第5話:悲劇
僕と菜由は今日初めて一緒に帰った。
いろいろな話をして笑った。
僕の思い描いた状態だった。
「あっお揃いの指輪買おうよ!!」
そういって菜由は僕の腕に絡み付いて小さなアクセサリー屋を指差す。
はしゃぐ姿もまた可愛かった。
「わかったわかった。」
そうして店内に入っていく。
「どっれがいいかなぁ〜??」
菜由が腕を絡ませたまま指輪を眺める。
本当に微笑ましい光景。
「いやー!!助けてー!!!」
店のすぐ外から女の悲鳴が聞こえた。
「何?」
そう呟く菜由を置いて僕は走った。
あれは…
透き通るような少女の声…。
ララの声。
店の隣りの路地裏。
ララはいた。
3人の若い男と一緒に。
ララはその内の2人に抑えられていた。
もう1人はララの頬に手を置いている。
「キャー!!いやぁ!!!」
ララが必死に叫ぶ。
「あんまり叫ぶなよ。可愛い顔が台無しだぜ。すぐに気持ち良くなっからよ。」
ララの頬を触る男がいう。
「止めろ!!」
僕は無意識に叫んだ。
男が舌打ちをする。
「涼!?ダメっ!!!こっちにきちゃダメ!」
ララがそう叫んだ。
しかしララにそういう余裕はないはず。
壁に抑えられていたララが床に張り付けられる。
さっき頬を触っていた男がララにまたがる。
僕はララの元へ走ろうとした。
「涼!?その女の方が大事なの??」
店から出てきた菜由が言った。
僕は止まってしまう。
菜由の嫉妬深さは少し有名だった。
それも僕は可愛いとさえ思っていた。
でも今嫉妬されても困る。
さすがにここまでとは思ってなかった。
「大事とか言う問題じゃないだろ!!今あの子が危ないんだぞ!」
そう叫んで走ろうとしたが菜由が後ろから抱き締めて止めた。
「嫌だ…。行かせない。涼は私のだもん。私が一番涼を愛してるんだもん…。」
僕は動けなかった。
振りほどこうと思えばできる程の力だったのに…。
僕は動かなかった。
ただ…ララが遊ばれるのを見る事しかできなかった。
ララは首を舐められ白のワンピースの中に手を入れられ、ぐちゃぐちゃにされた。
その度にララは苦しそうに泣きながら喘いだ。
僕も…苦しかったのに……。
ララは唇の中に男の舌を入れられていた。
男の方が一方的に…。
その途中で何人かの男が僕の後ろからララの元へ走っていく。
そうしてララを苛めた男達は取押えられた。
どうやら誰かが警察を呼んだようだった。
ララは女性の警察に立たされ、ほとんど放心状態で泣いていた。
そんなララの耳元で取押えられた男が囁く。
「また苛めさせてね。」
僕は菜由を振りほどいてその男を殴った。
しかし警察に止められる。
菜由は絶望の表情で見つめる。
ララは放心状態。
僕は最低な人間だ。
あの時死んでいた方が良かったのかもしれない。
ゴメン……ゴメン…。
僕はララの前で泣き崩れた。
ララは放心状態でそれを見下ろしていた。




