第4話 夢で見るもの
「ご馳走様でした」
「ふぇ?ハルちゃん、今のってなぁに~?」
食事後の恒例の挨拶をした俺に、フォルが首を傾げる。
「俺んところの国の、食後の挨拶だよ。さっきのいただきますと同じようなものだ」
「ほぇ~、そうなんだぁ」
3人で昼食をとっている間に、俺はイセリナ達から話を聞き出していた。
……本当は、帰ってくるなり聞こうと思っていたのだが、腹の虫が見事に邪魔をしてくれた。まぁ、朝食を抜いていたんだから、仕方ないことか。
そうして聞いた話によると……、
「つまりここは、トゥルナー大陸の小国ミストレスの小都市ヴィレアって言うところなんだな?」
「うんうん」
つまりここは異世界。まぁ、魔法だの錬金術だの、ファンタジックな単語が出た時点で、そうじゃないかと思っては居たんだが。
「……で、これだけを聞くのに、何で食事する時間分も消費されてんだ?」
「ご飯を食べながらお話しするのは、お行儀が悪いんだよ?」
口の中に物を入れながらくっちゃべってたお子様が、何を言ってやがる。
「っつーことは、だ。元の世界に帰る方法は……」
「あらあら~?ひょっとしてハルちゃん、異世界から呼び出されてきちゃったのかしら~?」
今更だな、オイ。
「ああ、それで」
「あらあら~。じゃあ、さっきのお姉さんの食事、口にあわなかったりしたのかしら~」
「違うっての!」
何故いきなりそうなる。
「あらあら~?それじゃあハルちゃん、今度はハルちゃんが食事を作ってくれるのね~」
「だから!何故そうなるんだっ!!」
「え~?そうなの~?それは楽しみだよ~♪」
「おまえら!人の話を聞けよっっ!!」
結局俺の聞きたいことはほとんど聞けず、俺は夕食を作らされることになってしまった。
「あらら~」
「ハルちゃん~、これ、黒焦げだよ~?」
「だから、俺は料理が出来んっつっただろうが」
その日の夕食が無しになってしまったのは、いわゆるオチという奴……なのか?
夢の中に潜る。
それは俺が、元の世界で毎晩行っていたこと。
それが出来るようになった当初は、誰もがやっていることだと思っていた。だが、家族も友人も、誰一人としてそんな事出来ない言われた。
俺は、夢の中で見聞きしたことを全て覚え、望めば一度見た夢の世界にだって、再度潜ることが出来た。
だから、俺にとって夢を見ている間は、一番の幸せな時間だった。……もっとも、時々悪夢を見てしまったりすることもあるのだが。
正直……異世界に来た事で、その能力も失われてしまったんじゃないかと思っていた。
何せ世界どころか、性別も姿かたちまでもが変わってしまっている。
あれから、イセリアに頼んで鏡を見せてもらった。顔の形こそ変わってないものの、髪の毛は白く、眼の色は紅く変わってしまっていた。同じく見るまで気づかなかったが、髪の毛自体もウェーブが掛かって、腰の辺りまで伸びている。
力も体格相応の弱々しいものになってしまったし、若干声も以前より高くなってる気がする。身長は、130前後まで縮んでしまった。まるで、小学生にでもなった気分だ。
そんなだから、正直俺はもう、夢に潜れないのではないか……と思っていた。
視界に、公園のようなものが広がる。
現代式の、ブランコや滑り台といったものが置かれている公園。
そこには……一人の少女が立っていた。
「あら、いらっしゃい。初めまして、かしら?」
「……ああ、初めまして」
こちらを見て、クスリと笑う少女。その姿に、思わず軽く見惚れてしまう。
「貴方、知りたいことがあるんでしょう?」
「?……あ、ああ」
不意にそんなことを言われて、戸惑う。確かに少女の言うとおり、俺はこっちに来たばかりで、知りたいことはたくさんある。
だが……それを目の前の少女が知っているようには見えなかった。少なくとも、元の世界……現代の公園に住む少女が、知っているはずが無い。
「ふふ……そうね、私には教えることは出来ないけれど、貴方におまじないをかけることは出来るわ」
「おまじない?」
「そう、会話は出来ても、まだ読み書きが出来ない貴方に。読み書きが出来るようになるおまじない」
「どうしてそれを……?」
確かに俺は、こっちに来た時から本を読むことが出来なかった。今考えれば、会話が出来てたことも不思議なことだったのだが。
「私は貴方。貴方は私」
「私の知ってる読み方と書き方を、貴方に教えてあげる」
そういって、少女は俺に近づいてくる。
不思議なことに、俺はその少女に抵抗する気はまったく起きなかった。ゆっくりと、少女の顔が近づいて来て……。
唇と唇が、触れ合った。
チュンチュン、と小鳥の鳴き声が聞こえる。
異世界でも、朝起きるときは似たようなものなんだな……とか、わけの分からないことを考えながら、体を起こす。
隣を見れば、穏やかに眠るフォルの姿。……これがいわゆる朝チュンか?いや、違うだろう。俺の服装とか乱れてないし。
改めてフォルの姿を見ると、可愛い女の子だと思う。元の世界だと大体小学6年生ぐらいだろうか?赤い髪のショートカットと茶色い瞳は、より本人の快活さを増している気がする。
「って、何考えてんだ?俺は」
そんなことよりも、夢の内容だ。直接その……き、きき、ききキスをしたところで起きるとか、白雪姫じゃああるまいし……。
……いかん、思い出して恥ずかしくなってきた。そういえば、これって俺のファーストキスなんじゃ?いや、夢の中だからノーカンだな。うん。ノーカンノーカン。
いやでも、夢の中の女の子って可愛かったし、いや、容姿はきっちりとは覚えてないんだけど……あれ?何で覚えてないんだ?いつもなら覚えてるはずなんだが……。
そこまで考えたところで頭を振る。多分、今思い出せないものは、いくら考えたところで思い出せないだろう。
「うう~ん……ふにゃあ?」
声がしたので隣を見ると、フォルが起き上がって軽く伸びをしていた。こういうしぐさが可愛いのって、女の子の特権だと思う。
「おはよう、フォルちゃん」
俺の声に反応して、こっちに振り返るフォル。満面の笑みが、俺に向けられる。
「えっへへ~、夢じゃなかったんだね。おはよう、ハルちゃん♪」
今まで、夢であって欲しいと思っていた異世界への旅。だが、フォルの笑顔を見ていると、こういうのも悪くないかもしれないな……と、少しだけ思えた。
というわけで超展開でした。まぁ、ファンタジーの世界なので、大目に見ていただけるとありがたいです。
しかしそれでも、中々話が進みません。
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