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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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予想外の

 古野濱以外から教頭に情報が漏れるということはありえない。湧哉はそう考えていた。奥崎が教頭に話すことはまずありえず、湧哉も同じだ。悠は昨日から湧哉と一緒におり、教頭とは接触していない。携帯を使えば可能ではあるが記念館を残そうとしている悠が教頭にそんなことを伝えるわけもない。
 そうなるとやはり古野濱しか考えられないのだ。湧哉も彼女がそんなことをするとは思いたくなかったが、他には考えられなかった。
「ほんとに話してないですか?」
「う、うん。話してないよ……」
 今度は責め立てるように聞いた。動揺している様には見えたが何かを隠しているというふうではない。単に湧哉の口調の変化に困惑しているようだ。
「も、もしかして何か問題でもあったかな? 私、何か、しちゃった?」
「そんなことないですよ。ハタハタどうしたの? 眉間にしわ寄せちゃって」
 何も知らない悠には湧哉の行動は奇妙に映ったようだ。あまり一度に聞くのは良くないだろうと、とりあえず今は様子を見ることにした。
「すみません、ちょっとからかってみたくなって」
「そ、そっか。私何か迷惑かけちゃったのかと思った」
「ハハハ、すみません。それで何がおすすめなんでしたっけ?」
「ハタハタ、話聞いてなかったの?」
「わるいわるい」
 湧哉のごまかしで安心したのか古野濱はホッと息をついた。
 その後湧哉と悠はそれぞれメニューを決めると店員を呼んで注文を伝えた。湧哉はツナトーストとココアを、悠はサンドイッチとコーヒーを注文した。
「卒業生に連絡して記念館の取り壊しについての意見を聞くっていう話だけど、門紅君はどうしてこんなことをしようと思ったの?」
「昔、兄に連れられてよく遊びに行ってたんです。小さい僕にとってあそこは憧れの場所でした。生徒の皆さんはすごく良くしてくれて。僕もこんな風になろうって思ったんです」
「そっか、思い出の場所なんだね」
「はい」
「私も旧校舎好きだったんだ。確かに今の校舎も素敵だけど、旧校舎にはなんていうか……温かみがあって落ち着くっていうか。長い歴史の中たくさんの人が学んできた場所でしょ? 一年しか通わなかったけど、そういう人たちの思いが詰まってる場所だなって感じたもん」
 古野濱は話し終るとゆっくりとカップを手に取りコーヒーを口に含んだ。
 話を聞いた湧哉の考えは揺れていた。旧校舎のことをここまで言える人物が教頭と繋がっているだろうか? 湧哉の問いに動揺は見られず普段の行いからもほど遠い。そもそも、視聴覚室の一件のことを思い出してみればそんなことはないとすぐにわかるはずだった。消去法で古野濱を疑っていたが、何か他に見落としている箇所があるのかもしれない。しかし、それはすぐ目の前に現れた。
「だからね、一年生最後の終業式は忘れられないの。校長先生の最後の言葉。『君たちは古巣から飛び立ち、新しい環境で励んでくれ』って。もう少し言い方があったんじゃないかなって思うもん。今日のお昼だって『古巣よりも新校舎の方がいいだろう』って笑いながら言ってて。あんなに人当たりが良いのに―――」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「へ? あ! ごめん私また一人で―――」
「いや! そうじゃなくて! お昼に校長がなんて言ってたって言いました!?」
「古巣よりも新校舎の方がいいだろうって」
「それって―――」
「奥崎先生と話をしてる時だよ。話してる途中で突然現れたからびっくりしちゃった」
「まさか……校長が……?」
 予想外の人物の登場に湧哉は混乱していた。今までのことがぐるぐると湧哉の頭の中をまさぐっていた。
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