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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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古野濱の居場所

 昨日の昼休みにあった騒動を鎮めた人物、阿良田 光。奥崎が湧哉を使って行っていた行為を知っており、それに対し間違っていると指摘もした。正論を突きつける言動は悠と似ている。しかし、阿良田は湧哉のことを知っているが湧哉は彼のことを全く知らない。こちらのことは筒抜けなのにも関わらず、こちらは相手のことを全く知らないというのはなんだか気持ちが悪かった。
「3年生みたいだけどハタハタ知ってる人?」
「まあ、一応……」
 あまり顔の広くない湧哉に先輩の知人がそれほどいるとは思えなかったのだろう。事情を知らない悠は疑問に思ったらしい。知り合いと呼ぶにはあまりにも関わりのない相手に湧哉の返事は曖昧なものとなった。
「君は初めましてか。阿良田 光だ。よろしく」
「門紅 悠です。こちらこそよろしくお願いします」
「門紅? そうか君が……」
「僕の事知ってるんですか?」
「君のお兄さんの話はよく聞いていてね」
「そうですか」
 微笑む阿良田と対照的に悠は顔色を全く変えなかった。悠は兄である集のことをあまり話したくはないようだ。二人の間柄を考えれば当然か。
 それにしても、奥崎と親しく門紅 集のことも知っているということは阿良田も記念館の件にかかわっていたのだろうか? いや、湧哉と奥崎の関係を知っていた時点でそれは明確だ。湧哉に犯罪すれすれ行動をさせたと他の教員に知れれば奥崎もただでは済まなかったはずだ。そのことを知っていたということは奥崎の協力者だったと推測できた。
「しかし畑原。君が図書室に来るようには見えなかったな」
「ちょっと人を探してまして。そう言えば古野濱先輩と同じ部活って聞きましたけど、どこにいるか知りませんかね?」
「同じ部活だって?」
 一瞬、阿良田の雰囲気が変わった気がした。穏やかだった表情は目元がきつくなり口を一文字に結んだ。湧哉は何が気に触れたのか始めはわからなかったが、あることを思い出した。
(そう言えば古野濱先輩が黙っててくれって言ってたな……)
 一昨日の古野濱との下校時、口を滑らせてしまった古野濱から湧哉はそう頼まれていた。阿良田にばれたら怒られると……。湧哉もうっかりと口を滑らせてしまったのだ。
「古野濱を探しているのか。いったいなんの用なんだ?」
「えーっと、それはですね……」
 滑った口はそのまま転倒しているのか言いよどんでしまった。彼女を探しているのは、教頭と関わりがあるのか問うためだ。可能性の話であり確証がないだけに、そのことを阿良田に伝えてもいいのか湧哉は悩んでいた。全く関係のない人物だったのならばごまかすこともできただろうが、阿良田はそうではない。奥崎、古野濱ともに面識がある。疑惑がさらなる誤解を招くかもしれないのだ。迂闊な判断はできない。できないのだが……。
「文化祭で僕のことを手伝ってくれるそうで、その挨拶がしたかったんです」
「文化祭で?」
「はい。人手が足らないので」
 悠にも古野濱を探す理由があった。これならば嘘にはなっておらず、話がこじれることもない。
 阿良田が確認するように湧哉に顔を向けた。湧哉が首を縦に振って答えると阿良田は少し気を緩めたようで一息つくと阿良田は口を開いた。
「古野濱のイメージからここに来たのかもしれないが、あいつはどちらかと言えば人ごみに紛れたいタイプだ」
「人ごみに紛れたいタイプ?」
「注目されることは嫌がるが、自分ひとりだけでも落ち着かない。だから予定のないとき古野濱は駅前の喫茶店に行く。行ってみろ。急げばまだいるはずだ」
「あ、ありがとう、ございます」
 どうなることかとも思ったが阿良田は細かい店の場所までもしっかりと教えてくれた。
「それじゃあ俺達はこれで」
「時間を取らせてしまってすみませんでした」
「ああ」
 挨拶を済まし、湧哉と悠は図書室の出口に向かった。扉を開けると外の喧騒が耳に入り込んでくる。悠を先に廊下に出し後に続いて湧哉も出ようとした時だった。
「畑原!」
 図書室だというのに阿良田は少し大きな声で湧哉を呼び止めると駆け寄ってきた。すると今度は小声でこう言った。
「部活のことは誰にも言うな」
「は、はい。わかりました」
 阿良田は落ち着いた様子だったがはっきりとした口調でそう言うと湧哉を廊下へと送り出した。
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