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第二巻が始まります。舞台は、王宮から異国へと移り、又幼い少年時代の第一巻の少しメルヘン調とは趣が違い、よりリアルな青年期へと時が移っていく予定です。剣と魔法は相変わらずですが…新たな恋もあるかも?
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第二巻 第一章 新たなる苦しみ 1
                        第二巻

                     第一章 新たなる苦しみ

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 遠くから弔いの鐘の音が陰気に響く。夕暮れ時の、うら寂しい時刻にその鐘の音は、まるで誰かを責めている様に感じるのだ。
 遥かに高い塔の上で、エクリースはその鐘の音を聞いた。それが、最愛の弟サイラス第三王子の葬儀の合図である事を、エクリースは知っていた。なぜなら今まで、エクリースはその鐘の音を無数に聞いた気がしたからだ。
 事実、兄のドリアン第一王子、育ての父トロイ、それから最も愛したベアトリス! その人々は、自分の元をすり抜けて行き、もう冥府に行ってしまったのか、二度と会うことも無いのだ。

 今までも、肉体と精神の苦しみは幾つかあった。そしてそれを乗り越えてきたエクリースだが、今回だけはどうにも乗り越えられそうも無い。助ける人は誰も居ず、そして今回の苦痛は激烈だったからだ。
 何よりも『弟殺し』といういわれなき汚名を着せられ、無実の罪を被せられている。そしてそれはエクリースにも、謎の事件であり、彼にとっても確たる犯人像は無かった。
と言うより、多分エクリースを殺そうと、毒矢が仕掛けられたオルゴールを開けてしまったサイラス自身の責任でもあり、犯人が居ないのは当たり前だった。
  強いて言えば、犯人はサイラスの母イデット妃その人であり、そそのかした誰かであり、そしてそれを貰うはずだった自分でもあったので、エクリースも責任の一旦を担っても仕方なかったのだ。
 がしかし……エクリース自身が殺したのでないことは明らかなのだ。けれども、イデットはエクリースが殺したのだと言い張り、自分の罪を覆い隠す為か、エクリースが矢を刺したところを見たとまで偽証した。

 公に裁判は行われず、エクリースはただ「自分は無実である」ことしか言えなかった。
 そして今回ばかりは、父王も又他の人々もイデットの言う事を信じたのだった。
「あとは、エクリースが自白すれば、確実に彼は死刑。それも最も残忍な、八つ裂きか火炙り! 是非とも我が子、サイラスの無念を晴らしたいのです!」
とイデットは絶叫した。人々は我が子を失った“悲しみの母”イデットの狂ったような有様に同情し、涙した。
 そして、誰もエクリースの言い分は聞いて貰えなかった。

― もうこれ以上、愛する人を失いたくは無かったのに! ああ、サイラス……お前は良き可愛い弟だった。愛していた……大好きだった……なぜ、あのオルゴールを開けたりしたんだ!?

 辺りが薄暗くなってきた頃、下から足音がしてきたので、エクリースは緊張して待っていた。すると、重い鉄製扉が開き、外から入って来たのは、騎士ウーリッヒと数人の兵士、そしてシスリー長老だった。長老は、長い階段のせいか喘いでいる。それでもやって来るのは余程のことだろうか?

「エクリース様」と騎士ウーリッヒが渋々と言葉を発した。
「あなたを、サイラス王子殺害容疑で審問致します」
「殺害容疑……? まさか、ウーリッヒ、お前までもがわたしを疑っているのか」
 ウーリッヒは答えず、目で兵士達に合図した。兵士達はすぐさま、エクリースを縛り上げると、上部にある梁からぶら下げた。きりきりとした痛みが、肩から腕を襲い、エクリースは苦痛に喘ぐ。
「まことに申し訳ないのですが、王子、これは父王様のご命令なのです。白状なさればそれで済みます。苦痛も短く……」
「何を言っている!?」とエクリースはショックを受けて反論した。
「わたしがサイラスを殺すはずが無いではないか。あんなに愛していた可愛い弟を」
「さようですか……では、致し方ない」
 ウーリッヒはチラッとシスリー長老に目配せすると、エクリースのシャツを引き裂いた。それから一歩下がり、長い鞭を手にした大男の兵士に冷たく命じた。
「やれ!」

 鞭がうなり、エクリースは今までに無い激痛に叫び声を上げる。その耐え難い悲痛な響きが、小さい小窓を経て外にもれ出て行ったのを、塔の真下に立つイデットは聞き分けた。
「苦しむがいい……王子よ。お前の命運ももはや尽きたのじゃ……」
 悲鳴をあげ、何度も気を失っては又打たれ続けたが、エクリースは決して嘘の自白はしなかった。


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