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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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客室にて1

 家に上がった湧哉は二階の客室に通された。十畳の畳部屋に長机が1つ置かれ、その横には座布団が二枚ずつ置かれている。奥の出窓からは庭が一望でき、先ほどは見えなかった屋敷も視界に入った。湧哉一人が使うには広すぎるぐらいの部屋だ。
「なにかお飲み物でもお持ちしましょう。ゆっくりなさってくださいね」
「どうもです」
「では、失礼いたします」
 藤間は荷物を置くと軽く会釈をしてから部屋を出て行った。課題をやりに来たわけだが、悠が来ないうちから始める気にもならなかったので、湧哉は座布団に腰を下ろして床に寝転がった。このまま何もしないでいると寝てしまいそうだがそうなる前に藤間が戻ってくるだろう。それならばこのまま少し寝てもいいだろうと思っていた―――のだが、 
「ハタハター! よく来たねい!!」
 威勢のいい声とともに部屋の襖が開いた。湧哉は藤間よりも先に悠が来たのか思ったが、考えてみれば藤間が出て行ったのはたった今だ。こんなに早く戻ってくるわけがない。湧哉はそのままの姿勢で顔だけをそちらに向けた。
「…門白」
「ヤッホー」
 そこにいるのはもう一人のユウ、門白 結だった。ジャージ姿で手を振る彼女はニコニコと笑っている。髪はしっとりと濡れているところを見るとどうやら風呂上がりのようだ。
 湧哉は横になっていた体を起こした。
「何しに来たんだよ……」
「ハタハタが来るって聞いたから遊びに来たわけよ」
「いくら同じ敷地だからってお前……。これから課題やるんだぜ。そんな時間はない」
「いいじゃん。どうせ悠が来るまでやるつもりないでしょ?」
「うっ……」
「あいつはお風呂に行ったところだからしばらく来ないと思うし」
 結は机の反対側に胡坐をかいて座ると頬杖をついた。
「私一人っ子じゃん? 家にいても相手がいないからさ。友達来てるんなら混ざりたいんだよねー」
「素直に寂しいって言えよ」
「べ、別にそう言うんじゃないし!」
「どうだかー」
 とは言ったもののこのまま待っているのは湧哉にとっても退屈だ。話し相手がいるのはいいかもしれない。
「そう言えば門白は部活で何やるか決まったのか?」
「うーん、なかなか決まらないんだよね~。去年は先輩がいたからよかったけど私たちの代はうちのクラスでいう澤ちゃんみたいな人がいないんだよね」
「そう言うのは部長がやればいいんじゃないのか?」
「みんな自分が自分がって言うからもうめちゃくちゃで……。譲り合う心が全くないのよ」
「なるほどな……」
 湧哉たちのクラスで言う高坂がたくさんいるようなものだろうか。みんなが主張するのみで全くまとまらない。きっと陸上部の部長は苦労しているに違いない。
「ハタハタたちは気楽でいいよね~。悠とあんただけなら他の人の事なんて考えなくていいし」
「あ、あはは。そ、そうだな」
 今はそこに奥崎も加わっている。二人だけという点は間違っているが、それでも今と深く考えることはなくなったので訂正はしないでおく。
 湧哉の奥崎へ対する不信感も無くなっている。今のメンバーは湧哉にとってやりやすい人が集まっているようだ。
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