第24話 初めての魔法実習
ゆっくりと杖に力を込める。本来は意識するだけで良いらしいのだが、魔法を使うのが初めての俺は意識をするだけというのが難しく、つい力が込もってしまう。
チリッと、自分が何かと繋がったような感覚を受ける。そういう感覚があると言うことは事前に聞いていたので、慌てずにそのまま続ける。
しばらくすると、俺の目の前に長方形のウィンドウが2つ出現した。片方に【magic arrow《魔法の矢》】、もう片方に【anti kill《非殺傷》】と言う文字をイメージする。
ウィンドウにイメージとは違う文字が映し出される。その文字に若干動揺したが、そのまま次の発動に……。
…………。
「なぁ、発動ってどうやるんだ?」
「!?……申し訳ありません!!ミハル様に、魔法の発動方法を教えるのを忘れておりました!!」
近くで見ていたメイフィールドさんとゼノガルド君が、呆れたような視線で先生を見つめた。
今の時間は魔法の実習時間。俺は、初めての魔法の実習の時間を迎えていた。
いまだに先生の俺に対する態度が戻らないんだが、そこはもう突っ込んじゃダメなのかなぁ……。何か知らんけど、土下座しっぱなしだし。まぁ、あまりに続くようならご褒美を与えて無理やり戻させるか。
ひとまず土下座しっぱなしの先生を放置して、メイフィールドさん達に発動の仕方をたずねる。
「えっと、魔法はどこまで入力できましたの?」
「【魔法の矢】の魔法と【非殺傷】の属性は記述できたな。表示されてるのも確認した」
「ふむ、じゃあ後は承認するだけじゃないか。それなら直ぐに出来るだろう」
「承認?」
「ああ、ウィンドウに何かの絵みたいなものが表示されていることは確認したのだろう?それに対して承認をしなければ、魔法は発動されないのさ」
ふむ……つまりは、俺は魔法発動直前の確認の状態で止まっていたのか。……ん?今何か引っかかった気がするが、まぁとりあえずそれは後回し。
「その承認はどうすれば出来るんだ?」
「承認の意思を明確にしながら、再度発動体を意識すれば承認できますわ」
なるほど……意思を明確にしながら発動体を意識するって難しそうだが、まぁ、やってみればコツがつかめるかな?
「分かった、じゃあまた魔法を使ってみるから、二人は下がってて」
俺の言葉に頷き、二人が後ろに下がる。
先ほどと同じように【魔法の矢】の魔法と【非殺傷】の属性をウィンドウに記述する。文字がきちんと表示されたのを確認し、承認の意思を出しながら杖に力を込める。
フォン
形容しがたい音とともに、目の前に小さな球体が生まれる。ふわふわと浮かぶそれを見て、俺は初めての魔法が成功したのだと確信した。
「おお……」
「まさか、こんなにも早く成功するなんて……」
後ろの二人が感嘆の声を上げる。
……で、これ、どうすりゃ良いんだ?
「それを、あのダメ教師に撃ち出すイメージを浮かべるのですわ」
自分で作った球体の扱いに困っていたところに、メイフィールドさんからの指示が来る。
ああ、そっか。最初から、練習として【魔法の矢】を先生に撃ち込むって言う話だったな……と思い、先生に向かって撃ち出すイメージを思い浮かべる。
その瞬間、ふわふわと浮かんでいた球体が光の軌道を描いて急加速し……土下座したままの先生に向かって飛んでいった。
「……あ」
スパァンと音を立てて【魔法の矢】が先生に直撃する。一応【非殺傷】の属性は付いていると思うけど、大丈夫……なのか?
「ありがとうございますっ!!」
……どうやら大丈夫らしい、ちょっとでも心配した俺が馬鹿だった。
「まさか、ここまで早く成功するとは思いませんでしたわ」
「ああ、しかも初めてなのにちゃんと非殺傷属性も付いていたし、やっぱり君は天才だね」
「ん?非殺傷属性が付いてたって、その辺りって分かるのか?」
「通常なら【魔法の矢】が直撃したら跳ね飛ばされるか、後ろに押し出されるぐらいの衝撃はありますわよ」
【魔法の矢】は初級の攻撃魔法なのだが、それでもそれなりの威力はあるようだ。……狼相手とかだと、これだけでは若干厳しそうだけど。
というか、跳ね飛ばす威力があるんなら、さっきのは実は非殺傷の属性付けに失敗してたらやばかったんじゃね?まぁ、先生なら直ぐに復活しそうだけど。
「それじゃあ色々と試してみよう。君のその杖は、攻撃に使えるのは【魔法の矢】だけだけど、他の魔法なら色々と使えるはずだからね」
「それなら、あちらで試してはいかがかしら?ちょうどあちらにはフォルさんも居ることですし、みんなで色々と魔法の練習をいたしましょう」
メイフィールドさんの指差す先には、魔法を乱射するフォルの姿があった。何か物凄く楽しそうではある。
「そうだな、何かフォルも楽しそうだし、俺達も混ぜてもらうか」
そういってフォルの元へと歩いていく。その途中でフォルが俺達に気づき、駆け寄ってきた。
そのままフォルを交えて、4人でいろんな魔法を使って行く。使っていくうちに気づいたが、初級魔法は思っていた以上に魔力を消費しないらしく、魔力が減っていると言う実感はほとんど感じられなかった。
ちなみに、先生を土下座しっぱなしで放置していたのに気づいたのは、実習の時間が終わってからの事だった。実習の時間中土下座をして居たのにもかかわらず、先生は何故か満足そうだった。
「ふぅむ……」
実習終了後の昼食時。
普段よりも早めに食事を終えた俺は、一人で図書館に入って調べ物をしていた。
内容は……魔法を使用する際の文字について。
先ほどみんなには黙っていたのだが、俺は魔法に使われる文字をある程度理解することが出来ていた。と言うか、ぶっちゃけ英語だった。
紙に書いてもらった文字はかなり崩れていて、もはや象形文字のような様相を呈していたのだが、ウィンドウに表示された文字は綺麗に英語で記述されていたのだ。
……というか、あの崩れていた謎文字をイメージして正確に表示されてるんだから、ある意味すごいよな。イメージに対して、何らかの補正とか掛かってるんだろうか?
あ、でも最初は中々魔法が成功しないって言うから、イメージと実際の文字が剥離していると間違って記述されるのかもしれない。
そういう点では、文字を読める俺は成功率が格段に上がっているのか?通常はイメージだけなのに対して、俺は文字として補正を掛けれてるわけだし。初めに【魔法の矢】とか【非殺傷】とかで、英語だとこういうスペルだったかな~とか考えてたしな。
とにかく、魔法に使われる文字が俺にとって馴染みのある文字だったので、気になってさっそく図書館で調べているのである。
ちなみに、勉強会は最近はもう控えめにしてある。既に大半は理解できるようになってきていたし、何よりいつまでも二人を拘束するのは良くないと思ったからだ。
魔法学園であっても学生は学生である。しかも、二人は青春時代とも言うべき年齢なのだ。俺は、あまりその貴重な時間を勉強のみに費やすのは良いとは思わない。
「魔法を使う際に使われる絵は、魔法絵と呼ばれる……?絵ねぇ、俺からすれば英語と言う文字にしか見えんのだが」
本に書かれてる内容に、思わずボソッと突っ込みを入れてしまう。……自重するか、下手すると怪しまれるし。
というか、呼ばれ方が文字ですらなく絵と来たか。まぁ、文字はまったく知らない人が見れば絵にも見えるのかも知れんけどな。
そのまま無言で本を流し読みする。ふと、使い魔という文字が目に留まった。
「ふむ?」
内容を詳しく読み進めてみる。内容は使い魔と魔法について。
使い魔は、魔法の発動体として使うことも出来るらしい。発動体として使えるのは、使い魔の主と使い魔自身。
ただし、発動体となった使い魔は体力を大幅に消耗するのだとか。
……危険だな。
正直に言うと、今の俺は体力が非常に低い。大幅に消耗すると言うのがどれだけなのかは分からないが、下手をすると一発撃つだけで気絶するか、気絶しないまでも動けなくなってしまうかもしれない。
それに、俺は自信を発動体としたときにどんな魔法が使えるのかを知らないし。イセリナなら知っているのだろうか?
とにかく俺が俺自身を発動体とする手段は、基本的には無いと思った方が良いだろう。魔法発動と同時に気絶とか、笑い話にもなってない。
さらに本を流し読みする。魔法絵に対する無意味そうな考察やら、未知の魔法の可能性、遺失魔法についてやら色々と書いてあったが、今の俺に有益そうな情報は見当たらなかった。
パタンと本をたたむ。本を集中して読んで疲れてしまったのか、若干立ち上がった時に立ちくらみを感じた。
時間は昼の休憩……早めに食事を終えてきたので、次の授業までは時間はたっぷりある。
とりあえず調べ物はここまでにして、俺は本を元の場所に戻す。図書館から外に出ると、太陽の光がまぶしく感じられた。
「むぅ……ちょっと眠いな」
別に寝不足でもなかったはずだが……実習での魔法連発と図書館での調べ物による疲労でも出たのか?
そんなことを考えながら、辺りを見回す。図書館の裏辺りに、大きめな木が一本立っているのが見えた。
興味がわいて裏に回ってみると、少し広いスペースが開いており、そこに一本の木が立っていた。木はそこそこの太さがあり、木陰で休憩するにはちょうど良いかもしれない。
木陰に歩み寄り、座れる位置を探す。ちょうど良く座れる場所を見つけたので、そこに座って休憩を取る。
まぁ、時間もまだあるんだし、少しぐらいは昼寝しても大丈夫か。
そう思った俺は、そのままゆっくりと目を閉じた。夢に潜らずに寝るなんて、久しぶりだな……とか考えているうちに俺の意識は落ちていった。
魔法についての解説などなど。不足気味なコメディ分は先生で何とか補充。
『いろんな魔法の使い方があるのだから、こういった魔法の使い方があっても良いんじゃないか?』
これがこの小説を書き始めた動機です。しかし行き当たりで書いているので、実際に魔法の記述に入るまでに既に24話。……無計画にも程がありますね。
ちなみに私は、ストーリーの流れはほぼ全てアドリブで作ってます。本当に無計画にも程がありますね。はい。
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