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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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記者の話2

「大御門が亡くなったときには古株の教員もほとんど職を離れてたんだ。残っていたのは当時教頭だった田島に他数人。だから田島が校長にって話だったんだ」
「だが実際には田島先生は校長にはならなかった」
「ああその通りだ。現校長の吉川一成が名乗りを上げたってわけだ」
 吉川一成。渡ヶ丘の現校長。齢七十を超えながらも容姿は五十代にも見える。どこかカリスマ性を感じさせる振る舞いもあり学内外どちらからも評判はいい。だが、生徒からすると校長というのは少し関わりずらい。授業を受けるわけでもなく、毎日顔を突き合わせるわけでもない。行事の際にはよく顔を見るがそれ以外は何をしているのか正直わからないところだった。
「吉川の年齢は大御門とそう変わらんがあいつが渡ヶ丘で教え始めたのは開校から二十年近く経ってからだ。教員が足りなくなったってんで雇ったうちの一人だ」
「人手不足だと? そんなことがあるのか?」
「ああ、数年で十人以上がやめた。まあ俺も当時のことは詳しく知らねえが単に定年で辞めただけらしい」
 記者はタバコを口にしそれをふかす。それによってタバコの先は赤くなりすぐに光を失った。
「始めは田島を校長にって案が有力だったんだろうが、ここでまた不思議なことが起こる。教師の多くが田島から吉川を校長に推薦し始めた。調べたところによるとな、田島の体調が芳しくないって噂が立ったらしい。実際今の田島の体はボロボロなんだが……。薬もけっこうな量を飲んでるらしいからな」
「前校長が亡くなった後の体調問題は確かに響きそうですね……」
「小さな噂だったらしいが、それでもな。学校のトップだ、そりゃ健康体の人間のほうがいいに決まってる。それに言いたかねえが吉川も優秀だった。外面は良かったし、渡ヶ丘を進学校へのし上げたのはやつの功績だ。田島がいなけりゃ有力候補の一人ではあったかもしれねえな」
 再び口にしたタバコ。今度は大きく息を吸いタバコは半分近く灰となった。さすがに灰が長くなったため記者は携帯用の灰皿にそれを落とす。
「ま、後はここ最近土地を買った連中に張り付いた結果だ。誰も明言はしなかったが、吉川と接触している。だが土地の売買に直接関わっていたっていう証拠はねえ。俺が探してんのはそれだ。だから校長室にあの岩木ってやつを忍び込ませた」
「なぜ職場にあると考えた? 自宅に隠す方が理にかなってる」
「そっちはもう調べた」
「え……まさか……」
 記者は具体的には言わなかったが、二人はその意図を理解していた。阿良田は組んでいた腕を解き額に手を当て、湧哉はただ茫然としていた。
「犯罪だぞ」
「ん? 俺が何か言ったか?」
「忍び込んだのか」
「さあな」
 記者はタバコを吸いきると火を消し、灰皿に吸殻を捨てた。
「俺の知ってることは話した。これで満足か?」
「いや。どれもこれも証拠のない話だ」
「そうかい。だがお前たちの要望には答えたんだ。今回のことは黙っといてくれよ」
「考えておこう。だがこれ以上おかしなことをすれば突き出す」
「それは約束できねえな。それとカメラ、返してもらっていいか」
「ああ」
 阿良田がカメラを渡すと記者はそう言い残して二人に背を向けた。阿良田も立ち去ることを咎めることはなかった。
「とりあえず……俺を追い回したのは校長の証拠へつながる手がかりを探していたってことなんですかね?」
「だろうな。話だけなら信じんが、あのカメラの写真を見る限りじゃ本当だろう」
「でもわざわざ生徒を使って写真を撮らせてどうしようって言うんですかね? 校舎内に入れるわけでもないのに」
「おそらく準備のためだろう。明日からは文化祭で校舎に外の人間も出入りする」
「ってことは、校長室に忍び込むために?」
「金庫の写真もあった。どうにかしてそれを開けるつもりだ」
「証拠、あるんでしょうか」
「それはわからん。だが何かしらアクション起こすはずだ」

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