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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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謝罪と意味

 奥崎と湧哉は学食の端の席に腰を下ろしていた。
 湧哉は購買で買ったおにぎりにはまだ手を付けておらずお茶ばかり飲んでいる。一方、奥崎の前には裏Cセットなるものが置かれている。白米に味噌汁、それとなぜか肉じゃがだ。これは定食なのだろうか?
 奥崎は机に手を突くとゆっくりと頭を下げた。
「畑原、いろいろと無茶をやらせてすまなかった」
 謝罪の言葉の後に顔を上げた奥崎は真剣だった。普段の素っ気ない雰囲気とも違い、必死な様子でもある。
 その様子に内心では少し驚きながらも気になっていたことを聞いた。
「奥崎先生の目的って一体何なんですか?」
 自分がやらされていたことの意味。何も知らされずにただ行ってきた行為にどんな意図があったのか。
「私が記念館の資料をデータ化しているという話はしたな」
「えーと、門紅と記念館に行ったときですよね?」
「そうだ。その作業がすべて終われば、あの記念館は取り壊される。私の目的はそれをやめさせることだ」
「記念館が取り壊される!? あそこは建物としても価値があったから残したんじゃ―――」
「実際には田島先生たっての願いで資料の一時保管所として残されただけだ。あの一帯は町の中心から離れているが、林を切り崩せばそれなりの広さがあって買い手がいるらしい。学校側としては使えない土地に経費を使うよりもさっさと売り払ってしまいたいんだよ」
 奥崎の仕事が終われば記念館は取り壊され、旧校舎跡地にはそれとはまったく関係のない何かが建つことになる。そうなれば数年後にはあそこに旧校舎が建っていたことは生徒の間では話題にも上がらなくなるだろう。悠の努力も泡となって消えるかもしれない。
「だから私が資料の整理担当を買って出た。なるべく、その期間を延ばせるようにな。だがごまかしも限界に来ている。最近は教頭からの圧がすごくてな」
「それじゃあ視聴覚室のあれは記念館の資料のことで……」
「しつこいときは授業前にもあった。授業を自習にしたことがあっただろ? 教頭は周りが全く見えていないからな。なりふり構わずだ」
 担当授業に来なかったのはそう言う理由があった。湧哉が奥崎を探して職員室を訪れた時、谷口が教頭が旧校舎関係で奥崎と話をしていると漏らしていた。ということは教員には記念館が取り壊される話がされているということだ。
「それじゃあ俺がやってたことは何だったんですか? 女子更衣室とか夜の校舎に忍び込んだのは……」
「あれは教頭を黙らせる材料を探していたんだ。旧校舎の取り壊しは教頭が騒ぎ立てているだけだ。教頭の口を塞げればかなり前進する。いや、したはずだったんだが……」
 疲れた表情を見せる奥崎。彼女なりに力を尽くしてきたのかもしれない。たまたま弱みを握った湧哉を使うぐらいだ。だが結果は思ったようにはいかなかったらしい。
 奥崎の目的も自分のやらされていたことの意味も概ね掴めてきた湧哉。だが、まだわからないことがあった。
「奥崎先生がそこまでする理由って何なんですか?」
 奥崎が旧校舎にこだわる理由だ。奥崎は赴任してからまだ5年だ。2年前に取り壊された旧校舎にはたったの3年しかいなかったはずだ。下手をすれば教職を辞さなければならなくなるかもしれないというのにそれだけの期間しかいなかった校舎にそこまでするとはとても思えなかった。
 
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