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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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ただでは終わらない

 昨日同様放課後の職員室は人が多かった。人が溢れかえっているわけではないが机と机の間の通路は人で塞がれて通れないところもあった。そんな状態なので湧哉と澤は少し遠回りをしながら井ノ瀬の席に向かった。
 井ノ瀬は書類に目を通しており、二人が到着したことにすぐには気が付かなかった。
「井ノ瀬先生」
「あら、二人とも。いらっしゃい」
 井ノ瀬は澤の声に振り返ると手に持っていた書類を机に置き、書類を読むためにかけていた眼鏡外した。
「クラスの役割分担、終わったのね」
「はい。まとめたので提出に来ました」
 澤は鞄からファイルを取り出すとそこから一枚ルーズリーフを外して井ノ瀬に手渡した。それを受け取った井ノ瀬は手に持ったままだった眼鏡をかけなおした。
「当日の担当が少ないですけど、そこは私がフォローに入るので大丈夫だと思います。それから食材の準備は滝君がお家の方に掛け合ってくれるそうです」
 井ノ瀬が確認している間に澤は説明を加えていく。それを聞きながら井ノ瀬は手渡されたメモに澤の説明を書き足していった。
「明日はどうするの? みんな登校するのかしら?」
「全員参加ではないですけど、どちらのグループも集まると言っていました。平日だと学食も平常の業務がありますから日曜のうちに試作品を作って試食、それから屋台をどうするかは明日決めて決まり次第作り始めます」
「私は何かやることはある?」
「包丁やまな板の貸し出しができるように手続きをお願いします」
「わかったわ。明日には使えるようにしておくから」
「ありがとうございます」
 てきぱきと報告をする澤はどこかの秘書のようだ。ここまで一人でこなしてしまうと湧哉に実行委員を頼む必要があったのだろうかと思ってしまう。
 井ノ瀬はメモに目を通し終わると澤と湧哉が来るまで手にしていた書類をトントンと角を揃えてまとめ始めた。その様子を見て澤が気を使って井ノ瀬に声を掛けた。
「もしかして忙しかったですか?」
「この後急な会議が入っちゃってね。書類に目を通すように言われてるんだけど、まだ終わらなくて」
「そうだったんですか」
 井ノ瀬は澤のメモと揃え終わった書類とをそれぞれ分けて机に並べた。先ほどからやることのない湧哉はその書類に目を向けた。内容が気になったわけではなく反射的に見てしまっただけだったがそれを見た湧哉は目を疑った。
(記念館の取り壊しについてだって……!?)
 書面の議題には記念館の取り壊しについてと書かれていた。奥崎担当の記録整理が終わるまでは取り壊されないはずだが、もうそんな話が出てきているのか。
 湧哉は辺りを見渡した。書類に目を通している教員は何人かいたが、そしてその中に奥崎の姿はない。奥崎が関係している内容だというのに彼女はいないのだ。
「それじゃあ私たちはこれで―――」
「井ノ瀬先生!」
 この場を離れると挨拶をしようとした澤を湧哉が遮った。
「は、畑原君!?」
「あら? どうしたの?」
 突然声を上げた湧哉に澤は驚いたようだが井ノ瀬は何事もなく反応した。
「その会議って、先生は全員出席するんですか?」
「いいえ。外からのお客さんとの会議だから大人数じゃないのよ」
「奥崎先生は!?」
「奥崎先生? 奥崎先生ならさっき外へ出られたと思うけど」
 そう言えば悠が資料を持ち帰ると言っていた。誰からとは言わなかったが奥崎からだろう。ということは彼女は今、記念館にいる。この後の会議に参加するならこの場にいるはずなのに……。
「ちょっと失礼します!」
 湧哉はスマートフォンを取り出すと奥崎に電話をかけ始めた。
「畑原君! 職員室で電話はなんて―――」
「緊急事態だ!」
 澤の制止も聞かずにそのままかけ続けるが奥崎は電話に出ないまま留守電になってしまった。一度通話を切り、今度は悠に掛けるがこちらも出ない。おそらく二人とも移動中なのだろう。
「門紅も出ない。どうしたら……」
 一人で慌てる湧哉に今度は井ノ瀬も驚いていた。澤と顔を見合わせるが澤も首を横に振りわからないと答える。それもそのはずだ。澤とは全く関係のないことなのだから。
「あらら? あれは―――」
「どうしたんですか?」
 井ノ瀬が何かに気が付いた。湧哉はそれに気が付かず、澤は今度は何事かと聞いた。
 職員室の入口を見ている。誰かが入ってきたのだ
「門紅くーん」
「!!」
 井ノ瀬は澤の質問には答えず、ひらひらと無邪気に手を振りながらその相手の名を呼んだ。
 門紅が呼ばれたことに湧哉は落ち着きを取り戻した。彼がいるということは奥崎も一緒にいるのではないかと思ったのだ。昨日の教室で悠との会話中に結が忘れ物を取りに来たように戻ってきたのだと。
 湧哉はゆっくりと井ノ瀬の見つめる先を視線で追った。だが、視線が追いついた時、湧哉は混乱に陥った。なぜなら―――
「お久しぶりです、井ノ瀬先生」
 ―――扉の前で井ノ瀬に手を振り返しているのは湧哉の知っている人物ではなかったのだから。
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