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Caminando Caminando
作:いもっこちゃん





国を出て一月半が経つ。従兄弟が納めるトリイニノ高原の領地から、湖を守る堰の役目をする外輪山を越えてヌカタミヤ国に入りやっと中原への入り口にトキナ姫はたどり着いた。
一人旅ゆえ旅籠で面白い話を聞くと遠回りをして、わざわざ噂の物を見に行ったりと気楽な旅である。
姫は北では珍しい馬の市場がたつという町まで来ていた。
人から人に伝達される言葉は様々な装飾を経て人々の耳に届けられる。
トキナ姫も絵でしか見た事のない馬を見れると勢い込んできたが、市場には鳥や小動物の籠がわんさとあり、馬の姿はない。
集まった人々は馬のことなど忘れて、美しい鳥や変わった獣に興味をそそられている。
馬はタダの人寄せらしい。
姫は馬を探して人混みの中を歩けば、痩せこけて半分病気の馬が一頭、市場の奥に繋がれていた。
「おい、若いの。馬が見たければほら小袋の一つもだしな。ただ見はだめやで」せわしなく籠を運んでいる青年が胡散臭そうに声をかける。
「そなたか。この馬の持ち主は。この馬を買いたいのだが」
「バカこけ!お前みたいな汚いのに買えるか!ウマの持ち主はオレのオヤジだぁー。が、話聞くか?」汚いはお互い様である。姫の平服には鳥の糞はついていない。
「オヤジーーィ。物好きがいるぞ。ウマの話が聞きたいとさ」オヤジとよばれた頑強な老人が山積みの鳥かごの間から顔を覗かせた。
「こいつがよ、ウマを買いたいとよ」
「ウマが買いたいだと。何をふざけた事を大枚はたいて苦労して連れてきたんだ。売れるかい!」さすがに商人。どんな物にでも付加価値をつけて売るつもりらしい。
「いくらだ」値踏みするようにトキナ姫を上から下まで見たが大金がせしめられる相手か悩んでいる。
「ウマと同じだけの目方だけの穀物を払ってくれたら譲ってやってもいいぞ。えへへへ」見れば見るほど若造は衣装は汚いが妙に自信に満ちている。下手に傲慢にでて腰の剣で叩き殺されてもかなわない。法外だとは知りながら親父はふっかけてきた。
「馬と同じだけの穀物か・・生きておればそれだけの価値があるがな。いかんなぁ・・あと三日もたてばこの馬は死ぬぞ。そなた道中で馬にタイワレと言う草を与えたろう?足の関節を見てみろ腐り始めておる。見れば見るほど酷いものだ。タイワレを食べて腐った馬か・・・。ここからワレワレが広がったらそなたが役人に首を落とされかねないな」さりげなく世間話をするように親父に考えさせる時間を与える
若造の言葉通り馬の足は関節から汁が滴り落ちていた。
「ば、ばかなこのウマはワレワレ何ぞにかかってないわい!」そう言ったものの、オヤジの目は馬の足元から離れない。もともとどこぞの山奥に捨てに行くといっていた馬を小袋一つで引き受け、若者の言ったようにタイワレの草で精力を付けさせてここまで引っ張ってきた。
よくぞ生きてここまで来たと親父も思う。
「お若いの。買うのかい?」
「いや、止めておこう。私もわざわざ疫病神を仕入れて首を落とされてはかなわない。老人、今のうちにここから20里離れた場所に大きな湖がある、その岸にだけ生える草が病の進行を止めるという。このように値段の高い大事な馬はそこへ連れて行くが良かろう」若者は腕組をし馬の周囲を歩き顔をしかめた。後ろ足の太ももは蛆がたかっていた。
「お若いの」親父が声を潜めて若者に耳打ちする。
「もしよろしければこのウマをその泉まで持っていってくださらんか?」泉ではなくて湖だと間違いを正したいが若者はグットガマンした。
「悪いが私はデュリュシナに仕官しに行くのでな、遠回りはせん。それに峠には役人が居て見張っておる。あの役人に見つからぬように行くには、難しいぞ・・・」
「それはほれ、これを握らせれば良い事で・・なにとぞその岸の草をウマに食べさせてやってくださいませんか?」親父の言葉使いが変化してきた。
最初物乞いに言うように見下していたのが、ワレワレの病をチラつかせただけで懐から袋を取り出して小さな玉を若者に握らせた。
「これをもって行きなされ。役人にこれを渡せば・・のう。わかるじゃろう?」
「わからぬでもないが・・・しかしそのような事を私が頼まれても・・おぬし等は何時までここに滞在するのか馬が元気になって戻ってきたらだが、間違いなくここに居てくれよ」
「おお、わし等はここで暫らくは商売をするで、間違いなくここにおるよワシはゴマじゃ。息子はケジじゃ。良いか忘れるなよ、わしの名はゴマ息子はケジじゃ。きっと馬を元気にしてここに戻って来てくれよ」親父は馬の背に掛けた布を取り外しあばらの出た馬を若者に引かせる。ゴマの名前はさっきの客の名前だ。
若者が役人に捕まり頼まれたと証明しようとしても、無理なようにうその名前を教えた。
さっさとこの場所から移動して役人の手から逃れるなければ。オヤジは若者が捕まるまで10日と読んだ、役人がここに到着するのは三日・・ならばあと7日は商売が出来ると勘定した。
若者は痩せた馬の首筋を撫でながら市場から離れていく。厄介払いが出来てせいせいしたオヤジである













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