ALICE
目が覚めた。
ここは何処だろう、周りには澄みきった空気が満ちている。
森の中であることは間違いない。
青々とした緑に囲まれて私は横たわっていた。
土の上に寝そべっているのに不思議と汚れなどが気にならなかった。
(御伽の国みたい・・・)
「よかった気がついたみたいだね」
私に話しかけてきたのは金髪とブルーの瞳を持つ少年だったが、
何故かウサギの耳を生やしている。
「エルトー、エルト、こっちだよーーー」
ウサ耳少年は誰かを呼んでいる。
その間にゆっくりと身を起こす。
「急に走り出すから見失いかけたじゃないか」
ウサ耳少年にエルトと呼ばれる青年が走りよってきた。
シルクハットを被った金髪にアメジストの瞳を持つ綺麗な青年だった。
二人の元にたどり着いたエルトは少女の方をみるなり目を見開いて呟いた。
「ア・・・リス?」
「え?」
二人は始めて少女の声を聞いた。
「あたしアリスって名前じゃないです。
白崎亜里亜っていいます。」
「え!?あ・・ああ」
エルトはコホンと咳払いをして仕切りなおした。
「これは失敬、可愛らしいお嬢さん。
レディの名前を間違えるなんて、このボクとした事が
そういってわざとらしく目にかかりそうな前髪をはらった。
「君がここへ誘われた(いざなわれた)奇跡はなんたる歓喜。
アリア、素敵な名前だ。」
大げさなな身振りや華麗なセリフがつむがれていく中
朦朧とした意識がハッとする。
こ、これはもしや・・・!
ホストやナルシストにヴィジュアル系
もしかしなくともこの人って私のもっとも苦手とするタイプじゃないかしら!!
(ほら、現に鳥肌が!!)
「ようこそ、我らの世界へ!!」
ブワッと花びらが飛び散った・・・・・・ように見えた。
いけない。意識が途切れかけた・・・。
「あ・・・あの、これってもしかして夢??」
そうだ、きっとそうに違いない
「ああ、君からすると夢に値する世界ともいうね」
「そっか、夢!!」
妙に納得してしまった。
「だからこんなウザイ人が目の前にいるんだわ!」
ウザイ!!!!???
ガクリと膝をおり地面に手をつく。
「ご、ごめんなさい。いくら夢だからって言い過ぎたかもしれないわ」
(めんどくさいな)
ウサ耳少年も私と同じ事をおもっていたのだろう。「面倒臭い」と
急に話を摩り替えた。
「そんなことよりさ
どうして亜里亜はここに来ちゃったんだろうね」
「ぇ?」
「そういえばそうだね」
エルトはまだ立ち直っていないらしい、恨みがましい表情のままこちらを向いた
「この世界はね、現実の世界で目がさめなくなった人間
例えば植物人間が来る所なんだ」
!!!!!!????????
ガバッ
「ハーハーハーハーハーハーハーハー」
「い・・・嫌な夢みたぁ」
全身汗でじとりとしている。
棚に置いた時計を見る。
「まだ3時・・・」
(どうしよう変な時間に起きちゃったなぁ
それもこれもあの変な夢のせいよ!
中途半端な時間に起きると寝れないのよね)
ーー5分後
「グーーー。」
自身が思っているほど亜里亜はか細い神経の持ち主ではなかったらしい。
すぐに眠りについていた。
ガバッ
「あ・・・れ?」
もしかしなくとも私の部屋じゃない
とってもメルヘンなお部屋に天蓋ベッドなんて
ーーーーーーーってことは・・・まさか・・・・!!!!
螺旋階段を駆け下りる
ドタドタと騒音がエルトとリクがお茶を楽しんでいる1階にまで響き渡ってくる。
「ん?」
「?」
そして亜里亜によって勢いよく扉が開かれた。
「アリアおはよーー☆」
「ぜーはーぜーはー」
エルトは足を組みながら読んでいた本をパタンと閉じて言った
「正確には”おかえり”かな?」
「どういうこと?」
「さっきまで君は眠っていたんだ」
「急に倒れたからビックリしちゃったよ」
「君はどうやら向こうの世界で生活している時にこちらへ来てしまい、
向こうの世界で目覚めるとこちらでは眠ってしまうらしい
しかも自分の意思でここに来たのではないとすると・・・
極めて珍しいケースだ。
まぁ原因はおいおい考えるとしてしばらくその体質のままなんだから
よろしくアリア。また会えて嬉しいよ」
「よろしくね。俺の事はリクって呼んでね。」
ウサミミ少年が笑顔で言ってくる。
折角の自己紹介を拒否する理由もなく
自分ではどうすることも出来そうにないしで、一先ずこの状況を受け入れることにした。
まぁいい悪いヒトじゃなさそうだし・・・多分。
「・・・・よろしく」
朝
今度の目覚めは見慣れた自分の部屋のベッドの上だった
着替える時も朝ごはんを食べてる時も夢の事を考えてしまう。
今日もまたあの夢の世界に行くんだろうか
私は一体いつまであの世界に行き続けるんだろう
アリアは夢のことを考えながら学校へ向かって歩いていた。
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また奇妙な光景が広がっていた。
館の目の前におかれた白いテーブル。紅茶、スコーン。
緑に囲まれてのお茶会風景という事は一目で分かったのだが
「おはようアリア」
「なんで・・・縛ってあるのよ」
テーブルを囲むエルトとリク。
そして自分は椅子に縄でくくりつけられている。
「お茶は皆で飲むのが一番だよ」
リクが満面の笑みで言ってくる。
「だからって何も椅子に縛り付けなくても」
「寝たままだと椅子から転げ落ちちゃうから」
寝てる自分を無理やりお茶に参加させてくれたらしい。
「ソレハドーモアリガトウ」
親切だが常識がないのかワザとやっているのか、
まだ彼らと接した時間は僅かなもので見極めるには至らなかった。
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縄を解いてもらうと目の前に置かれたお茶を一口すすり
そのまま2人と共にアフタヌーンティーに参加した。
口いっぱいにミルクティーの風味が広がる
「フゥ」
「そういえばアリアは今何してんのー??」
リクが首を傾げながら亜里亜に問う。
「何ってお茶飲んでるんだけど、見れば分かるでしょ」
「そうじゃなくって、向こうの世界の事だよ。
お昼寝中?」
「ハッハッハー、リク。こっちにいるんだから睡眠中に決まってるだろ」
人差し指を立てて自信満々に答えるエルトに対し、
亜里亜の顔が蒼ざめた
二人の会話に気づいてしまった。
「アリア??」
心配そうに見つめる二人。
シマッタ、そうよあたし学校で授業受けてたはずなのに
居眠りしちゃってるんだわあああああああああああああ
「早く起きなきゃ!!」
ハッ
その時亜里亜の視界に丁度いいものが写りこんだ。
ここは外。眼前には木。
「起きなきゃ起きなきゃ起きなきゃ」
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン
起きなきゃいけない。そう思う一心で木に頭突きを食らわせまくる。
「アリアーーー!!!」
「わーーんアリアやめてーーーー!」
悲痛な二人の叫びむなしく
その頃現実では着実に先生がアリアの元に歩み寄っていた。
居眠り中の生徒、白崎亜里亜の目の前までくると出席簿で頭をはたいた。
バシィッッ!!
すると夢の中での亜里亜は頭をはたかれた衝動が襲っていた
「ハウッ!」
体を軸に頭だけが半円を描く。
「アリアーーーーー!!!!!」
二人に絶叫され
瞬時にエルトに身体を抱きとめられる。
現実で目覚めた亜里亜はこちらでは白目をむいて気絶していた。
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「亜里亜、亜里亜ぁ」
「ぇっ?」
「またボーっとしてる。」
友人は心配そうな顔をして見せたので少し焦ってしまった。
「あ、ごめん。ちょっと
最近変な夢見ることが多くてさぁ、さっきも・・・・」
「亜里亜・・・・」
友人はアリアを見つめたまま心配そうな顔をしていた。
(亜里亜ったら、授業中居眠りしてたあげく夢までみてたのね・・・)
何か変な感じ。
今日夢の中の事をずっと考えてる。あそこまでリアルでハッきりしてたらどっちが
現実なのか分からないよ・・・。
家の扉をあけて「ただいま」と呟いた。
「おかえり亜里亜
明日はあなたのお誕生日だからパパ明日は
仕事を早く切り上げてくれるって」
そういいながら母に抱きしめられた。
「もう16歳になるのね、産まれてきてくれてありがとう」
「お母さん・・・」
亜里亜は照れくさそうな笑みを浮かべた。
風呂からあがりパジャマに着替えベッドに目を向ける。
きっと眠ったらまたあの世界に再び行くんだろう。
もしこの現実と夢を天秤にかけるとしたら私は選べるのだろうか?
(私にとってどちらが本当の現実なんだろう)
そう考えながらゆっくり目を閉じる。
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「エルト・・・?リク??」
(出かけてるのかな?)
館を歩き回るのは初めてだったので
エルトとリクを探すついでに好奇心が湧き家の中を探索していた。
歩いていると、とある部屋の扉の前で立ち止まった。
(ここは何の部屋かしら?)
何故か無性にその部屋が気になる。
扉を開けてみると可愛らしい部屋が広がっていた。
棚にはメリーゴーランドのオルゴールなど
可愛いインテリアが無数置かれていたり
ソファーにはハットを被ったウサギのぬいぐるみが座っている。
女の子が好みそうなものばかりが沢山飾られている。
部屋に入り、インテリアを眺めて周っていると
ベッドで誰かが寝ている事にようやく気づいた。
「!!」
思わず声を出しそうになってしまったが
恐る恐る近付いてみる。
エルトでもリクでもない。
金髪で華奢な女の子が眠っている。
この世界で初めて見るエルトとリク以外の人間。
気になってしゃがんで覗き込んでみた。
乱れることのない寝息
死んだように眠っている。
起きる気配はない。
しばらくすると後ろからいきなり声がした。
「それはアリスだよ」
「きゃっ」
振り向くとエルトが立っていた。
亜里亜が悲鳴を上げてしまったが、それでも少女は目覚めることはない。
しかし勝手に部屋に入ってしまった事に対し今更罪悪感が募ってきた。
「ごめんなさい・・・」
エルトもこちらに歩み寄ってきて
アリスの眠るベッドに腰掛けた。
「目覚めないよ、アリスは。空っぽだから」
「空っぽ?」
アリスを見つめるエルトは物憂げに見えた。
「聞いてもいいかな?この子の事」
「つまらないよ」
「いいわ」
「アリスは産まれた時から体が弱くてね
ある日の夜を境に高熱が続いて意識が戻らなくなった時に
意識がこの世界に迷い込んでしまったんだ。」
アリスも元々ココの住人ではなく迷いこんだ人間だったのだ。
「アリスはとても暖かい女性だった。
ボクはアリスと過ごすうちにどんどん彼女に惹かれていった。
後にアリスに2つの選択肢が与えられた。
このままこの世界に留まるか、それとも現実で目を覚ますのか。」
寝る前に自身が考えていたことと一緒だった。
夢と現実。
「そしてアリスはこの世界に留まることを・・・
ここでボクと一緒になることを望んでくれたんだ
だけど、アリスの父親はそれを認めようとしなかった。
正確には愛した娘の死を認められたかった父親は
眠ったままの娘の体が少しずつ冷たくなり始めていった頃
なんとかして命を繋ぎ止めようとアリスを冷凍睡眠の装置に保管し
あらゆる方法で彼女の意識を現実に戻そうとした。
その中には魔術や錬金術など禁断の方法も多かった。
やがてアリスはこっちの世界でも眠る時間が増えていき、
とうとう現実でもこの世界でさえ生も死もない状態になってしまった。
もうアリスは目覚めない」
話ながら同時に軽くアリスの顔に手をあてた。
その横顔はとても切なく見えた。
魔術や錬金術といわれても日本人の亜里亜にはスグにピンとくるものではないが
それがとても恐ろしく感じた。
そしてエルトの話はとても悲しかった。
エルトを愛した娘と、娘を愛した父親。
どちらの気持ちも痛いほど分かった。
涙が頬を伝う。
「アリア・・・僕の変わりに泣いてくれるんだね・・・ありがとう」
エルトが言い終わると今度は空っぽのはずのアリスの閉じられた目から涙が零れた。
「アリス?」
エルトはとっさに呼びかける。
(何この感覚。)
亜里亜と眠ったままのアリスが同時に涙を流している。
そして眠ったままのアリスがふわりと浮かび上がり
アリアの中に入っていった。
「!?」
残されたのは涙を流すアリアのみだったが、さっきまでと纏う空気が何処か違う。
「エルト・・・エルト、私よ・・・アリスよ」
「アリア・・・君はアリスの生まれ変わり!?
・・・・そうか、アリスがアリアをここへ導いたんだね」
「エルト・・・もう一度あなたに会いたかった」
「魂がようやく開放されていたんだね・・・
長い呪縛からとけて転生していたのか
また人の輪廻に戻れたんだ・・・・今度は・・・」
エルトは言って言葉をつまらせたが
「今度は人としての人生を送れるね」
「エルト・・・
ごめんなさい、ずっとあなたに後悔させていたのね
でも・・・いいの?」
「そのかわり
今度こっちに来たらもう2度と返さないよ」
「ふふ・・また戻ってこれるかしら・・・」
「分からない
でももう君の魂を見失わないよ
だから、その身体は亜里亜に返しておあげ
僕の気が変わらないうちに」
エルトは意識がほとんどアリスのものだと気づいていた。
そして僅かに残るアリアの意識が家族や友人に向いていることに
アリスは気づく。
「・・・そうね」
「今度ここに来たらずっと一緒に暮らそう」
アリスは返事の変わりに笑顔で答える。
その笑顔にエルトは一瞬悲しそうな顔を見せたが
最後に笑って見せながら告げた。
「・・・約束だよ、僕のアリス」
たちまちアリアの体は光につつまれ少しずつ消えていく。
取り合っていた手が消えるとアリアの姿は一欠けらもなくなっていた。
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「エルト~エルト~何処~~??」
リクが声を出しながらエルトを探して開けっ放しの扉を覗いてみると
「エルト?」
そこにはエルトの後姿があった。
「泣いてるの・・・?エルト・・・・」
ー次の日
「ほんっっっとう、ウザいなぁ
格好つけたくせにさぁ」
「だぁっでさぁ、ぐずっアリスも、アリアももう居ないんだよぉ!?うわぁぁぁぁ!!!!」
そこにあるのはいつものお茶会の風景。
結局あの後からエルトはメソメソと泣き続けていた。
「うざい、ださい、みっともない
眠ったままのアリスに毎晩話かけてた姿を見せたかったよ、きっと愛想つかされるんじゃない?」
ドサッ
「あいったたた・・・・・」
「アリア!!」
「あ、あれ?なんでぇ!!?」
二人の声にエルトは伏せていた顔を上げた。
「アリア!!??」
顔を向けられアリアはギョっとした。
「うわっ、何その顔」
エルトの顔は涙などでぐちゃぐちゃになっていた。
「え・・えっと、昼寝してたはず・・・なんだけど・・・・」
アリスの記憶が残っているのでなんだか気恥ずかしい。
「あはは。眠るとこっちに来ちゃう体質は直らなかったんだね」
リクに笑われ頬が赤くなる。
「おかえりアリア☆」
「おかえり僕の・・・・・アリア」
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