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Caminando Caminando
作:いもっこちゃん



タミアの町


南から北上してきたトキナ姫は暑く照りつく太陽に慣れない。
トキナの住む領地は頑丈な山々が凍てつく氷を阻んでわずかな緑地を雪解け水が
潤し奇跡の谷と呼ばれる。
水の源である白い山並みを見て育ったトキナ姫には異常な暑さに感じられる。
「そのような皮衣は脱がれたら如何ですか」トキナ姫を見るまなざしが優しい。
馬は老婆心と少々の恩義もあってトキナ姫に同行することにしたが、
旅が進むにつれこの若者が真実クシャナ伝を信じ物語の道筋を辿ろうと努力しているのがわかった。
馬がトキナ姫をへこませようと言いくるめても決してその言葉には乗らないところも気に入っている。
今まで出あったどの領主より体力知力共に秀でているのも確かである。
無駄に生きながらえるものではないと以前は世を儚んでいたが
今はなぜもっと早くにこのような若者と出会わなかったを悔やむ日々である。
「これは火鼠の皮衣じゃ寒さにも暑さにも耐えられるはず。じゃが私も未熟者暑いのう。そなたの言うとおりだ脱ぐ事にしよう」そう言った割にはトキナ姫の額にも首筋にも一筋のあせも見当たらない。
トキナ姫は皮衣を肩から外すと馬のテオの背に掛けた。テオは見る見るうちに体温が下がり平常な体温になるのを感じた。
「レツ殿、これからは大きな町に入ることが多うございます。私に乗っては如何ですか」
「テオ、レツで良いレツと呼べ。私は身なりを兵士にしておる。兵士は馬には乗らぬものじゃゆえにこれでよい」
「わかりました。ところで旅籠の噂ではタミアの町に美しいヨイハムシャーの姫君が逗留なさっているご様子。一目旅の話の種に立ち寄っても良いでしょうか」
「クックックッ。最初からその予定であろう。さりとて私も見てみたい。この様子だと旅籠を聞かずともたどり着けよう」馬を見たことない人々がレツの周囲を遠巻きにしてはいたが馬とレツの行くまま後を人々もそぞろ歩く。

テオとレツの廻りの人混みは一方方向に流れ、大きな人の輪の手前でと止まった。
「ちょうど良いところに出くわしたようだ」旅籠の簡素な門の前には輿が担ぎ手と共に待っていた。
「そなたは首が長いから良く見えよう」からかい半分にテオにレツは言ったが
レツも群集の誰よりも背が高く少し背伸びするだけで旅籠の奥まで見えた。
「来たぞ」群衆の前より感嘆の声が上がりその声は漣のように広がった。
「美しい!!美しいの!!」
「ホンマに美しいですわー」ため息と吐息とが交互に繰り返され、薄布をまとった姫君があでやかな旅の衣装で輿に乗ると、
そろりそろりと担ぎ手は腰を上げて前に進み出た。
「どからっしゃい!目障りですぞ!」共に従えた兵士がもっと良く見ようと近づく群集をかき分ける。
「顔を拝ませてくれいー。」群集から声が上がる。
輿の上でゆるりと手が上がり頭からすっぽりとかけた薄布を、顔の前でほんの少し開いて姫君は群集に答えた。
その瞬間オオッと言う声が上がり、わずかに覗いた色白の姫君の頬に赤い朱の色を見て群集は色めきたった。
「噂以上だわい!美しい!!」
「中原の姫のようじゃ」
輿はゆっくりゆっくりと群集と進みさながら一国の后のお忍びのように去った。
「今日の宿はここにしましょう」とテオ。
「だめだ。ここの主を見たか?あの手の顔はあとで難題を持ちかけてくる。止めておこう」「そうでございますか・・」大きな人の集団が去ってしまうと旅籠が立ち並ぶ通りは日常の活気が戻ってきた。
テオとレツは物見高い人の目をまったく気にせずに通りを歩いて町外れまで来た。
タミアの町の門番に、レツは懐から袋を出して手渡すと門番は表情も変えずに受け取り、
城壁の上の兵士に合図を送った。
門が開くと又一袋門番に渡す、門番は相好崩して見送ってくれた。
町を出ても家並みが途切れるわけではなかった。
城壁の中より少々粗野な作りの建物が、両脇に立ち並び家の住人が胡散臭そうにテオとレツを見る。
「これはこれは又もや素敵な人々がてぐすね引いて待っているようですが」
「この先に野原が有るそうな。草も生えぬ野原を見て見たい」馬のテオは珍しげに見ている男等のささやき声が聞える。
男等のテオを値踏みする声は白い玉を得た以上のものだ。
今夜もあの男達と鬼ごっこをするのかと思うと憂鬱になった。
「大丈夫だ彼らの恐れている場所まで行けば誰も我々の眠りは邪魔させぬわ」からからと呑気な声で笑うレツに又くだらない噂話を仕入れて来たとテオは思った。













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