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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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帰り道

 校舎が閉まるまではまだ時間はあったが、残る理由もなかったので湧哉と古野濱は帰路についた。
 沈んだ日の代わりに街灯の放つ人工的な光が道を照らしている。その光のおかげでしっかりと整備された通りが映える。二車線の車道は凹凸もなく、センターラインもはっきりとしている。歩道に規則的に敷かれたタイルからはまだ真新しさが感じられるほどだった。
 そんな中を二人で歩く湧哉と古野濱のはずなのだが……。
 湧哉が足を止めて振り返った。
「なんでそんなに離れるんです……?」
 古野濱は湧哉から離れたところを歩いていた。後ろからだと他人に見える距離だ。
「だ、大丈夫! なんでもないから!」
「……?」
 気にするなと言われてもこの距離は気にもなる。出過ぎたことをしたので古野濱の気に障ったのだろうかとも考えたがそんな雰囲気でもない。
 もじもじとしている古野濱を待っていても仕方ないので湧哉は再び歩き始めた。古野濱もその後をついてくる。
「古野濱先輩は奥崎先生とどんな関係なんですか?」
「ど、どうして?」
「あんなところまで来るぐらいだから親密な関係なのかと思ったんですけど」
「えっと……その、仲がいいっていうか、私が一方的にそ―――か、まと―――っていうか……」
 距離が離れている上にだんだんと小声になるので最後の方はほとんど聞こえなかった。
 横に並んでくれれば何でもないのにとも思ったがそれを強制するような仲でもない気がした。
「それじゃあもう一人の人は?」
「阿良田君は……。あ、その人、阿良田あらた ひかるっていうんだけど……。仲は良かったと思うよ」
「過去形ってことはもしかして―――」
「意見が合うことが多かったんだけど、阿良田君が今回のことは部活の方針に反するって……」
「部活?」
「そうそう部活……ああぁ!!!」
 突然叫ぶと少し離れて歩いていた古野濱が湧哉との距離を一気に縮めてきた。
 前を歩いていた湧哉は叫び声で何事かと振り向くが、その時には古野濱の顔は目と鼻の先でだった。
「畑原君!! 今のは秘密にしておいて!」
「ど、どこここをおおお!?」
 古野濱は湧哉の肩に手を置き体を前後に揺さぶった。
「部活のこと! 他の人には内緒にして!!! どうしよう阿良田君にばれたらまた叱られる? もしかしたらそれじゃ済まないかも……!」
 今度は頭を抱えてうなだれ出した古野濱。
 長い通りだが二人以外には誰もいないようだが、見られれば自分が何かしたように勘違いされるかもと思った湧哉は急いで口を開く。
「先輩! 古野濱先輩またいつものなっちゃってます!!」
「ふえぇ……? うわぁ! ご、ごめんなさい」
 初めて言葉を交わしたのが今日だというのにこうして落ち着かせるのはもう何度目だろうと考えながらも切り替わりが早いので助かるとも思い始めた湧哉だった。
「そのことは秘密にしときますから」
「ほんとにごめんなさい……」
「帰りましょう。このまま止まってたらいつまでたっても寮に着かない」
 湧哉が歩き始めると古野濱も足を進めた。
「しかし大変ですね?」
「わ、私の性格が……?」
「いやいやそうじゃなくて。喧嘩してる顧問と生徒がいるなんて大変だなって」
「あはは、確かにそうかも」
 少し控えめに笑った古野濱だったがその声はしっかりと湧哉の耳に届いていた。
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