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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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行動開始

 古野濱に声を掛けることでまとまった後、湧哉たちは意見集めのための電話を開始した。
「もしもし、新井さんのお宅ですか? 自分は渡ヶ丘高校の生徒なんですが旧校舎の取り壊しについての意見集めをやってまして。え、卒業生じゃない? そちらは新井重信さんじゃ……え? 息子? えーっとそれじゃあ重信さんはいらっしゃいますかね?」
 湧哉は慣れない作業に手間取っていた。通話をすることはあるが、今回のようにかしこまった電話をすることは滅多になかった。それに比べ奥崎と悠は手慣れた手順で作業をこなしていた。
「安藤さんのお宅でしょうか? 私、渡ヶ丘高校の教員を務めております奥崎と申します。安藤浩太さんは御在宅でしょうか? いらっしゃらないですか……。わかりました、また連絡させていただきます。失礼いたします」
「もしもし、渡ヶ丘高校の生徒、門紅と言います。川上悦子さんはいらっしゃいますか? あ、ご本人様ですか。それでなんですが、旧校舎の取り壊しについて―――」
 湧哉よりも進みが軽やかだ。奥崎は教員としての経験上外への対応もしてきたであろうし、悠の手際が湧哉より優れていたからといって今更驚くほどの事でもないだろう。
「えーっとそれじゃあ重信さんとしては取り壊しには反対だったということですか。はい。わかりました。ありがとうございました」
 湧哉は受話器を置き、意見を聞きながらとったメモを見やる。湧哉が30分で電話をかけた数は6回。しかし、電話が繋がったのはそのうちの半分だった。
 湧哉が次の連絡先を探している間に他の二人も受話器を置いた。全員がひと段落したところで結果を報告しあうことにした。
「やっぱり一期生だとあんまり連絡が取れないですね。8件中5件連絡が付きました。その5件中1件は取り壊されたことを知らなかったそうです。知っていた方々は反対のようでしたけど、知らなかった方はどちらでもいいという意見でした」
「俺は6件中3件で、連絡がついた人は皆取り壊しの事知ってたみたいだ。それと全員反対側」
「私は10件かけたが5件だけだ。取り壊しのことは全員が知っていた。賛成は1件に反対は4件だ」
「24件中13件ですか。40年前ともなればこんなものですかね」
「そうだな。しかし、30分で24件か。このペースで全てを回すのは無理だな……」
 24件もすべて意見を聞けたわけではない。実際には30分で13件しか集められていない。
「門紅ー。これ、二人じゃ絶対終わらなかっただろ……」
「難しかったのは事実だけどまだわからないじゃない? 数をこなしていけば手際もよくなるだろうし」
「手際が良くなってどうにかなる量じゃないだろ……」
 今回の進み具合から考えるに湧哉のいうことは的を得ているはずだが、悠は大丈夫だっただろうと言う。全く根拠はないのだが。
「始まったばかりだが今日はここまでにしよう。18時を過ぎてる。ここも閉めないと」
 時計を見ると18時半になるところだった。空も暗くなってきている。
「そうですね。また明日にしましょう」
「これから寮まで帰るのか……だるぅ……」
「僕は自転車だから先に帰ってるよ」
 記念館は新校舎を挟んで寮とは反対方向だ。湧哉は徒歩でここまでやって来た。帰りは更に遠い。悠は自転車通学なのでここまで来るのにそんなに時間がかからない。
「それなら私が送っていこうか?」
「え?」
「ええええ!?」
「なんだそんなに驚くことか?」
 湧哉の反応は普通だったが、悠の驚き方は大げさと言えるほどだった。これが悠以外だったのならここまで声を上げることはなかっただろう。
「い、いいんですかね?」
「車なら大した距離じゃないからな。問題ない」
 奥崎は特に問題がないようだったが湧哉を見る悠の目は異常なほど鋭かった。 
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