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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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西谷の先輩

 湧哉は予定通り昼食を買いに購買へ向かっていた。
 昼休みに会議があることを考えるとさっと食べられるものがいいだろう。
 南階段を使って二階から降りてくると購買に入っていく奥崎の姿が目に入った。
「うげえ……」
 奥崎はどう思っているかわからないが、湧哉としては用がないときは顔を合わせたくなかった。
(まあ購買の用事なんてすぐ終わるだろうしここで待ってるか)
 昼休みなら購買も激戦区だが、この時間ならばそこまで急ぐ必要もない。
 完全に待つ体制に入った湧哉だったが後ろからの陰に気が付かなかった。
「畑原ーー!!」
「ゲッフ!?」
 ベシッ!! っと頭を叩かれた。そのまま前のめりになったが何とか姿勢を整えて加害者の名を呼んだ。
「西谷!!」
「お、元気いいな畑原!!」
「良いわけあるか!! 毎回頭叩きやがって! いい加減にしろよ!」
 先ほどの休み時間に続いて頭に衝撃を受けた。その時は自分にも落ち度があったかもしれないが今回は百パーセント被害者だった。いろいろ言いたくもなるだろう。
 だが西谷はそんな湧哉の様子を見ても全く動じることなく話を進めた。
「畑原も購買? 実は俺もなんだー。腹減っちゃってさ!! せっかくだし一緒に行こうぜ!!」
 西谷は嫌がる湧哉のことなど気にもせずに肩に腕を回してきた。
 湧哉は振り払おうとするが鍛え方が違うらしい。西谷の腕を外すことはできなかった。
 肩を組んだまま歩を進める西谷。ぱっと見は仲の良い男友達に見えるかもしれないが湧哉のとがった口先を見ればそうではないとわかるだろう。
 進まないように足を動かさない湧哉だが、上半身だけはどんどん前に進んでいった。このままいくと顔を地面に打ち付けかねないので諦めて湧哉も足を動かしだした。

 購買の中に入ると蛍光灯の明かりが近くなった。
 左手には飲み物が並んだ冷蔵庫、その隣に弁当やおにぎりが置いてある。右手はレジになっており、その前を通って直進すると校舎の外に出れるようになっている。中央には二列の棚が置かれており冷蔵庫側には惣菜パンや駄菓子類、反対側には文具が陳列されている。
 奥崎は冷蔵庫前に立っていた。湧哉の目的のものはその眼の前にある。ここまで来てしまった以上顔を合わせるのは仕方がないと諦めることにした。
 西谷は湧哉から腕を外すと弁当コーナーに向かって歩き出した。
 当然奥崎の横を通ることになる。
「こんちわー!」
「こんにちわ」
 野球部らしく大きな声で奥崎に挨拶をする。それに答えた奥崎が顔をこちらに向けると湧哉とも目が合った。
「こんちわ」
「ああ」
 湧哉が挨拶すると素っ気なく返事をして奥崎は飲み物選びに戻った。
 湧哉も惣菜パンの棚を探し始める。いろいろと種類があったが、目についたカレーパンとあんパンを手に取った。
「お、畑原も決まった!!」
「西谷、お前食べ過ぎ……」
 西谷は弁当四つとおにぎり六つを抱えていた。
「そうか? おにぎりはこれからすぐ食べて、昼休みに二つ食べて部活前に二つだからこれでちょうどだろ?」
「ああそうですか……」
 よく食べるというのは知っていたがここまでとは思わなかった。
 買うものも決まったので会計をしようとレジに向かった。
 と、そこで外側の入口から数人が入ってきた。運動着を着ているのでどうやら体育の授業終わりの生徒のようだ。
 その中でも体格のいい一人が西谷の姿を見つけるとこちらにやってきた。知り合いなのか西谷も軽く頭を下げた。
「よーう、西谷ぁ」
「こんちわっす、岩木先輩」
 奥崎に挨拶した時とは全く印象が違う。
「久しぶりだよなぁ。夏休み前からあってないもんなぁ。たまには会いに来てくれよ」
「部活で忙しいんすよ。先輩も知ってるじゃないすか」
「ああ、そうだったなぁ。お前らそろそろ新人戦だもんなあ。俺らと違ってお前らは優秀だからな」
「毎日練習してますから」
 何やら気まずい空気だ。
 この短い休み時間にこんなことになろうとは。何かひと騒動起こりそうな雰囲気だった。
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