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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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相互協力契約成立

 一限目が終わり休み時間に入った。野球部の西谷は一限担当だった教師がいなくなると同時に早弁を開始した。こんなに早くから食べていたのでは昼までもたないのではないだろうか?
 一方の湧哉は課題に取り組んでいた。その湧哉の下に悠がやってくる。すると彼はある指摘をした。
「ハタハタ、そこ間違ってるよ」
「え……? どこ?」
「今書いてるとこ。たぶん最初の計算から間違ってるよ」
「クッソマジかよ。一限目にやってたとこ全部パアじゃんか……」
「授業中にやってたんだ……」
 取り組んではいたものの進み具合は良くないようだ。しかも今回やっていたところは間違っているときたのだから虚しくもなる。
「だあーーーーーーー、もうやめだやめ! やってられるかー!」
 湧哉はペンを放り投げると背もたれに寄り掛かり天井を見上げた。
「ハタハタ―、そうやってすぐあきらめちゃうから終わらないんじゃないの?」
「うるせー、こんな計算……無理。なんだよ力量とか仕事って!! 力が仕事したって金になんねーだろうが!!」
「言ってる意味がわからないよ……」
 この力量や仕事とは物理学用語なのだがその意味を理解していない湧哉には辛いらしい。予習復習をしないのに加えてわけがわからないと放っておいた本人が悪いのだが……。
 悠は教科書二冊分……いや、三冊分はあろう課題プリントをペラペラとめくっていった。一枚、また一枚とめくっていくたびに表情が険しくなっていく。すべてめくり終ると最後に大きくため息をついた。
「僕、今回の課題をしっかりやっといてよかったよ。これ、ただ量が多いだけじゃなくて難易度まで増してるもん」
「こんなの終わるわけない……」
 今度は机に突っ伏した。
 今まで二、三度課題をサボったことはあったがここまでの追加課題ではなかった。いい加減にしろというこれも釘差しなのだろうか? それとも先日のことで成果をあげられなかったことへの嫌がらせなのだろうか? どっちにしても奥崎に良い印象は与えられていないだろう。
「これが終わらなかったら次は最終評価なしとか言わないよな……。いや待て、あの奥崎先生だぞ……あり得る?」
「いや、僕に聞かれても」
 顔だけを上げて問いかけるがその答えを悠が知っているわけもなかった。
「……だよな」
 湧哉はゆっくり体を起こすと大きく伸びをした。伸び終ると消しゴムを手にし、今まで書いていた箇所を消し始めた。すべて消し終るとペンを持ち、教科書を開いて課題に取り掛かった。
「一日一割終わらせて残りは休日だな。そこでどれだけ稼げるか。それによって俺の運命が―――」
 今度こそは計画を立てるようだ。一時間で課題が一枚終わっていない時点でこの計画は破綻しそうだがやる気はまだ残っていたようだ。
 そんな湧哉を見て悠は少し微笑むと―――
「手伝ってあげようか?」
「はい?」
「だから、手伝ってあげようかって?」
「ま、まじか!?」
「昨日のこともあるしね」
「いや、別に昨日のことはもういいって。そんなに引っ張り出すようなことじゃないだろ」
「そう?」
「そうだよ。でも手伝ってくれ! 何でもするから!!」
「それじゃあ文化祭で僕のこと手伝うっていうのでどう?」
 即答だった。考える様子もなく悠はそう言った。始めから準備していたかのように
 始めはポカンとした顔をしていた湧哉だったがにやりと笑うと持っていたペンを悠に向けた。
「お前、始めからそのつもりだったんだろ?」
「そんなことないよ。それよりどうするの? 手伝うの? 手伝わないの?」
 湧哉の問いに笑顔で返す悠。ああ言ってはいるが始めからそのつもりだったんだろう。いくら悠でも一人で旧校舎のことを生徒全体に広める催しを準備することはできないだろう。助けを借りるなら少しでも旧校舎のことを知っている者がいい。それが近しい間柄なら尚いいだろう。
「オッケー、この課題が終わるならやってやろうじゃん」
「それじゃあ契約成立。よろしくね」
「ああ」
 そんなにかしこまる仲でもないはずだが二人は握手をすると互いの協力を約束した。
「あ、さっそくだけどそこ、また間違ってるよ」
「うっそぉ!?」
 早くも間違いを指摘され、湧哉はペンから消しゴムに持ち替える。
 悠の助けがあるといっても、この調子では課題が終わるのはまだまだ先のようだ。
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