分に抱きついたままグッスリ眠っている子ゴリラを優しく揺り起こした。
子ゴリラは親が目を覚ましたことが嬉しいのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。
親ゴリラがむくりと起き上がると子ゴリラは親ゴリラにしがみついた。
よしの(よかった…)
はた、と親ゴリラとよしのの目があった。
よしのはにっこりと微笑んでみた。
「ガウゥゥ!」
親ゴリラはうなり声とともによしのに襲いかかった。
しかし
「キー!」
親ゴリラの背中にしがみついていた子ゴリラは親ゴリラの肩までよじ登り、腕に飛びついた。
「ガウゥ!」
親ゴリラは子ゴリラに吼えた。
よしのは慌てた。
自分のせいで、親子喧嘩が起きていると。
よしの「あわわ…どうか喧嘩はおよしになって…」
しかし、その喧嘩は突然収まり、二匹は洞窟から出て行った。
よしの(えっ!出ていかれてしまいました…)
少しして、二匹は再び洞窟に戻ってきた。
その両腕には、たくさんの野菜が抱えられていた。
よしの(このような環境でも野菜って育つんですね…)
ゴリラたちはよしのの前にボトボトと野菜を落とした。
よしのはきょとんとした。
よしの「もしかして…くださるのですか?」
ゴリラたちはこちらをじっと見つめている。
よしのはにっこりと笑った。
よしの「ありがとうございます」
翌朝も吹雪は止まなかった。
よしの「さて、私そろそろおいとましますね」
よしのが立ち上がると、ゴリラたちも立ち上がり、外に出た。
よしの「…?」
ゴリラたちはずいずいと進み、ぴたりと止まるとよしのを振り返った。
よしの(…ついてこいとおっしゃっているのでしょうか…?
ですが、きっとエオル様とフィード様にご心配いただいていますでしょうし…)
子ゴリラがパタパタとよしのの元へ駆け寄り、グイグイと引っ張った。
よしの「あ…ちょっと!」
フィード「よーしのー!」
エオル 「よしのさーん!」
叫んでは吹雪にかき消される声を振り絞り、
フィードとエオルは昨日からよしのを探し続けていた。
フィード「クソ…」
フィードは疲れたとその場にへたり込んだ。
エオル 「フィード」
なんだよ、とフィードはエオルを不機嫌そうに見た。
エオル 「このままじゃあラチがあかないよね。」
フィードはしわがれた声で疲れたように返した。
フィード「まあ…薄々気づいてはいたが…そうだな」
エオル (…気づく暇もないくらい必死こいて探してたくせに…)
「やり方を変えよう!」
フィード「どんな?」
エオル 「よしのさんに気づいてもらう」
フィード「…」
フィードはニヤリとエオルを見た。
フィード「なんだ?魔法は使っちゃダメっつったのはどいつだよ?」
エオル 「知らないの?"背に腹はかえられぬ"って、こういうときに使うんだよ」
フィードはフンと鼻を鳴らすと、天に向けて手をかざし、呪文を唱えた。
フィード「火炎龍!」
ゴオォォォン…!
フィードの手のひらから、炎の柱が天に向かって伸びた。
それは、しばらくの間、辺りを夕日色に染めた。
しばらくして、辺りは再び白い闇に閉ざされた。
フィード「どうだ畜生!」
エオル 「おつかれさん!10分後くらいにもう一度お願い」
フィード「…6発上げてダメなら"考え直す"からな」
エオル 「…そうだね」
―2発目をあげて数分後
フィード「…何か聞こえねえ?」
エオルは耳をすませた。
微かだが、低い、何かが軋むような音――
エオル 「なんだろ?」
それは徐々に、大きくハッキリと、
フィードとエオルの頭の上から降ってくるようになった。
「グルルルル…」
フィード「…」
エオル 「…」
2人の魔導師は恐る恐る後ろを見上げた。
そこには
白く長い体毛に覆われた3メートル近くあるゴリラのような生き物が
仁王立ちして2人を見下ろしていた。
フィード「よしの!ちょっと見ないうちに随分毛深くなって…」
エオルはフィードの頭をひっ叩きながら剣を抜いた。
エオル 「おばか!イエティだよ!
縄張り意識が強くて凶暴なんだ」
フィードはため息をついた。
フィード「縄張りねえ…
いつかのミミズみたくどっかの誰かにブチブチ言われる前に、
さっさと片付けるぞ!」
イエティは鋭い爪の生えた大きな手をフィードの頭の上に振りかざした。
フィード「ん?あれ?」
フィードの足は
雪にスッポリ埋まり、思い通りの動きをしない。
エオル 「フィード!何やってんの!!」
フィード「うお!」
無理矢理動かしたフィードの足はバランスを失い、
ガクンと膝から上だけ真後ろにひっくり返った。
そのスレスレ
フィードの真横で白いしぶきをあげ、
フィードの鼻先をイエティの爪がかすった。
フィードの隣にはイエティの爪の形に雪がえぐれていた。
フィードは苦笑いした。
フィード「っぶねー…」
再びフィードを狙おうとするイエティにエオルが声をかけた。
エオル 「こっちだ!」
イエティの意識がエオルに向いた。
エオルは剣を構え、勢いよく…
ズボッ!
エオル 「…」
ズボッ!
エオル 「…」
駆け出しかけたその足は、ぎこちなく雪から抜け出しは雪の中に埋まり
フィード「…なーにやってんだてめぇは」
エオル 「ちょっ!これ砂漠よりもヤバいよ!!」
イエティは格好の獲物と言わんばかりにエオルに襲いかかった。
エオル (そっか!
こいつはこんな雪ものともしない脚力があるのか…
こっちも踏ん張りがきけば!!)
エオルは威嚇するように剣を大きく振った。
イエティは驚いて2、3歩後ろによろめいた。
エオル (ん?このイエティ、剣が危険なものだってことを知っている…?)
フィード「そいつ、人間と戦い慣れしてるぞ!」
フィードの視線の先―イエティの背中には、
白い毛が生えそろっていない無数の切り傷や火傷の痕があった。
エオル 「!
旅人を襲っている…?」
エオルの脳裏に嫌なイメージが降ってわいた。
フィード「あいつは大丈夫だろ!アーティファクト持ちだぞ!」
エオルの様子に気が付き、
今は目の前のことだけ考えろ、とフィードが声を飛ばした。
その声にはよしのへの"信頼"があった。
エオル (いくらアーティファクト持ちだからって…
よしのさんは女の子だぞ!?
彼女は一人で大丈夫だって、絶対切り抜けられるって、
どうしてそこまで言い切れるんだよ…)
エオルの手が止まった一瞬を、イエティは見逃さなかった。
再び凶暴な爪がエオルを襲う。
フィード「小爆炎!」
ズガァン!
辺りに低い爆音が鳴り響いた。
イエティは白い背中から黒い煙をあげ、エオルのすぐ前にうつ伏せて倒れた。
エオル 「……どーも」
フィード「ったく、むしろ何でそこまでいらん心配できるのか、知りてぇくらいだぜ」
エオルは少しムッとした。
エオル「なんでそう女の子を俺たちと同じ扱いするかね」
フィードは抑揚のない声であるセリフを棒読んだ。
フィード「"女は案外男より強いものなのよ"」
エオル 「また受け売り?」
フィード「マリアのババアのな」
エオル (あー…君の女性の印象てそこなのね…)
ヴヴヴヴ…
エオル 「!」
イエティが苦しそうに立ち上がった。
フィード「ふん、真っ黒いパウダースノーにしてやんよ」
ブワッ!
吹雪が一層激しくなった。
フィード「いてててて!」
エオル 「雪が…」
フィード「!」
ドガァ!
イエティの平手打ちをモロに喰らい、
フィードは雪しぶきをあげ数メートル先に吹き飛んだ。
エオル (足場が悪いとはいえガードしたフィードをあんなに軽々と!?)
フィードは鼻血を拭いながらむくりと起き上がった。
フィード「ったく、雪のくせに埋まるばっかで滑りやしねぇ」
フィードはつまらなそうに鼻をすすった。
エオル (…意味がわからない)
「そりゃパウダースノーだからね…
……!」
エオルは剣をしまい、呪文を唱え始めた。
フィード「…!?」
イエティは危険なものがなくなったのを理解したのか、エオルに襲いかかった。
エオル 「浄水盤!」
イエティの頭上に円盤状の水たまりが現れた。
エオル 「魔法分解!」
バシャァン!
イエティの周囲に水たまりが一気に落下した。
水はたちまちに凍結した。
「オオオン」
イエティの柔らかな体毛も見る見るうちにパリパリと固まった。
エオル (よし!足場が固まった!)
エオルは剣を抜いた。
フィード「低火炎龍」
近くで見つけた適当な岩陰で、先ほどのイエティを丸焼きにし、
2人の魔導師は一日ぶりの食事をとった。
エオル 「ま、腹が減っては戦は出来ぬって言うしね」
フィード「ちったぁ冷静になったみてぇだな」
エオル 「そりゃあね。
…よしのさん、大丈夫かな…一人でお腹空かせてるんじゃ…」
フィード「今頃これと似たようなもん食ってるだろ」
エオル 「君のイメージのよしのさん、たくましすぎ!」
よしの「ここは…」
子ゴリラに引っ張られてやってきたのは、
雪に覆われた山あいの小さな集落だった。
親ゴリラはキョロキョロと当たりを警戒しながら、
集落の端に雪を積み固めて作られた雪室に近づき、ゴソゴソとあさりだした。
よしの「あっ!いけません!これはこの村の方たちの…」
ゴリラが雪室から取り出した食べ物に、よしのは見覚えがあった。
よしの(昨日いただいた食べ物…!)
「あっ!」
村人の声。
見つかった!
よしのは焦った。
一日ぶりに聞く人の声は、暖かいものではなく、恐ろしいものだった。
親ゴリラはよしのと子ゴリラを抱え、ドスドスと雪の中を逃げ去った。
村人は顔を青ざめさせ、呟いた。
「今の…人間!?」
親ゴリラはよしのを抱えたまま、元の洞窟に戻り、すぐさま"取って"きた食べ物を広げた。
よしの「これはいけません!食べてはダメなものです!」
二匹のゴリラはよしのの言うことがまるでわかっておらず、無心に食べ続けた。
よしの「ああ…どうしたことでしょう…」
ゴリラたちから何度か食べ物を差し出された。
確かに空腹だったが、よしのは食べたいとは思えなかった。
よしの(きっと、あの村の方々が生活のために大事に貯めていた食べ物でしょう…)
よしのはゴリラたちを見つめた。
よしの(この方たちは、ずっと昔からあの村から食べ物を取っていた…?考えにくいです。
きっと"こうなった"理由があるはずです。)
よしのは洞窟の周辺を探索することにした。
ちょうど吹雪が止み、空からは日が差していた。
よしの(この方たち、本当なら一体どういうものを食べていたのでしょうか)
辺り一面、雪と岩、植物一本すら生えていない銀世界。
よしの(…雪は食べてもお腹いっぱいになりませんし…岩は硬くて食べられません…)
しばらく歩いていると、遠くに黒い影がピョコピョコと動いているのが目に入った。
よしの(うさぎさんかしら…?)
元気一杯駆け回っていた影は、ガシャンという音とともに、突然倒れた。
よしの(!!)
駆け寄ろうとしたよしのは足を止め、積もった雪の影に身を隠した。
そっと覗くと、
男が2人、ウサギ(らしきもの)にゆっくりと近づき、
必死で暴れるウサギの足を片手で持ち上げ、麻袋に包み、立ち去った。
よしの(あ、狩りをしていらっしゃったのですね)
よしのは一瞬心臓が跳ねた。
よしの(狩り!?人間たちが…!?)
よしのは先ほどの村に雪室がたくさんあったことを思い出した。
よしの(…食べ物貯め…)
よしのはうつむいた。
――あの村の方々が、暮らすために山の食べ物を取って貯めていらっしゃる…
でも、取りすぎてゴリラさんたちの食べ物が…――
よしのが洞窟に戻ろうとしたとき、前方にオレンジ色の柱が天に向かって伸びているのが見えた。
しばらくして、そのオレンジ色の柱は消えた。
よしの(あ…!フィード様ですわ!)
よしのは急いで洞窟まで行くと「仲間がいるので失礼します」とゴリラの親子に声をかけ、雪原を駆け出した。
よしの(確か…あちらの方角…)
やがて再び日が陰り、ハラハラと雪が舞いだした。
それはたちまち、視界を白く塗りつぶす、あの猛吹雪と化した。
それは360°東西南北右左どちらがどちらかの感覚すらを奪い去った。
しかし、よしのは構わず駆け抜けた。
するとやがて、ぼんやりとオレンジ色の点が蛇のように細長く並んでいるのが見えた。
よしの(明かり…!)
よしのは近くまで駆け寄り、足を止めた。
それは、松明を手にまるで戦場に行くかのような物々しい格好をしている人々の列であった。
よしの(私たちを襲ってきた"あの方たち"でしょうか!?)
列の中の一人が大声をあげた。
「いたぞ!」
よしのはドキリとした。
よしの(見つかってしまいました!)
しかし、その列はよしのとは全く別の方向に走り出した。
よしの(…?)
それから少しして
「アアア」
低く、腹の底に響く叫び声。
よしのは反射的に声のするほうに走った。
フィード「次で6発目だぜ」
エオル 「…そだね」
安否すら確認出来ぬのに、
このまま6発目の火柱をあげても、
何もなかったら…
フィードは静かに手のひらを天に向け、呪文を唱えた。
やがて火柱が消え、
しばらくの間、
吹雪く音のみが辺りに響いた。
フィード「…行くぞ」
エオル 「……ん」
膝まで積もる雪を蹴り分けて、よしのは松明の集まるところに急いだ。
松明の群の目の前には、2人の白い影。
よしのは血の気が引いた。
松明の群は弓や刃物を構え、
目の前の白いゴリラの親子に向かっていた。
先ほどまでふわふわだった親ゴリラの真っ白な体毛は血に濡れて、
先ほどまで無邪気で可愛らしかった子ゴリラは親ゴリラの影で戦慄していた。
よしのは無意識に自分の知らないところで声を張り上げていた。
「ダメーーーーーーーっ!!!」
よしのは両腕を大きく広げて、松明の群の前に立ちはだかった。
群の1人が言った。
「あの子だよ!イエティに攫われた子は!」
よしの「えっ」
「待ってろー!今助けるからなー!」
よしの「違…」
ドスリ
よしのの脇を弓矢がすり抜け、後ろから鈍く短い音がした。
よしのは反射的に振り返った。
よしのの脇をすり抜けた弓矢が、子ゴリラの額に深く突き刺さっているのが見えた。
子ゴリラは戦慄した表情のまま、ドサリと真後ろに倒れた。
よしのは頭が真っ白になった。
何が起こったか理解できず、ただただ茫然としていた。
「クーン」
親ゴリラがしきりに動かなくなった子ゴリラを立たせようと子ゴリラの体を持ち上げた。
しかし、何度立たせようとしても、
子ゴリラの体は音もなく雪の上に転がるだけだった。
よしの「あ…あ…」
よしのは後ろに2、3歩よろめいた。
「やー!」
松明の群の何人かが、親ゴリラの背中に剣を突き立てた。
親ゴリラは静かに子ゴリラに覆い被さって倒れた。
よしのは膝から崩れ落ちた。
よしの「ゴリラさん…ゴリラさん…!」
ゴリラたちの元に這うように寄り添い、揺するために伸ばした手は、
よしのにただ、起こった事実を伝えるのみだった。
「女の子は無事だ!」
「大丈夫だったかい?」
松明の群がよしのを囲んだ。
肩に触れる生暖かさを感じたとき、
よしのは自分の中にヘドロのような感情がこみ上げてくるのを感じた。
よしのは心が動かすままに、勢いよい立ち上がりヤサカニを発動した。
「うわあ!」
よしの「!!」
よしのの近くにいた何人かが、ヤサカニの結界に弾き飛ばされた。
雪に倒れ込む人々を見たとき、よしのの中のヘドロはたちまち引っ込んだ。
人々と目があった。
その目はつい今しがたのよしののそれとは全く逆のものだった。
「どうしたんだ?」
「魔導師なのか?」
「大丈夫かしら?」
「怪我をしたんじゃないだろうか?」
よしのは耐えきれず、無心に駆け出した。
顔にぶつかる痛いはずの雪も、
膝まである雪を渾身の力で蹴り分ける足も、
よしのにとっては全く別の世界の出来事のようだった。
視界はただ白く、
ただただ、無心で、
この白い闇の世界を、
よしのは駆け抜け続けた。
ドン!
突然、何か暖かいものにぶつかり、
よしのは初めて前を見た。
そこには見慣れた赤色の瞳。
しかし、いつもは見慣れぬきょとんとした表情。
その表情はすぐにいつものからかうような顔に変わった。
フィード「よしのテメー!どーこほっつき歩いてやがった!」
いつもの冗談っぽいだみ声。
フィード「ったく、手間かけさせやがっ」
どん!
よしのは思い切りフィードの胸に飛びついた。
そして、自分でも信じられないほどの声を張り上げて思い切り泣いた。
フィードは慌てた。
フィード「なんだよ、迷子のガキじゃあるまいし」
フィードは呆れたように左手を自分の腰に当て、
だが不器用な手つきでポンポンとよしのの背中を叩いた。
パンゲア大陸 ヴァルハラ帝国 グラブ・ダブ・ドリッブ 魔導師協会管轄地区
対魔導師犯罪警察組織トランプ本部受付―
マリア「ハロー?」
3人の受付嬢はその声に弾かれるように立ち上がった。
目の前にはスペリアル・マスター、マリア・フラーレン
「マ、マスター・マリア!今日おいでになるご予定でしたか!?」
受付嬢たちは慌てて机上の予定表をめくった。
マリアはあっけらかんと笑った。
マリア「んーん!スペードが"エース出動レベル"の事件を担当になったって聞いてさあ。」
「ええ」
マリア「あいつ、ついこないだまでW・B・アライランス問題やる気マンマンだったから、
からかってやろうと思ってさ」
(ええーーーっ!!)
マリア「ってわけで、
スペードのエースに取り次いで頂戴」
受付嬢の一人が申し訳なさそうにマリアを見た。
「それが…すでにスペードのエースは遠征に出ておりまして…」
マリア「えーっ!そうなの…さすがエース出動レベルねぇ…
じゃあ…せっかくだから、ゼレっちに取り次いでよ」
(ゼレっち!?)
受付嬢たちは急いでジョーカーの予定を確認した。
今の時間は丁度空いているようである。
「只今お取り次ぎいたしますね」
その時、スペードのキング、リー・シェンが受付にやってきた。
シェン「よー!ちょっと受付の外線貸し…」
マリアはおもちゃを見つけた!という顔をした。
シェンは顔を引き締めた。
シェン「マスター・マリア!いらっしゃるならご連絡いただければ…」
マリアは笑った。
マリア「事前に連絡とか、堅っ苦しいでしょー?」
シェンも笑った。
シェン「いえ、そうでなく、
こちらも仕事が詰まっていたら、ご対応が難しくなってしまうではないですか。」
(い、言った!
誰もが言えなかったことを!サラッと!
しかもちゃっかりオブラートに包んで!)
マリアはきょとんとした。
マリア「言われてみればそれもそうね」
シェン「で、本日はどなたに?」
マリア「トージローよ。でももう出払っちゃったって聞いたわ」
シェン「ええ、まあ。
せっかくなのでお茶でも出しましょう。
ちょうどこの間のバカンスの土産があるんですよ。」
マリア「いいわね。お願い!」
(そういえばこの子とタイマンで話するの、初めてね!)
シェンは受付嬢たちに「マリアの応対は任せて」とウインクし、マリアを奥へ案内した。
受付嬢たちは胸を撫で下ろした。
マリアは意地悪っぽい笑みを浮かべた。
マリア「外線って、奥さんとこ?」
シェンは嬉しそうに笑った。
シェン「ええ」
マリア(ちょっとは照れなさいよ!つまらないわね!)
シェン「さ、どうぞマスター」
シェンはスペードの応接室にマリアを通した。
―間―
マリアは出された紅茶をすすった。
マリア「お茶出し、リシュリューじゃなかったわね?」
シェン「ええ、トウジロウの遠征で補佐に出しています。」
マリアは眉をひそめた。
マリア「それは…"問題"がまだ残ってるってこと?」
シェンは紅茶をすすって菓子をガサガサと開け始めた。
シェン「ま、出せるとこからメンバー捻りだしたんですけど、そのメンバーがメンバーで…」
マリアも菓子を開けた。
マリア「あんたが"キングになる前のメンバー"がいるってことね」
シェンは包みを開ける手を止めた。
シェン「そのくらい、彼らがトウジロウから負わされた心の傷は深いってことですよ。」
マリア「だからしょうがないって?」
シェンは笑った。
シェン「まさか!まだまだこれからですよ。
ただ、人の気持ちを変えるのは時間がかかる」
マリア「トウジロウの気持ちと隊員のトウジロウへの気持ちってこと?」
シェン「何分、頑固な連中の集まりでしてね。」
マリアは「ふーん」と相槌を打ち、菓子をほおばった。
シェン(…)
マリア「ところで、W・B・アライランスの件なんだけど」
シェン「進展ナシですよ。
カーシーの町から砂の大河まで来たという情報は"別件"でたまたま仕入れたんですが、
それからカケラも情報が掴めません」
マリア(…)
「別件?
ああ、砂の大河で魔導師専用道具をハンターたちが不正使用してたってやつ?
立件されたんだ?」
シェンは苦笑いした。
シェン「肝心のブツが出てきてないので何とも言えない状況ですよ」
マリア(…砂の大河からの足取りが途絶えた…
もし本当に大砂瀑布の滝壺に沈んだままだとすれば…嘘ではなさそうねぇ)
マリアはシェンをじっと見つめた。
マリア(この子ってよくわからないのよねー…)
シェンは笑った。
シェン「…?なんスか?」
マリア(…)
「…いいえ、何でもないわ。情報ありがとう。」
(進展なし…か)
シェン「そうだ、そのシャンドラ・スウェフィードとエオル・ラーセンってどんな人物なんですか?」
マリア「あら?トランプのキング様が犯人たちがどんな子かって、興味があるの?」
シェンは不敵な笑みを浮かべた。
シェン「そりゃあ捕まえるにはまず敵を知らないとね!」
マリアはクスッと笑い、紅茶にミルクを注いでスプーンでかき回した。
マリア「エオルはね、素直でいい子よ。
絵に描いたようにね。」
シェン「へぇ!今時そんな優等生いるんですねぇ」
マリアはスプーンを置き、意地悪そうな笑みを浮かべた。
マリア「いるわけないから理想っていうのよ。」
シェン「?」
マリア「仮面をはがしてやりたかったけどねー!
キリスのヤツがイタくお気に召しててね。
あんまし構わせてもらえなかったの。」
シェン「仮面って…ホントに被ってるかなんて、わからないじゃないですか」
マリアはすました顔で紅茶をすすった。
マリア「黒いものがひとっつもない人間なんていやしないわ。
むしろ黒いものを認めず隠し通そうとすると、絶対歪みが出てくる、
人間てのはそんなもんよ」
シェン(あー…そうやって割り切ったらこうなるのか…)
マリア「ん?なんか言った?」
シェン「いえ…というか、つまりエオル・ラーセンの"本質"についてはあまり詳しくないと?」
マリアは笑った。
マリア「一つだけ言えるのは、シャンドラの友達ってことよ」
シェン「はあ…」
マリア「あの子は人を見る目があるわ。
あの子の友達なんだから、悪い子じゃあないハズよ!」
シェン(…犯罪者の話のはずなんだけど…)
「シャンドラ・スウェフィードについてはお詳しいようですね」
マリアはにっこりした。
マリア「もちろん!」
マリアは持っていたカップをソーサの上に戻した。
マリア「ワガママだしイタズラばっかりするし、
あの子の言動の10割は嘘か冗談ね」
シェン(…"よい子"ではなさそうだなあ)
マリア「でもね、」
マリア「根っこの根っこは優しい子」
シェンはマリアの悲しそうな笑みを見逃さなかった。
シェン「へぇ、まるで悪いことなんてしなさそうな子に聞こえますね」
マリアは拳を握りしめた。
マリア「そうよ!全く信じらんない!
絶対理由があるはずよ!」
シェン(…)
「…そうですか…」
マリアは口を尖らせた。
マリア「って言っても、あんたたちは有無も言わさず魔導師裁判所にかけるんでしょうねっ!」
シェンは微笑んだ。
シェン「マスター、あなたは魔導師裁判所に悪いイメージを持ちすぎですよ。
悪いことをしてなければ呪いなんて執行しません。」
マリアはつまらなそうに足を組んだ。
マリア「さすがは正義のトランプ様々だわ!」
シェンは「クッ」と抑えるように笑った。
シェン(この人面白れーっ!)
「まあ、彼らがアカデミーの頃は人望の厚い人間だったってことは、わかりました。」
マリア「わかっていただけて、どーも」
マリアは「さて」と勢いよく膝に手を乗せた。
マリア「W・B・アライランスについての状況が聞けたし、そろそろおいとまするわ!」
シェンはにっこり笑った。
シェン「そうですか」
マリアを玄関まで見送り、
受付の外線で長電話し、
自身の執務室に戻ると、
シェンの肩にひらっと手のひらほどの光の玉が降ってきた。
リンリン「シェンってば嘘つきなんだ!」
シェン 「あれ?お前との約束何かすっぽかしたっけ?」
リンリンはシェンの肩に腰掛け、足をバタバタとさせた。
リンリン「ちーがーうっ!
さっきの女の人よっ!
W・B・アライランスの捜査に進展なくって、
あのボーズ頭が全くの別件に入ったとか!」
シェンは笑った。
シェン 「嘘は言ってないよ。
ただ確信のない情報出しても仕方ないと思ってね」
リンリンは膝の上に肘をつき、
ニヤリと笑った。
リンリン「ほら、やっぱり嘘つきだ」
マリアは思い切り伸びをした。
マリア(んー!初めて2人きりで話したけど、なんか肩凝ったわー…)
ふと、もうすでに見えなくなったトランプ本部を振り返った。
マリア(全然腹の内を見せられた気がしない。)
マリアは空を見上げた。
マリア(あの子から情報聞き出そうとしたのは失敗したわ。
次からはトウジロウも口裏合わせてくるかも…)
マリアは再びまっすぐ、帰路を歩み始めた。
マリア(こうなったらヤクトミ!あんたにかかってるわよ!)
ムー大陸 マーフ国 北部の町キーテジ
ヤクトミ「ヘックシ!」
ヤクトミは鼻を擦った。
ヤクトミ(誰か噂でもしてやがんのか?)
「ちょっと!」
ヤクトミは肩越しに聞こえてくる甲高い声にウンザリしながら目を向けた。
そこには、ミルクティー色のベリーショートの髪に
大きな猫目の小柄な少女が両手に腰を当てて立っていた。
物を盗んで人々に制裁を加えられていた猫の獣人の少女―ラプリィを助けたところがヤクトミの運の尽きだった。
ヤクトミ「今度は何だよ」
ラプリィ「ちゃんと手で口を抑えてよ!
病原菌撒き散らさないでよね!」
ヤクトミ「病原菌って…お前なあ…誰かが俺の噂」
ラプリィ「するわけない」
ヤクトミ(こいつ)
ラプリィは「あ!」と手をたたいた。
ラプリィ「もしかしたらフィードさんかエオルさんかなあ!」
ヤクトミ「今自分で俺の噂はねえって言ってたじゃねぇかよ」
ラプリィ「うるさいなっ!」
両手を振り上げてヤクトミに飛びかかろうとしたラプリィは
突然立ち止まったヤクトミの背に、思い切り鼻をぶつけた。
ラプリィ「痛~!何なのよっ!」
ヤクトミ(あれは…確かクラブのエース!)
人ごみの中に、
レンガ色の髪にそばかすだらけのごくごくありふれた顔立ちだが、
直ぐにわかる、
オーラが違う―クラブのエース、リケ・ピスドローだ!
ヤクトミ(なんたってこんなところに…?)
ラプリィ「ちょっと!何なのかって聞いてんの!」
ボスリとヤクトミの尻に蹴りを食らわせたが、
ヤクトミの鍛え上げられた肉体はまるで鋼のように固く、
逆にラプリィがすねを抱えて飛び跳ねた。
ヤクトミ(どうする…追うか!?)
ラプリィはヤクトミからの反応は諦めて、ヤクトミの視線の先に目を向けた。
ラプリィ「へぇ!タイプなの?」
ヤクトミ「そういう目に見えるか」
ラプリィ「あ!ごめん、生まれつき"そういう"目なんだっけ?」
ヤクトミはヤレヤレとため息をついた。
ヤクトミ「あの人、トランプのお偉いさんだ。
…トランプくらいは知ってるよな?」
ラプリィ「悪い魔導師捕まえる人たちでしょ?そのくらい知ってるわよ!」
ヤクトミ「シャンドラたちはやつらに追われている」
ラプリィはフィードたちと別れた直後のことを思い出した。
ラプリィ「そういえば…私を見せ物屋から助けてくれたとき、
これを自分たちがやった事件としてトランプに通報してくれって」
―…は?
ヤクトミは思わずラプリィの腕を掴んだ。
ヤクトミ「ちょ、ちょっと!それどういうことだ!?
わざと?どの事件のことだよ!」
ラプリィは「痛いわね!」とヤクトミの手を振り払い、手首をさすりながら続けた。
ラプリィ「多分"商隊強盗"って名目だったと思うけど、ホントは違うよ。
そこの商隊で"商品"だった私と天使を助けてくれたんだよ。
ホントに捕まるべきなのは被害者ヅラして魔導師協会に賠償金求めてるライエルってやつよ」
ヤクトミ(商隊強盗…カーシーの町の!?
ライエルって確かその事件の被害者の名前…)
「…なんで…わざわざそんな嘘…」
ラプリィ「わからない。」
ヤクトミは顔を上げ、再びラプリィの手を引いた。
ヤクトミ「頼む!あそこにいる女の人にそれ、説明してやってくれ!」
ラプリィ「だめよ!フィードさんたちがそうしてくれって言ったんだもん!
トランプの人にホントのこと話したら、意味ないじゃないっ!」
ヤクトミはラプリィの手をそっと離した。
ヤクトミ(クソッ…あいつ、ホント、何してんだよ!)
リケ 「あれ~?君確かマスター・ガルフィンとこの子だよね?」
後ろから飛んできた聞き覚えのある声。
ヤクトミは心臓が飛び跳ねた。
ヤクトミは恐る恐る振り返った。
クラブのエース、リケ・ピスドローだ。
本来なら普通に学校なのに、こんな所で何していると聞かれたら…まずい、答えを用意しきれない。
リケ 「アハハ!何で知ってるのって顔だね!
君が優秀だって話はいろんなとこから聞いてるから!
君、結構トランプの中じゃあ有名人だよ!」
ヤクトミはきょとんとした。
ヤクトミ「あ…ありがとうございます…」
リケはニヤリとした。
リケ 「学校サボって彼女とデート?」
ヤクトミ「は!?」
まずい、この女のことだから「違うわよ」とかって暴れ出す…
ラプリィはにっこりと笑ってヤクトミの腕に絡みついた。
ヤクトミ(!?)
リケはからかうようにヤクトミを肘で小突いた。
リケ 「スミに置けないわね!優等生!」
ヤクトミはリケの顔を見つめた。
…今、この人にラプリィが言ったことを話せば…シャンドラの罪は軽くなるんだろうか…
息をするのと一緒に、口から出してしまいたい―
ラプリィ「…」
ラプリィはヤクトミの二の腕を爪を立てて思い切りつねりあげた。
ヤクトミ「ぃ痛ってぇ!!!」
ラプリィ「オホホ!ごめんなさぁい!
この人照れ屋で、からかわれるの苦手なんですぅ!」
リケはクスリと笑った。
リケ 「それは失礼!
それじゃ、私行くとこあるから!
サボリもほどほどにね!」
リケがヒラヒラと手を振り、人ごみに消えていくのを、
ラプリィは見えなくなるまで見つめていた。
ラプリィ(…気持ちのいい人だな…)
ラプリィはフイとヤクトミの方に振り向き、思い切り背中をひっぱたいた。
ラプリィ「あんたと違ってね!」
ヤクトミ(突然何ーー!?)
「何がだよ!」
ラプリィ「あれっ!?
さっきの人、トランプなんだよね?!」
ヤクトミ(しかも無視!!)
「…そうだけど」
ラプリィは目を輝かせた。
ラプリィ「ね!
フィードさんたちの情報、何か持ってるかも!!」
ヤクトミ「俺もそう思って、追うかどうか考えてたんだよ」
ラプリィ「ハァ!?
何で考える必要があんのよ!聞けば良いじゃんか!」
リケの後を追おうとするラプリィをヤクトミが慌てて止めた。
ヤクトミ「それはだめだ。」
ラプリィ「何でよ!」
ヤクトミ「…俺の事情。シャンドラたちの行方を探してることを知られたらまずい」
ラプリィ「はあっ!?」
ヤクトミ「第一トランプには捜査中の情報の守秘義務ってヤツがあるから、
どの道あの人は口開かないよ」
ラプリィ(~~~っ!!)
目の前に手がかりがあるっていうのに!!
このまま何もできないの!?
ラプリィは何か方法はないかと唇を噛んでうつむいた。
ヤクトミ「…見つからねーようにあの人を追う。」
ラプリィは顔をあげた。
ヤクトミ「ただし、相手はプロだ。
お前、ちゃんと俺の言うこと聞いて、静かにしとけよ」
ラプリィは生唾を飲み込んだ。
ラプリィ「…わかった」
恩人に会いたい。
ただそれだけ。
会ってどうするだとか、そんなこと、考えちゃいないけど、
今は心の奥底から湧き上がる気持ちに従うまま、
そのためだったら、
なんだってやってやるんだから!
今年最後の話がこんな暗くてすいません。。
ただ、この白い闇での出来事が、よしのの心に何をもたらすか。
また、ヤクトミにも動きが出てきました。
次回はバトルやら名探偵リケやらいろいろ話が動き出します。
なお、本家サイトに冬休み限定部屋として変な絵がおいてあるページとかがあるので、もし興味がありましたらば。
もしよろしければ励みになります。
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