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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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逃走劇

 教頭は大きな音を立てて立ち上がった。勢いあまり教頭の座っていた椅子は壁にぶつかったが、本人はそれを気にも留めない。
 さすがにまずいと思ったのか数人の教員が動いたが既に遅かった。教頭は怒りを隠そうともせずに湧哉に迫り寄ろうとした。
「そんな口の利き方が許されると思ってるのか!!」
「そんじゃ失礼します!」
 湧哉は一礼すると自分に教頭の手が届く前に自分が入ってきた入口を目指して駆け出した。
「……。ま、まてええええい!」
 まさか湧哉が逃げるとは思わなかったのだろう。教頭は一瞬戸惑い顔になったが、すぐに湧哉の後を追いだした。

 湧哉は廊下に出ると自分の教室のある南棟に受けて走った。目指すは中央広間にある南階段だ。目の前の階段を付けばすぐに姿をくらますことができたが、それでは教頭をおびき出せるかはわからない。すぐに姿が見えなくなれば追うことを諦める可能性もある。
 半分ほど走ったところで教頭が職員室から顔を出した。鬼の形相、と言うには迫力が足りないが誰が見ても怒り狂っているのがわかるだろう。わざとらしく地団太を踏んでいるがおそらくあれは素でやっているのだろう。更にこちらに向けて喚き散らしているが、湧哉の元までははっきりと聞こえなかった。仮に聞こえていてもそれに答える気はないのだが。
 西棟から南棟への角を曲がる際にチラッと後ろを見ると教頭はしっかりと追ってきている。相変わらず何かを喚いているせいで広間にいる人々からは注目の的だった。更にその後ろから教員が数人続いている。思った通り秘密裏にと言うのは無理だったようだ。
 南階段にたどり着いた湧哉は3階へと駆け上がった。そして、今度は逆に南棟から東棟を通って北棟を目指す。これを4階でも繰り返した湧哉は南階段を上らず、教室のある廊下へと姿を隠した。最上階の5階まで登らないのは、いざというとき逃げ道が下しか無くなってしまうからだ。
 柱の陰からそっと教頭の姿を盗み見ると4階に上がってきたところだった。湧哉を探して周囲を見回している。湧哉がいないとわかると大きく一度奇声を発した。後から付いてきた教員たちになだめられているようだが全く効果がないようだ。よく見ればその中に谷口の姿もある。
 教頭はそのまま北階段を上り他の教員もそれを追っていった。上に逃げていたのでそのまま5階に向かったと思い込んでくれたようだ。
(よっし。そしたら職員室だな)
 湧哉は上の階の教頭に見つからないよう注意しながら下の階へと降りていった。

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