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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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原因は自分?

 湧哉が教室に帰ってくると、席についてカリカリとペンを走らせている生徒がほとんどだった。あの西谷も騒がずに静かに机に座っている。
「次、奥崎先生の授業か」
 みんな必死に課題をやっているのだ。だが、今更やっても終わるはずのない湧哉は授業の準備だけすると課題はやらずにペラペラと教科書をめくっていた。完全に開き直っている。
「ハタハター課題終わってんの?」
 隣の席の結が掛けてきた。彼女も他のクラスメイトと同じようにペンを動かしている。
「いやー、ぜんっぜんっやってない」
「それ……大丈夫なの?」
「大丈夫かそうでないかなら大丈夫ではないな。でも今更あがいてもどうしようもないし。どうせ課題が上積みされるなら今やらないほうが得じゃないか?」
「あんた、今回は時間考えてやるって言ってたじゃない」
「どうせ、俺は考えなしですよー……」
「……?」
 結は普段と違う湧哉の反応に戸惑ったのか何も言い返しては来なかった。
 一方湧哉はというと奥崎に考えなしといわれたことがまだ気になっているようだ。
 今回の場合は自分の成果が認められなかったことも大きく関係している。
 デジカメを持ってきたのは咄嗟の判断で特に考えがあってのことではない。頭の中で点と点が繋がって行ったことだ。ほとんど反射に近かった。今まではそれで何とかなっていたが今回はそうはいかなかった。自分の甘さを認識させられた。その事がショックだった。
(俺、なんでこんなに必死になってるんだ? 別に俺が必死になる必要ないだろ? やらされてるだけなのに……。それに今回のことでもうやらされることもなくなるかもしれない。奥崎先生だってこのことがばれたらまずいはずなんだが)
 今回のことがきっかけで奥崎は自分を使わなくなるのではないか? そんなことを考えていた。そうなれば自由の身になれる。そう考えれば悪いことでもない。あくまで使わなくなればだが……。

 そんなことを考えている間にチャイムが鳴った。休み時間は終わり授業が始まる。
 ……。
 だがおかしい。授業が始まったというのに担当である奥崎の姿はない。普段ならばもう教室にいて授業を始めているはずだ。その奥崎が来ないというのは一体何ごとなのか……。
「先生はー? 誰かなんか聞いてる?」
「いや、何も聞いてないけど……」
「どうしたんだ? 自習になったのか?」
「こんなこと奥崎先生の授業じゃ初めてだよな」
「課題終わらすチャンスだ!!」
「あの人も遅刻するんだね。ちょっと親近感わいちゃうかも」
 クラスメイトの中にも奥崎が現れないことを疑問に思うものもいた。
 誰かが言ったようにこんなことは初めてだ。勉学に対して厳しい奥崎は授業のことでは自分にも厳しい。それは授業の内容からもわかる。その奥崎がなんの連絡もなく授業に来ないのは一大事だ。もしくは―
(来たくても……来れない……?)
『デジカメは私が預かる』
 湧哉は奥崎の言葉を思い出した。もしあのデジカメが誰かに見つかったのだとしたら……。もしそうなら原因は湧哉だ。湧哉がデジカメを持ち出さなければ……。
(考えても仕方ないか……)
 だからといって今更湧哉に何かできるわけではない。覗いてしまったことをネタに強制されていただけなのだから。湧哉がなにかする義理はない。
 湧哉は机の上で腕を組むとそれを枕代わりにして目を閉じた。

 チャイムが鳴ってから五分ほど過ぎた。相変わらず奥崎は教室に来ない。
 クラスはカリカリとペンを走らせるか友達と会話をする生徒に分かれていた。そのどちらにも属さない湧哉に結が声を掛けてきた。
「ハタハタ、あんたほんとになんも聞いてないの?」
「なんで俺が聞いてるんだよ」
 湧哉は体を起こさず顔だけを結に向けて答えた。結はすでにペンを置いており頬杖をついていた。
「昼休みに奥崎先生と会ってたんでしょ?」
「なんで知ってるんだよ……」
「あ、やっぱりそうなんだ。なんか先輩が話してるのをたまたま聞いただけ。珍しく二年の階にいたから気になっちゃって聞き耳立ててたわけよ」
 やはり噂をする者はいたらしい。しかも二年の教室が集まる下の階にわざわざ来て話すとは何ともいやらしい。
「学食が混んでて相席になっただけだから授業に関しては何も聞いてない」
「ふーん……」
 結はどこか納得していない風だったが、学食でのことはこれ以上聞いてこなかった。その代りに湧哉のほうをじーっと見つめると一言つぶやいた。
「じゃあ奥崎先生の様子見てきてよ」
「は? 今の流れでなんでそうなる」
「みんな課題をするか話しするのに夢中だし。ハタハタはどっちもしてないしいいじゃん」
「別に何もしてないのは他にもいるだろ」
「奥崎先生と二人でいたこと広めるぞー」
「お前……」
 呆れとも諦めとも言えない表情の湧哉に対して結はにっこりと笑った。
「お願いね♡」
「似合わないことしてんじゃねーよ」
「何? 私に笑顔が似合わないって? なかなか挑戦的ね。行くの? 行かないの?」
 再びにっこりと笑う結だったが今度は手がグーに握られていた。
「行くよ、行きますよ……」
 半分脅されている形だが湧哉はゆっくりと席をたった。
 頭を乗せていたせいで右腕が少し痺れる。そんなに長い間は同じ姿勢ではいなかったはずだが……。
 痺れて右手は動かせないので教室の扉を左手で開けると湧哉は一人静かに廊下へ出た。
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