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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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課題進行

 結と藤間が戻ってきて約1時間ほどが経った。時刻は夜の11時過ぎだ。
「うーん……」
「う~ん……」
 今この部屋では2種類の唸り声が聞こえている。
「うーん……なあここの問題なんだけどさ」
「ここはね―――」
 片方は課題に励む湧哉のものだ。始める前とは打って変わって落ち着いた様子で取り組んでいる。悠もしっかりとそれをサポートしている。始めは悠が手を貸すまで一人悩み続けていた湧哉だったが、今では自分から質問するようになった。これによって無駄に考える時間が減ったおかげで、進みが今までと変わっていた。既に課題を始めてから4枚目に突入している。残りはまだまだあるがこのペースならば日曜には終わりが見えるかもしれない。
 そしてもう一つの唸り声はと言うと―――
「う~ん……」
 湧哉と悠とは机を挟んだ反対側で床に並べられたトランプを見つめながら唸っているのは結だ。更にトランプの向うには藤間が座っている。
「これと、これ、かな? あ……」
 やっと決心したように結はトランプを2枚めくった。めくったカードはハートの8とスペードのキングだ。
「また間違えた……」
 結が表にしたカードを元に戻すと今度は藤間が手を動かし始めた。
「惜しかったですよお嬢様。キングは8の隣のこのカードです」
 藤間は今結がめくったスペードのキングとハートの8の横にあったカードをめくった。
「また取られた……」
 めくったカードはダイヤのキングだ。藤間はスペードとダイヤのキングを自分の足元へと置き、再びカードをめくりだした。
 結と藤間の二人は神経衰弱をしていた。悠の言った通り、藤間が結の相手を務めることで湧哉の課題に支障が出ないような形となった。神経衰弱ならば静かに遊ぶことができるということで藤間が提案したのだ。しかし、あまり得意でないのか結は連戦連敗だ。
 結がいるのでは進むものも進まないと思っていたが、時間が経つにつれて湧哉は集中していった。結が悔しがって声を上げることもあったが、対戦相手である藤間がうまくなだめることで大騒ぎになることはなかった。
「えーっとていうことはこの数字が力でそれに動く距離をかけると仕事になるわけだな」
「そうだよ。逆に仕事と距離がわかっててどのくらいの力が掛かっているか知りたいときは力×距離=仕事の式から力=仕事/距離で求めることができるよ。距離がわからない時も他の二つがわかっていれば距離=仕事/力で求められるから―――」
「ちょっと待ってくれ。わかりかけてたのにそんな説明されるとまたわからなくなる……」
「それならやめとくけど。でも今の話はただの方程式だから中学生でもできるよ」
「一言多いんだよ」
 とは言いながらも湧哉は悠の説明を頭の中で整理していく。力や距離などと言われるとピンとこないが、方程式と言われるとただの掛け算と割り算と言うだけで特に難しいというわけではなさそうだ。 この公式を覚えていればテストで赤点をとることもないだろうが、今はまだ9月の後半だ。渡ヶ丘高校では3学期制で大きなテストは学期末だけになっている。12月の中旬に行われるテスト期間まで湧哉の頭にこのことが残っているかどうかは怪しいところなのだが、課題をこなすことは決して無駄にはならないだろう。
「いいペースだしそれが終わったら少し休憩にしよっか。ずっと集中してたら疲れちゃうしね」
「思ったより進んでるしそうするか」
「じゃあお茶の準備しとくよ」
「それでしたら私がやりましょう」
「いや、僕がやるよ。藤爺はそのまま結の相手してて」
 このまま続けても湧哉の集中はそのうち切れてしまうだろう。適度に休憩をとることで集中が切れないようにするのだろう。湧哉の頭にはそこまではないだろうが、悠はしっかりと考えていたようだった。しっかりと結の相手を藤間にさせるあたりは抜け目がなかった。
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