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第一巻  第一章 日食に生まれた王子 1
            プリンス・エクリプス
            ~PRINCE ECLIPS~

 自分を愛してくれる者、近付いて来てくれる者をことごとく不幸にしてしまう、日食の闇の中で生まれた美形の王子エクリース。彼の持って生まれた運命は変えられるのだろうか?

第一巻

第一章 日食に生まれた王子



 全ての光と闇は、人間のうかがい知らない彼方からやってくると信じられていた、その昔々のこと。
 ある王国では、王妃ドロテアがいまや第二子の臨月を迎えていた。けれども王妃は健やかで美しく、長男である三歳の王子を既に持ち、王とその臣下や民達は何の心配も憂いも有してはいなかった。ただ一人、王妃の侍女達の内一人が、ある不吉な噂を耳にするまでは。

 それは魔女と呼ばれていたアンジェラと言う年老いた女が、西の果ての小川の側で占っていたという話を、誰かが聞いてきたのだ。実はアンジェラの母は、“魔女”として先代の王の時代に火あぶりの刑にかけられていた。
 その時代は魔女と呼ばれる女達や黒猫が大勢捕らえられ、火あぶりになったのだったが、その余りの惨たらしさに、今の王の時代になって以降、そのような残忍な刑罰は取り止めになっていた。

 アンジェラはさる旅人にこう告げたそうだ。
『真昼なのに暗闇で生まれる者は不幸を呼ぶ者。そしてその者はいずれこの世に生を受ける』と……。
 恐れおののいた旅人はすぐさまこの国の大臣に告げた。けれども、その言葉を誰も信用しなかった。
『真昼なのに暗闇で』などという馬鹿げた話があるわけではないと、みんなは考えた。例え雨が降っていようと、暗闇にはならない。ありえないことだと。

 そして皆思った。母を殺された恨みの為に、アンジェラはそう恐怖を煽っているのだと。けれども聞き捨てなら無いと思った王は、すぐさまアンジェラを捕らえるようにと、おふれを出したのだった。
 けれども兵士達がその場所に行って見ると、アンジェラの住んでいた小屋は小川の側で燃え、アンジェラの姿はもう消えていた。人々は最初の内恐れていたが、日が経つ内に忘れ果てていった。
 そしてその恐怖を凌駕するかのように、王妃ドロテアが第二子を妊娠したのだ。既に王子が生まれている為か、誰もが男の子でも女の子でもどちらでもいいと考えていた。

 日に日にお腹かが大きくなっていったが、王妃はいつも健やかだった。最初の王子ブライトも又、弟か妹が出来るのを楽しみにしていた。王宮中はいつも笑いが絶えず、王一家は仲が良かった。全てがうまく行っていた。そう……その日までは。

 その日、一片の雲も無く空は晴れ渡っていた。
 王妃はブライト王子と侍女を伴って、中庭で遊んだあと、池の噴水を眺めていた。爽やかな心地良い風が吹く春のうららかな日。全てが美しく新鮮だった。
 その時一陣の風が吹きぬけ、王妃の長い髪を揺らした。王妃はゾッとして顔を挙げた。辺りがひんやりとし、鳥の鳴き声がやんだ。そして薄暗くなっていく大気の中で、侍女達が不安そうに首を傾げているのが見えた。

「王妃様……何だか変ですわ」
「真昼だというのに、辺りが急に暗くなってきて」
「雲なども無いと言うのに……どうして?」

 けれども一人の従者が上を見上げて、口をパクパクし、指差した。
「太陽が! 太陽が欠けて行く!」
 皆が空を見上げた。確かに太陽の一部が欠けている。
「おお、神様! こんなことが!」
 年老いた侍女がそう祈っていると、突然王妃が苦しみ出した。

「ううっ……うっうっ」
「あ! 王妃様! ご出産では?」
「産気づかれたのですよ! さあ早く、王妃様を部屋の中へと!」
 薄暗がりの中、侍女達は苦しむ王妃を抱き、王宮へと運んで行った。

 そして王妃ドロテアは、最も暗くなったその闇の中で、子供を産み落としたのだった。
「男の子ですわ! 王子様ですよ! まぁ、本当に綺麗なお顔ですこと」
 産婆はその男の子を抱き上げたが、直ぐに顔をしかめた。嫌な予感が身を貫く。
「背中に丸い形の黒い痣が! まるで何かを覆っているような不吉なしるし……」
 その時、次第に辺りが明るくなっていき、やがて太陽は再び燦然と輝き始めた。
 第二王子エクリースはこうして生を受けた。そしてそれは悲劇の始まりだった……。


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