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オレは女子高生 作者:AT

第18話 感情 オレの身体が女になる?

 オレはいつの間にか家に帰っていた。家までどうして帰ったのか憶えてないくらい気が動転していたのだろうか。オレは二階の自分の部屋に入ると鍵をかけた。誰かが入ってくることは無いと思ったが、とにかく閉じこもりたい気分だった。

 制服を着たままベッドに倒れ込む。もうこのまま男に戻れないのだと思うと自然に涙が出てきた。正確には体は男に戻るかもしれないが、もうオレの身体には男としての機能は戻ってこない。

 薬を止めれば、身体はまた男に戻るかもしれない。とはいえ身体だけ男に戻って何になるというのだろうか?こんな身体では彼女も出来ないし、結婚も出来ない。たとえ出来たとしても、子供を作ることは出来ないのだ。

 オレはいつしか泣きじゃくっていた。枕が涙で濡れていく。オレはいったい何を考えていたのだろうか?男が女子校に入って女の子として生活するなんて、冷静に考えれば有り得ない話ではないか。第一、女として卒業しても、それはあくまで女のオレであり、大学に行くにしても、就職するにしても、男のオレはあくまで中卒ではないのか?なぜ今までそんなことにも気付かなかったのだろうか?オレは自分のあまりの馬鹿さに悲しくなってしまった。


 オレはベッドから起き上がると鏡の前に立ってみた。女になってから置いた全身が映る縦長の大きな鏡だ。冷静になって見てみれば、鏡に映ったオレは確かに以前のオレではなかった。髪が伸びただけではない。制服を着ていてもオレの身体が女らしい凹凸を帯びているのがなんとなくわかる。そういえば、以前は苦労していたスカートの腰の位置も最近はあまり気にならなくなっていた。

 オレは今日はじめて着た夏服のセーラー服を脱いでベッドに置いた。スリップを脱ぎ、ブラジャーを外す。そして胸に貼りついたヌーブラをゆっくり剥がした。そこにはまだ幼い小さくとがった乳房があった。乳輪のまわりが少しとがっているだけだったが、それは太ったとかいうのとは明らかに違う、思春期の膨らみ始めた少女の乳房に違いなかった。

 パンティーをはいた腰つきも男のそれとは違っている。以前は裸でパンティーをはくと、なんだか海パンのようでとても見られたものではなかったが、今では腰のあたりについた脂肪がオレの身体を女性らしく見せている。お尻も少し大きくなっているみたいだ。そういえば最近イスにすわるとお尻がグニャグニャすると思っていた。それもお尻についた脂肪のせいだったのだ。

 なぜこんなに変わっていることにオレは気付かなかったのだろう。たしかに裸で鏡に全身を映したことはほとんどなかった。鏡に映して見るのは、服や髪型だけで、自分のことをしげしげと見ることなどなかった。女になった自分の姿などそんなに見たいものではないからだ。きっとそのせいで今まで自分の身体の変化に気付くことがなかったのだろう。

 いや、それは違うかも知れない。気付く機会は何度もあったはずだ。女らしくなっただの、可愛くなっただの、いったい何人に言われたと思う・・・長谷川にも言われたではないか。それをオレは考えまいと無視し続けていたのだ。オレはどこかで女っぽくなるのを恐れていたのかもしれない。


 オレは胸の小さな膨らみをそっと触ってみた。それは確かに男のころのオレには無かった柔らかな突起だった。良く見れば小さな突起の裾野にはなだらかな膨らみが続いている。乳腺というものが広がっているのだろうか・・・このまま薬を続けていれば、乳腺は発達し続け、女の子のように胸が大きくなっていくのだろうか?

 股間に手を伸ばすと、そこには小さく萎んでしまったペニスが付いている。もう随分長い間勃起することもなく、射精もしていない。そもそもしたいという気持ちにもならなかった。オレはパンティーを降ろしてみた。一糸まとわぬ裸になったオレの姿は、まるでこれから大人の女になろうとする思春期の少女のようだった。その儚気な印象の中で股間にあるものだけが、逆にオレの身体にそぐわないような気さえしてくる。

 オレはいったいどうすれば良いのだろうか?今のオレに与えられた選択はそんなに多くないように思える。

 薬を止め男に戻り女学生を続けるか。男に戻って来年男として受験し直すか。それともこのまま薬を続けて女の子の身体になるか・・・・

 男に戻ったとして子供が出来ない身体でやっていけるのだろうか?もちろん結婚したからといって必ず子供が出来るわけじゃない。もちろん最初から子供が出来ない人もいるだろう。自分に問題がなくても奥さんの方が出来ない可能性もある。そもそも結婚するのかどうかもわからない。

 このまま薬を使い続けて、仮に完全に女に見える身体になったとしても、どっちみち男のオレに子供を産むことなど出来るハズがない。そもそも子供が出来るか出来ないかがどれほど重要かなど、高校生になったばかりのオレにわかるハズもないのだ。


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 オレは普段着のサマードレスを着てリビングに降りるとソファーにグッタリと座り込んだ。スカートの中で足が開いてだらしない感じだが、今のオレには関係ないように思える。なんだか一気に疲れてしまったようだ。それにどうせ見ている人もいないのに、女のふりをするのもバカバカしい気がしてしまう。

 「おや?有希、帰ってたのか?」
オレはその声にハッとして、慌てて居住まいを正した。厳しく躾けられた身体が勝手に反応してしまう。オレはどれだけ真面目な性格なんだ・・・
「とうさん、いたの・・・」
「いや、今書斎から出てきたところだけど。有希・・・どうかしたのか?」
「とうさん・・・とうさんはオレが女になったらどう思う?」
父はヨッコラショとばかりに向側のソファーに腰掛けた。
「女になるって、今のままってことか?」
「いや・・・そうじゃなくて・・・」
オレはなんて言ったらいいのか判らなかった。

 オレは立ち上がり腕を後ろにまわすと、サマードレスの腰のリボンをほどいた。両手を首の後ろに回し背中のジッパーを降ろす。
「とうさん・・・オレの身体・・・見て・・・」
オレはそのままサマードレスを脱いで、パンティーだけの姿になった。
父は驚いて目を見開いた。
「どうしたんだ?その身体は・・・」
「オレ・・・もう・・・女になりかけてるんだ・・・」
オレは父にこれまでのいきさつを全て話した。


 「それは困ったな・・・有希、おまえはどうしたいんだ?」
「オレ?」
「おれはおまえが好きなようにすれば、それでいいと思っている。おまえの人生だからな。」
「そんな・・・オレまだ高校生になったばかりだよ・・・これから先のことなんて・・・オレにはまだ判らないよ・・・」
父はしばらく考えてからこう言った。
「お前は子供が出来ないことを気にしているが、それはもう悩んでどうこうなることじゃないんだな。」
「・・・うん・・・」
確かにその通りだ・・・いまさら悩んでみても機能は戻ってこない・・・
「それじゃ、勉強し直して来年別の高校を受験するか?良く考えてみるんだ。」
オレは来年受験し直して、男として他の学校に行くというのは、あまりイメージできなかった。なんだか男としてのオレがイメージしにくい。女に慣れすぎてしまったのだろうか?
「それじゃ、このまま白鴻女学園に行くとしたら、身体を男に戻すのと、女になるのとどっちがいい?」
そう言われると、オレはなんだかいまさら男に戻って女学校に通い続けるのも意味が無い気がしてくる。ずっとブラジャーの中にヌーブラを忍ばせているよりは、女の身体になれるのならその方が良いのではないのだろうか?
「でも・・・卒業したら男に戻らなきゃいけないんじゃないの?」
「別にそう決めてかかる必要もないだろう。有希が女として生きたいのならそうすればいいとおれは思うけどな。」
「オレが女として生きる?ずっと?そんなことできるの?」
「それはおまえの努力次第だろう。まあ、男が男として生きるよりは、女として生きる方が努力は必要かもしれないな。だが、どんな人生でも人間が生きていくには努力は必要だ。ただ、同じ努力でもやり甲斐があるかどうかで大きく違うだろうな。」

 やり甲斐?オレはその言葉に引っかかった。オレにはこれまで男として生きてきてやり甲斐など感じたことはなかった。しかし女の子になる努力にはやり甲斐ともいえるようなものを感じてはいなかっただろうか?なぜ勉強も出来なかったオレが女になることには、こんなに一生懸命になれたのだろうか?女子校にしか行くところが無かったからか?本当にそれだけなのだろうか?
「とうさん・・・オレ・・・ほんとに女になれると思う・・・?」
「有希は今でも十分女らしいぞ。」
「オレ・・・女になってもいいの?」
「ああ、おまえの人生だ。おれにとってはおまえが男でも女でも、大切な子供であることに変わりはない。」
オレはいつの間にか涙ぐんでいた。
「と・・とうさん・・・」
オレが抱きつこうとすると父は慌ててオレを制止した。
「有希・・・とにかく服を着なさい。」
「あっ!」
オレは自分が裸なのを忘れていた。
「ヘヘッ・・・ごめん・・・わたしったら・・・なんかはしたないね・・・」
オレは照れながら急いでサマードレスを着なおした。


 オレは自分でも何でこんな考えに至ったのかは良く解らなかった。ただ、父に言われて思ったのは、今さら男に戻ることにはあまり意味を見出せないということだった。もっとも女になることに意味があるかどうかは判らない。ただこれまで女として過ごしてきたなかで、今まで男として生きてきて感じたことがなかった何かを感じたのも事実だった。それが何なのかオレは確かめてみたかったのかも知れない。

 なぜか今やめてしまってはいけないような気がした。そんなことを思うのもオレには初めての経験だった。






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