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Chapter:04 意思
Episode:36
「まぁおまえ以上の事情あるやつとか、他にいねぇだろうから、落ちこんじまうの分かるけどな。
 けど金に困ったことねーし、親いるし、その辺ちっといいんじゃね? 俺から見ても、けっこう羨ましいしさ」
「あ……!」

 声をあげたルーフェイアのヤツに、今度は思わず突っ込んだ。

「おまえもしかして、気づいてなかったのか?」
「ごめん……」
 可笑しくなった。こういう天然ボケは、いかにもこいつらしい。
 つい笑い出した俺に、ルーフェイアのヤツが怒った調子で言う。

「そんな、笑わなくても……あたしが、悪いけど、でも……」
「悪りぃ悪りぃ」
 謝る側と謝られる側が反対の気がすっけど、まぁそれはそれだ。

「ま、みんないろいろあるって。おまえがトップクラスだとは、思うけどよ」
「そうだね、そうだよね……」
 またルーフェイアがうつむく。でも、泣こうとしてじゃなくて、考えてた。
「泣いてても、変わらない、から……」

 こいつがいつも必死なのは、俺にもわかってた。前も見えないほどの荷物で、どっちへ行ったらいいかわからない、ようするにそういうことだ。
 そして今、確かにこいつは歩き出そうとしていた。
 優しいことが取り柄なのに、まったく筋違いな荷物を背負ったままで。

 ルーフェイアが顔を上げる。
「あたし……自分のことしか、見えてなかった」
 自嘲したような表情。

――やっぱお前、すごいぜ。
 人前で自分のことを、こんな風に言えるやつは少ない。
 いい意味でプライドを持たないルーフェイアを、羨ましく思った。

「あたしひとりが辛いんだと思ってた。ひどい、って。
 けど、あたしだけじゃなくて……みんなそれぞれ、辛くて……」
 深い碧の、真っ直ぐな瞳。
 まるでガラスのように澄んで……。

「――そゆことだな」
 その瞳におされながら、そう俺は答えた。

 この世界のどこにも、辛くないやつなんていない。
 先輩たちは言うに及ばず、シーモアなんざストリートキッズしてたし、ナティエスもそうだ。ミルもあれで、けっこういろいろあっ たらしい。
 そして俺も、ルーフェイアとは比べものにゃならねぇけど、それなりにあった。

 この年でなんで、って気はあるけど、それを言ってもどうにもならない。その他にだって辛いことなんか、数えるのも馬鹿らしいくらい次々と起こる。
 けど――やるしかない。

「頑張ってりゃいつかはいいことあるなんて、そんな下らないこと言わねぇ。でもなにもしないで泣いてたら、そこで終わりだかんな。
 だからさ、泣いてもいいから、やってみろよ」
「――そうだね、そうする」

 優しいこいつのことだ、またなんかあれば、きっと泣くだろう。辛さに嘆く時もあるだろう。
 けど今度は間違いなく、自分で立ち上がるはずだ。

 真に強いやつは真に優しい。その言葉を思い出した。
 これは、その強さじゃないんだろうか?
 少なくとも俺には、そう思えた。





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