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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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煽り煽って

「奥崎先生がどこにいるか知りませんか?」
 湧哉は教頭に奥崎の居場所を直接聞いていた。それを見ていた人は余程珍しいのか職員室にいた人のほとんどが横目にその様子を見守っていた。
 突然声を掛けられた教頭は焦った素振りを見せたが、マウスを素早く動かすと湧哉へと向き直った。
「奥崎先生? いったい何の用だい?」
 男にしては高めの声がなんとも耳に障るがこれぐらいはなんてことはない。これから更にボルテージが上がるのだろうから……。
「ちょっと課題で聞きたいことがあるんですけどここにはいないので」
「かだいぃ? そういえば君はあの時の―――」
 やはり視聴覚室でのことを覚えていたらしく教頭の声には力が入り始めた。湧哉の体には緊張が走るがそれを悟られないように気丈に振舞った。
「それで? 奥崎先生はどこにいるんですか?」
「君ねえ、あの間はやってくれたねえ。奥崎先生とはだ~いじな話をしていたんだよぉ。あれのせいで仕事にどれだけ支障が出たと思ってるんだい?」
「そうなんですか。それはすみませんでした」
 完全なる平謝りだった。頭を下げるでもなく、申し訳なさがこもっているわけでもない。こんな態度では咎められることになるだろう。
「なんなんだいその態度はぁ! 君みたいな生徒がいると他の生徒にも影響が出るんだよ!」
「そこまで言われなきゃですかね?」
「そりゃあそうだろう。私はね、教頭なんだよ! もっと敬うものだろう!」
 教頭の声は職員室に響き渡っている。職員室の面々は訝しむような顔をしているが教頭はそれには気づかずに続けた。
「全く、これだから子供の相手はしたくない。目上の者を軽く見るからな。しっかり教育しなおしてやらんといかん!」
「わかりましたんで奥崎先生はどこにいるか教えてくれませんか?」
 この状況で更に教頭を煽る湧哉。孤島は競技場に変化したようで、2人のやり取りに周りはハラハラとしているようだ。生徒の中にはこの状況を楽しんでいる者もいるかもしれないが、教員たちはそれどころではないだろう。
「君は私を馬鹿にしてるのか!!」
 教頭は我慢の限界が来てしまったようで勢いよく立ち上がると思い切り机に拳を叩き付けた。既に息は上がっており、頭に血が上っているのことが伺える。
 ざわつく周囲をよそに湧哉はグッと拳を握りしめた。
(よし! かかった!)
 要はこういうことだ。湧哉は以前教頭の邪魔をしている。邪魔した人物が目の前に現れたとなれば、人間いい気はしないだろう。そこをさらに煽ってしまえば教頭ならばすぐに頭に血が上り、ゴタゴタ騒ぎになるに違いない。ほどよく怒らせたところで逃げ出せば、パソコンをそのままにして教頭は追ってくるだろう。その後、教頭よりも早く職員室に戻りパソコンから今しがた見ていたものを探し出せばいい。自分はおかしな生徒として周りから見られるだろうが、相手が更におかしな教頭であること、これが成功すれば事が全て好転すること。それらを考えればやってみる価値はあった。
「いやしてませんよ。何を勘違いしてるんです?」
「お、お前ぇ、いい加減にしろよ!!!」
 遂に教頭が机から動き出した。なるべく遠くまで逃げて教頭を巻かなければならない。湧哉は頭の中で逃走経路を組み立てるのであった。
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