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初めてだらけの日常

ジリリリリリ


 耳障りな目覚まし時計の音を止めて背伸びをする。昨日の出来事が、まるで夢のように感じていた。身支度(みじたく)をして駅へ向かう。当たり前の日常だが、青木にとっては日常では無いことが1つだけある。由井結依との登校である。緊張しながら駅の改札に行くと、柱に寄り掛かってスマホを見ている由井が目に入った。


「お、おはよ」


 どこか違和感のある挨拶に思わず由井からクスクスと()みがこぼれる。


「なにそれ?」


「へ、変だった?」


「変て言うかさぁ……ロボットみたいだったよ」


 無邪気に笑う由井を見て、青木の顔は更に赤くなっていく。


「あー!早くしないと電車来ちゃうよ!」


 由井は慌てて青木の手を引っ張りホームへと駆け出す。慌てる青木を見て由井も手を振れていることに気付き顔を赤らめた。


 他県に向かう電車は空いていた。お互いに少し座席の間を空けて座る。青木はいつもの様に匿名掲示板を開こうとした、その時だった。


「あ、あのさ、青木君……」


 何やら緊張した面持(おももち)ちで由井が青木を呼んだ。


「な、なに?」


由井の緊張が青木にも移ったかのように緊張した顔になる。


「そ、その、LINEとか交換しない?」


顔を赤らめた由井を見て、青木も顔を赤らめる。


「な、なんで?」


「なんでって……ほら、風邪引いたり遅刻した時とかに連絡出来ないと迷惑かけちゃうし……その……」


「あぁ、それなら交換しよう……」


「うん!どうやって交換するの?」


「え?由井さん知らないの?」


「私、友達いなかったし……」


「お、俺も友達いなかったし……」


二人で慌ててLINEの友達登録の方法を調べ始める。いつの間にか二人の座席の空間が消え、お互いの距離が縮まっていた。

無事に登録を終えると青木のスマホが鳴動した。


「初めてのLINE!届いた?」


「届いた。僕もこれが初めてのLINE」


 顔を赤くして喜ぶ二人は周囲から見れば初々しいカップルに見えたであろう。高校が近くなり、同じ学校の制服が見え始めるとお互いにまた距離を空ける。青木のスマホがまた鳴動する。


「あのさ、青木君は私と一緒に通学して迷惑じゃない?」


「迷惑じゃないよ」


「本当に?」


「本当に」


「本当の本当に?」


「本当の本当の本当に」


「青木君はいつもスマホでなにしてるの?」


青木は一瞬だけ躊躇(ためら)ったがすぐに匿名掲示板のURLを送った。


「何これ?」


「匿名掲示板のサイト。暇潰しの僕の居場所かな」


「なぁにそれ?私も後で見てみるよ笑」


「うん。とりあえず混んできたからLINE止めないと」


「はーい笑」



 青木はスマホをズボンのポケットにしまうと由井の方をチラっと見た。由井の嬉しそうな顔を見て、中学の頃の由井を思い出す。あの時、クラスの皆でもっと会話していたら由井さんと一緒に授業受けられたのかな。けど、そうしたら由井さんと同じ高校にはなれなかったかも。青木の頭の中は由井結依で一杯になっていた。


 教室に着くと由井に一人のクラスメイトが近寄ってきた。


「由井さん、おはよう」


「おはよう、えーっと……」


「私は鈴木早苗(すずきさなえ)だよ!早苗って呼んでよ!」


「早苗ちゃんね!それなら私の事も結依って呼んで!」


 前の席の青木は、そんなやりとりを小耳に挟みながらスマホで匿名掲示板を見る。


「青木~、スマホでなに見てるんだよ?」


 驚いた青木は顔を上げると、クラスメイトの高柳(たかやなぎ)がいた。


「べ、別に」


「全く……青木は損な性格だよな。そんな態度取らないで、同じクラスメイトなんだからLINE交換しようぜ」


高柳は馴れた手付きでLINEの登録を終える。


「すごいな……」


思わず青木の声が漏れる。


「なにがだ?」


「いや、LINEの登録のやり方が手馴れてるっていうか……」


それを聞いた高柳は思わず吹き出す。


「悪い悪い、笑うつもりはなかったんだけど、やっぱり青木は面白いやつだな」


 キーンコーンカーンコーン、学校のチャイムが鳴る。


「やべ、青木またな!」


高柳は急いで自分の席に戻った。そんなやりとりを後ろから見て微笑む由井。


 お昼ご飯の時間になると鈴木は由井、高柳は青木の席に来た。


「なぁ青木、由井さんと付き合ってるの?」


パンを食べていた青木はむせる。


「な、なんだよ急に」


「いや、登校時間も一緒だったみたいだし……」


「そりゃ県を1つまたいで来てるんだから早く出ないと行けないし、たまたま一緒だっただけで……」


「そっか……」


そっけない返事の中、高柳は由井を見つめていた。


時は同じく

「ねぇ、結依ちゃん!青木君と付き合ってるの?」

卵焼きを食べていた由井はむせる。


「な、なに急に」


「ほら、登校時間も一緒だったでしょ?」


「遠くから来てるから、たまたま一緒だっただけだよ」


「ふーん」

そう言うと鈴木はまた笑顔になった。


 授業も終わり部活動見学の時間がやってきた。この学校では新入生は3日間、部活動見学を行い、部活動に入部しなくても、最低3日間で3つの見学印を貰わなくていけない。


「青木!一緒に部活動見学行こーぜ!」


高柳が意気揚々(いきようよう)と青木の肩に手を組む。


「わ、分かったから手を離せよ」


ニヤニヤしながら高柳は手をほどく。


「青木はどこか行きたいところある?」


「別に……高柳は?」


「俺は軽音部に行ってみたいんだよ!青春を謳歌おうかしたいじゃんか?軽音部行こうぜ!」


半ば強引に青木の手を引っ張り軽音部に向かっていった。


「結依ちゃんはどこか部活決まってる?」


鈴木は少し(あらた)まって由井に聞く。


「ううん、全然。早苗ちゃんは?」


「私は……とりあえず吹奏楽か軽音かな。もともとギターに興味があったけど中学には軽音部がなかったから吹奏楽部に入ってたし……」


「そっか、それなら軽音部見に行く?」


「いいの?」

嬉しそうな顔で喜ぶ鈴木を見て(うなず)く由井。


「結依ちゃん、早くいこう!」


鈴木は由井の手を引っ張り軽音部に向かった。


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