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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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疑いの目

 時刻は午後4時を過ぎた。クラスメイト達の集中力も切れ始め、手よりも口が動いている者の方が多くなっていた。
「今日はこのまま終わりっぽいね」
「これ以上は皆動きそうにないしこのままお開きだろうな」
 屋台、調理係ともに決まることは決まっており、作業にも取り掛かることができている。残り期間は1週間あるのでまだ焦る必要もないだろう。
「ハタハタはまだ動けるよね~?」
 湧哉の言葉に悠はいたずらっぽく茶々を入れた。湧哉はブスッとした顔をすると疲れた表情で答えた。
「わかってるよ。これから記念館だろ?」
「よかった。もしかしたら忘れてるかと思った」
「俺はそんなに忘れっぽいか?」
「う~ん、そんなことはないかな」
「あ、そう……」
 ニコニコとしながら話す悠は楽しそうだったが、先ほどからからかわれっぱなしの湧哉はがくりとうなだれた。
 その後、澤が今日は終わりにしようと皆に声を掛けると今日の集まりは終了した。教室から出て行く生徒がほとんどだったが幾人かは友達と机を囲んで雑談をしていた。
「私、今日は何もしなかったなー」
「そうだね。結は教室に来てから話してるだけだったよね」
「明日はカツサンドの試作やるらしいから早めに来てくれよ。門白も当日の調理当番なんだから」
「食べ損ねるのは嫌だから絶対行く!」
「そっちかよ……」
「ハハハッ。じゃあまた悠の家でね。私は部活に行くよ」
「おう。頑張ってな」
「気負いすぎないでね。文化祭なんだし楽しくやらないと」
「まさかあんたたちに心配されるとはね。ありがと、行ってくるよ」
 驚きの表情の後、しっかりと礼を述べると結は教室を出て行った。昼間に教室に来た時はだいぶ凹んでいたが、ため込んでいたものを吐き出したことで気が楽になったようだ。あの調子なら心配はいらなそうだ。
「それじゃあ奥崎先生に都合がいいか確認しに行こうか。助っ人先輩のことも気になるし」
「そうだな。それじゃあ職員室行くか」


 時間帯もあってか職員室内にはそれほど人はいなかった。少数の生徒と教員がいるだけだ。
 目的の奥崎もそこにおり、自分の机でパソコンをいじっていたが湧哉と悠が職員室に入ってくるのに気が付くとパソコンを閉じてこちらにやってきた。
「クラスの方は終わったのか?」
「はい。今日の部は終わりました」
「先生。古野濱先輩はどうでしたか?」
「古野濱は引き受けてくれるそうだ。私にできる事ならと張り切っていたぞ」
「そうですか。よかった」
「奥崎先生はこの後ご都合どうでしょうか? まだなら待ってますけど」
「ああ……それがだな……」
「?」
 奥崎は職員室の奥へと目を逸らした。視線の先は教頭の席。そこには机の主が座っている。視線を戻した奥崎は少し小声になっていた。
「急ぎの仕事を任されてしまってな。今日は記念館は開けられないかもしれない」
「そんな……。せっかく人数が増えたのに……。鍵だけ他の先生に頼めませんか?」
「開けることはできるが君たちが終わる時に鍵を閉めなければならないからな。そこまでやってくれる人は今はいないだろうな……」
「田島先生はいないんですか?」
「今日は出勤していないんだ」
「そうですか、それじゃあ今日はお借りした連絡先に電話してみます」
 悠は奥崎と一緒に入れないことが残念だったのか肩を落とした。一方の湧哉は奥崎が来れない理由が気になった。教頭の席を見たのは何か意味があるはずだ。
 湧哉は奥崎の顔を見つめ本人がそれに気が付くと視線で教頭を指した。奥崎は下唇を少し噛みながら小さく頷いた。やはり教頭が一枚噛んでいるのだ。
(こんなタイミングよく邪魔できるか? 昨日の今日だぞ……。知ってるのは俺に門白、それに奥崎先生本人だろ? 教頭に漏れるわけはないはずなのにいったいどうして……。いや、待てよ? でもそんなわけ……)
 もう一人そのことを知っている人物がいることに湧哉は気が付いた。今日奥崎が助っ人に頼んだ相手だ。まさかとは思うがこれは確かめずにはいられなかった。
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