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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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成果は他にも

 前回と同じく図書室は静かだった。だが今回は他に人はいない。俺達3人だけだ。
「それで? なぜ畑原は教頭に追い回されることになった?」
「それは―――」
 湧哉は今回のことを話した。教頭が何やらパソコンで見ていたこと。それが盗撮の写真だったのではないかと思い、教頭を職員室から引きはがしたこと。最後の最後で谷口に見つかってしまったこと。
 腕組みをしながら聞いていた阿良田は話しを聞くと頷いた。
「理由については合点がいった。だが、学校中を走り回ったんだからわかっていると思うが、何かが起こったことは全校生徒の知るところだ。耳の早い奴なら教頭のことまで知っているかもしれない。どういうことかわかるか?」
「ALMの考え方としてはダメだった、ってことですか?」
「そうだ。今回の畑原の行動は全校が知っている。少し間違えればALMのことも全校に知れ渡った。古野濱の機転がなければそうなってたはずだ。それはわかってるな?」
「で、でも今回は何とか大丈夫だったわけだし、それに教頭先生も―――」
 古野濱の弁解を阿良田は手で制した。
「話は最後まで聞け」
「え?」
「畑原、どうだ?」
「俺の失敗は、古野濱先輩が助けてくれたったことはわかってます。それに次もこんな風に誰かが助けてくれるとは限らないってことも」
「そうか」
 阿良田は腕組みをしたまま何かを思い出すかのように俯いた。古野濱はこの状況におろおろとするばかりで成長できたとは言ってもまだまだ思い切りが必要なのだと窺えた。だがそんな心配は無用だったようだ。
「それならいい」
「……へ?」
「結果的に教頭の悪事は暴くことができた。そこは評価する。自分の失敗点が見えていることもな」
「は、はい。ありがとう、ございます」
「なんだ? 歯切れが悪いぞ」
「てっきり怒られるものだと思ってましたから」
「確かに教頭を煽ったり、パソコンを盗み見たことは認めん。だが今回は古野濱のことも鑑みてそこには目を瞑ろう」
 認められないことを行ったこと以上に教頭を摘発できたことの成果が大きかった、ということなのだろうか。
「それって―――」
「これは結果ありきの判断だ! 調子に乗るなよ!それと……」
「?」
「今回は運が良かったということを自覚しているなら、次回からは古野濱や……俺に一声かけろ。何かしら助けることは、できる、だろうからな」
 少々照れ気味でぶっきらぼうな言い方だったが、それは阿良田が自分のことを認めてくれたんだと湧哉は思った。それほど今回の行動の意味は大きかったということだ。
「ふふふ」
「古野濱、何か言いたいことでもあるのか?」 
 古野濱は口に手を当ててクスクスと笑っていた。
「なんか阿良田君が先輩みたいなこと言うからおかしくって」
「!?」
「先輩って先輩たちの先輩ですか?」
「うん。二個上の先輩が言ってたセリフだったかな。その人は照れたりしてなかったけどね」
「別に俺は照れてなんかいない!」
「ふふふ、そうだね」
 図書室はなぜか暖かい雰囲気に包まれていた。
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