9月5日。夏休みも終わり、新学期が始まって間もない日のこと。
日本には台風が近づいていて、午後6時ごろになって突然大雨が降り出した。
中学2年生の青子は、1人昇降口で立ち尽くしていた。
青子は傘を持ってくるのを忘れてしまったのだった。さらに、部活の片づけでみんなより帰るのが一歩遅くなったしまったせいで、傘を誰かに借りることも、一緒に帰ることもできなかった。
少しはなれたところで、知らない3年生の先輩達がきゃあきゃあ言いながら相々傘して帰っていったのが青子の目に映った。
(ぬれて帰るしかないな…)
そう思って、大雨の中に出ようと一歩踏み出そうとしたときだった。
「傘忘れたのかよ?」
青子が振り向くと、そこには見慣れた幼馴染の姿が…
その幼馴染は、中学2年生になってから急に背が伸びてきたみたいだった。小学生のときは、青子と背は同じくらいだったのに。
それに、肩幅もこんなに広くなかった。
青子がその幼馴染…………黒羽快斗から、夏休みの間だけ目をはなした隙に、ずいぶんたくましくなったものだ。
「快斗!快斗じゃん!!久しぶりだね、1ヶ月ぶりくらいじゃない?あたし、夏休みは部活で忙しかったから全然快斗に会えなくて。」
青子はかなり嬉しかった。約1ヶ月ぶりに幼馴染の姿を見ることが出来たのだから。
今年は2人ともクラスが違ううえに、お互いに今年の夏休みはいろいろと忙しくて、最後に2人が会ったのは夏休みに入ってすぐのときの、地元のお祭りのときだった。
「そういや全然会ってねーな…どうりで、夏休み中一回もアホ子って叫ばなかったわけだ。」
「…っ!快斗、ヒドいっ!このバ快斗〜!!!」
少しむっと来た青子は、冗談半分でこんなことを言った。
「快斗みたいなバカな男の子じゃなくて、もっと優しい男の子だったら、普通こんな雨の日には傘かなんかを………」
そこまで言ったときに、突然快斗が青子に傘を差し出した。
「ほらよ。傘ないんだろ?」
「…えっ?」
少しだけ、本当に少しだけ、快斗が照れているように青子には見えた。
「俺、もう一本傘あるから。だから、それ使えよ。」
「え、えっ…?」
「じゃあな、俺忘れ物あるから教室戻るわ!」
青子は、また1人昇降口に立ち尽くしていた。
そして次の日、青子は快斗の家に傘を返しに行ったが、快斗は熱を出していると快斗のお母さんに言われた。 |