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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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言えない「理由」

 教頭がいなくなった後も視聴覚室には湧哉の声が響き渡っていた。
「なんだって俺にばっかりこんなにきついんですか!!!!」
「畑原だけというのは確かにそうだが、課題をやってこなかったのがお前だけだからだよ」
「元の課題すらまともに解けなかったのにあんなの解けないのぐらいわかりません!!?」
「わからなければ誰かに聴けばいいだろう。友達でもいいし私でもいい」
「だ、だからってあの問題量は―――」
「もともとの課題にサボった罰を追加すればこんなものだろう。これなら二度とサボろうとは思わないだろ?」
「で、でも期間が一週間っていうのは―――」
「長い期間を設けても気持ちが弛む。ある程度短い方が身になる」
「いや……でも……その……」
「はあ……。まだ続けるつもりなのか……? もうやめろ。それとも完膚なきまでに言い負かしてやろうか?」
 奥崎はため息をつくといい加減に疲れたのか湧哉を止めるために提案をするが―――
「いや、け、結構です!!」
挿絵(By みてみん)
―――湧哉は両手を上げてそれを拒否した。
 課題のことでいくら奥崎を非難しようとも、根音的に自分が悪い事は一応はわかっている。それに今回のこれは教頭を追い出すための茶番だ。教頭もいなくなった今、続ける必要はない。
 湧哉がおとなしくなったところで奥崎は湧哉に声を掛けた。
「まさかほんとに来てくれるとは思わなかったよ。これで首の皮が繋がった」
「正直、二人が視聴覚室に入るのを見た時はそのまま帰ろうと思いましたけどね」
「じゃあなんで来たんだ?」
 奥崎の問いかけに湧哉は後ろを振り返って答えた。振り返った湧哉の視線を追って奥崎も部屋の入口に目を向けると古野濱が顔をのぞかせていた。
 こちらと目が合うと恐る恐る中に入ってきた。
「古野濱先輩が困ってたもんで」
「知り合いだったのか」
「今日食堂でいろいろありまして……」
 古野濱が近くまでやってくると奥崎は再び入口に目を向けた。しかしそこには誰もいない。
「一人か」
「えっと……。はい」
「そうか」
 奥崎は眉をひそめると古野濱にそれ以上は聞かなかった。もう一人いることを期待していたようだがその人物は現れなかったようだ。
「とにかく助かった。教頭がなかなかしつこくてな」
「前にも教頭に呼ばれてたことありましたけどなんなんです? あの教頭のことだからあんまりいい予感はしないですけど」
「……」
「そ、それは……」
 状況のわからない湧哉の質問に奥崎は押し黙り、古野濱はおろおろとしている。
 授業中にも呼び出されるほどの要件とは何なのか。余程のことがない限りそんなことはないはずだ。
「もしかしてデジカメのことじゃないですよね?」
 古野濱の話では新学期の始まった九月頭からこんなことが続いている。デジカメのことではないと湧哉は思っていたが確認してみたのだ。万が一はあり得るものだ。
「それは関係ない。私がデジカメを持っていることは気づいていないだろう。それに万が一知られていたら畑原をここに呼んだりはしないさ」
「そこ考えてくれてるんですね……」
 奥崎の返答に安堵する湧哉。これで一つ不安材料が減った。
「教頭に呼び出されたのは仕事のことだ。だから畑原が心配することじゃない。私の問題だ」
 どうやら奥崎に話す気はないらしい。
 個人の問題だと言われれば湧哉もこれ以上聞く気にはなれなかった。それに自分がまだ安全だということを聞いて満足してしまったこともある。
「もう外も暗い。気を付けて帰れ。畑原、途中まで古野濱を送っていってやれ」
「え? え? い、いやいや、わ、私は一人でだだだだ大丈夫ですよ」
「どうせ寮なんだ。帰り道は同じだろ」
「たたたた確かにそうですけど」
 先ほどまでおとなしく、というか完全に気が沈んでいた古野濱が急に慌てだした。
「ででででででも―――」
「畑原、何か問題あるか?」
「男子寮と女子寮は通り挟んだ向かいですし問題はないですけど……」
 古野濱のこの慌てようを見ると逆に不安になる湧哉。
「それじゃあ頼んだぞ」
 そう言って奥崎は二人を送り出したのだった。
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