「もう、動かないですね」
「――あまり、動いて欲しくはないな」
しかし……美少女がこういうものを、平気でつついているというのは、どうにも形容しがたいものがある。
戦場育ちで見なれていると言えば、それまでなのだろうが……。
「とりあえず、戻らないか?」
「あ、はい」
見かねて言った私の言葉に、ルーフェイアは素直に従った。
少し溶け始めた橋を、2人で急いで歩く。
「冷たい……」
ルーフェイアが小さくつぶやいた。
当然だろう。彼女は素足だ。それで氷の上を歩けば、冷たいに決まっている。
「ルーフェイア?」
「あ、はい? きゃ!」
可哀想に思って抱き上げると、少女が悲鳴を上げた。
「あ、すまない。いま降ろす」
「――いいです、このままで」
まるで母親に抱かれた子供のように、ルーフェイアが身体を預けてくる。
不思議な気分だった。少女が自分の妹のように錯覚する。
無条件の、疑いをまったく挟まない信頼。それをこうも簡単に見せるとは。
――この子はよほど、周囲に愛されて育ったのだろうな。
そうでなければ人は、疑うことばかり覚えるものだ。またそうであったからこそ、こんな優しい少女が戦場に出されて尚、真っ直ぐに成長したのだろう。
少し羨ましい気がした。この学院で、ルーフェイア以上に愛されて育った者は、いないだろうと思う。
意外に距離のある海面を渡りきると、タシュアともうひとり下級生――イマド、といっただろうか?――が待っていた。
「――タシュア、身体は大丈夫なのか?」
禁呪を連続で使ったタシュアが心配で、真っ先に尋ねる。
「私の身体を心配するのでしたら、その分戦闘に気を向けなさい。
いつも言っているはずですよ。完全に死を確認するまで気を抜くなと」
厳しい。
だが私を心配していればこその言葉だ。
「次は気をつける」
「言葉ではなく、態度で示して欲しいものですね。
――ところでいつから、シルファまで保護者になったのですか?」
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