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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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共謀

 職員室前だったこともあり説明は手早く済ませた。
「状況はわかった。ちょっとこれを持っていてくれ」
 奥崎は抱えていた書類を湧哉に任せるとポケットからスマホを取り出した。
「やっぱり連絡が来てるな。会議になるというから電源を切っていたんだ。それと教頭は私が役所にいることを話さなかったみたいだな」
「記念館の跡地の話は田島先生が仕切ってるんじゃなかったんですか? それに取り壊しになるような話じゃなくて利用方法を探してたんじゃ……」
「田島先生の方針としてはそうだ。教頭はそれで私を会議に行かせたことを話していないのかもしれないな。田島先生にそれが知れれば問題になる。今はそれどころではなさそうだが」
「でもそれって変じゃないですか? 今まで田島先生が進めてきたのに役所の方は奥崎先生が来ても驚かなかったんですよね?」
「まさか……」
 古野濱の疑問は的を得ていた。田島は取り壊しを決めるときも役所に掛け合ってきたという。そんな人物を役所側がわからないはずはない。もしも田島が来ないとあらかじめ知っていたのだとしたら……
「役所側もグルってことですか?」
 そんなことがあるだろうか? 確かに役所側は取り壊しの方向で話を進めているがもう跡地に何を建てるかまで考え始めているという。進行のためにこんな出来レース的なことまでするとは。
「やり方が汚いな。気に入らない」
「そんなことって……」
 阿良田は一目で不機嫌だというのがわかった。対する古野濱は肩を落としていた。
 ここまで聞くと阿良田や古野濱と同じ気持ちにはなる。だが湧哉には一つわからないことがあった。前回悠の兄である集が学校に来た時のことだ。旧校舎の取り壊しに関する会議で来たと言っていたが、その時奥崎は呼ばれなかった。むしろ知らされもせず蚊帳の外に出されていた。にもかかわらず、今回は代表として取り壊しの会議へと参加させられた。まったく意図がわからない。やることに一貫性がない。まるで他の誰かが後から手を加えているように……。
「とにかく一度職員室で話を聞いてくる。また後で集まろう」
 奥崎は湧哉に預けた書類を再び受け取ると職員室へと向かった。
「奥崎先生には何事もなかったし、とりあえず目的は達成、かな?」
「そうだな。だが、もし役所と教頭がグルなら。まったく、気持ちが悪いな」
「そうだった場合記念館を残すのは難しくなりますよね」
「向うも強引だからな。しかも今回のことは連絡の不行き届きだったと説明すれば大した問題にもならない」
 奥崎の願い、悠の希望。どちらも相手が大きくなってしまった。いや、元々大きかったことを知らなかっただけだ。この手の問題は結局のところ影響力が大きい方が勝つ。学生が少し集まったところでひっくり返すことは不可能に近い。事の結末を決めるのはほとんどが大人たちだ。そんな事実に湧哉はやるせなさを感じていた。
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