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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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救いの手はめぐる

 そこからの経過はめまぐるしかった。まずは湧哉以外の生徒が一時的に職員室から出され、そこへ暴れながら戻ってきた教頭は写真のことを問われると蛇ににらまれた蛙のようにおとなしくなった。谷口や他の教員からの問い詰めにはモゴモゴと口を濁すばかりで回答にはなっていなかった。普段の姿勢はどこへやら。ただでさえ小柄な教頭が今は更に小さく見える。
 教頭の悪事を暴く、という目的は成功した。これで奥崎への圧力は無くなり悠の活動も前進するだろう。だが、問題もあった。今回の騒動は目立ち過ぎた。
 湧哉は今、職員室にある面談室の椅子に一人座っていた。面談室といっても職員室の一角を仕切りで囲っただけの簡単なものだ。戸があるわけでもないので職員室の内の状況はみることができる。
 一人残されたのは色々と聞きたいことがあるからだろう。最後にパソコンを操作しているところを見られなければたまたま見つけたで済んだかもしれないがもうそうはいかない。わざと教頭を職員室から引きはがして戻ってきたということは明白で、挑発行為自体にも関連があることはわかりきっているはずだ。となればどこでその情報を得たのか? もちろんこれはALMからだが、ALMはあくまで秘密裏にという体勢だ。ここでそれを漏らせば期待を裏切ることになってしまう。たまたま耳にした程度でここまではしないであろうし、洗いざらい話せば奥崎との関係からすべて話すことになるかもしれない。教頭へ仕掛ける前には奥崎の居場所を聞いていたこともある。これは避けられないか……。
「畑原」
 頭の中がいっぱいいっぱいのせいで面談室に谷口が入ってきたことにすぐに気が付かなかった。どうすればいいかと考えている間にその時が来てしまったらしい。
「お前のしたことはまあ、結果的に言えば正しかったんだがな。いろいろ聞かにゃならん」
「……」
「答えづらいのはわかるが、話してくれないか? 事が事だ。おそらく警察沙汰になるんだろうがこちらも状況は把握しときたい」
「警察沙汰……?」
「そりゃそうだろう。教頭のやったことは犯罪だ。盗撮ってだけでも大問題だが他にもある。気持ちいいもんじゃなかったが何枚か写真を見た。どう考えても人のいる時間にカメラを仕掛けられるような場所じゃない。おそらく深夜なんかに忍び込んだんだろう。だとしたら警備会社の設備を掻い潜ってやったってことになる。そうなれば職務乱用の問題もある。非常用の鍵を持ち出してたってことになるからな」
 思っていた以上に話が大きくなってきていた。嫌な汗が背中を走る。これでは余計に本当のことを話すことはできない。話せば自分は助かるかもしれないが奥崎はただでは済まない。奥崎の内心を知った今、それはできない選択だ。
「なあ、話してくれないか?」
 谷口はなだめるような口調で話す。普段の熱血教師とは違う雰囲気に更に事の大きさを痛感した。冷汗は止まらず、もうどうにも動くことができなかった。頭の中はぐちゃぐちゃでもう話せば楽になるぞと誰かがささやく。それが谷口の声だったのか、自分の内面だったのかもわからなかった。
「あ、あの!!」
 職員室に少女の声が響いた。聞いたことのある声だったが、その人物は大きな声を出さないはずだった。
 面談室の入口には古野濱が立っていた。何か決意したような表情だ。
「わ、私が、畑原君に、相談したんです!」
 古野濱の言葉は湧哉にとって救いの手だった。
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