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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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乱入者現る

 視聴覚室は教壇を底に傾斜になっており、そこを中心に扇形になっている。高校の教室というよりは大学の講義室に近い造りだ。天井には映写機が取り付けられており、教壇の天井にはスクリーンが設置されている。映像を流す際は窓に遮光用のシャッターが下りるようになっている。
「奥崎先生、君は仕事をなんだと思っているのかな? あれは自分から申し出たことだというのに全く進んでいないじゃないか」
「……」
「予定ではもう終盤のはずなんだよぉ?」
「……」
 教頭は教壇の上を歩いている。まるで奥崎に講義をしているかのような立ち振る舞いだった。
 一方の奥崎は部屋の中央で佇んでいた。
「奥崎先生、君はたーしかに優秀だ。ここ最近来た教師の中では特にだよ。奥崎先生が来て五年が経つが今までの仕事ぶりは素晴らしいものだ。でも、でもだよ奥崎先生ぇ? 今までが完璧だったからといってこんなことが許されると思ってるのかい?」
「……」
「先ほどからずっとだんまりだけども何か弁明もないのかね? いつもの奥崎先生ならば生意気な……おっと、これは良くないね。失敬失敬。何か反論を言っているというのに」
「申し訳ありません」
 無言で教頭の話を聞いていた奥崎が最初に発したのは謝罪の言葉だった。腰を九十度曲げ、頭も下げている。
 謝罪を聞いた教頭は足を止めて奥崎の方に体を向けた。
「謝罪は受け入れるとして、どう責任を取るんだい?」
「本当に申し訳ありませんでした。なんとか期限までには間に合わせます」
「言葉だけでは何とでも言えるよ。まあ奥崎先生の態度次第では私も教頭という立場だからね。いくらか都合をつけることもできるよぅ」
「……」
 教頭はニヤリと笑う。奥崎が頭を下げたままだからか、表面に現れる下心を隠そうともしなかった。
「さて、どうするかなぁ奥崎先生?」
「……」
 奥崎は顔を上げ、まっすぐ教頭を見つめ返した。
 その眼は教頭の要求を否定していた。
 教頭の言う通り言葉だけならなんとでも言える。謝罪の言葉は伝えたが奥崎の中にそんな気が微塵もないことがわかった。
 それが教頭にも伝わったようで眉間にしわを寄せた。
「奥崎先生、君は自分がどういう立場なのかわかっているのか!!? このままだというのなら私はねえ―――」

「奥崎せんせーーーーーーーーーーい!!!!!!」

「!?」
「……」
 突然視聴覚室のドアが勢いよく開いた。何事かと驚く教頭に対し奥崎は落ち着いている。
 視聴覚室に入ってきたのは手にプリントの束を持った生徒だった。その生徒は奥崎の後ろにやってくると口を開いた。
「奥崎先生!! いくらなんでもこの課題の量は無理だ!! 課題をやらなかった俺が悪いのは確かですけどね。だからってこれはないでしょうが!!! 難易度が高い問題がこーーんなに。期間中に終わるわけないだろ!!」
 最後にプリントを床に叩き付けた。プリントは辺りに散らばって床を覆い隠す。
「き、君! いきなり入ってきて何事だね!」
「あんたは黙っててください!!!」
「な、なんだと!? 君は生徒の分際で私に向かってなんて態度なんだ!!」
「うるせーーーー!! こっちは我慢の限界なんだよ!!!!」
 教頭が注意をするが生徒は全く聞く耳を持たない。周りがさっぱり見えていないようだ。完全にキレている。
「教頭先生」
「な、なんだね奥崎先生?」
「生徒も来てしまったことですし、この話はまた今度にしませんか?」
「なに!?」
「この子の様子じゃしばらくは落ち着かなそうですし、先に戻っていてください。私はこの子と話をします」
「き、君はまた逃げるのか!!!」
「逃げる? なんのことですか? それに、そうおっしゃるんでしたら今ここで話を進めますか?」
「―――――っ」
「おい! 俺を無視するな!! 俺の話は終わってないぞ!!!」
 誰かのいる状態で話ができるのならわざわざこんなところに来るはずはない。喚く生徒がいるこの状態では話しはできないと判断した教頭は出口に向かうと部屋を出た。そのあともしばらく、生徒の騒ぐ声が教頭を後から追ってきていた。
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