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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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張り込み

 考えた結果、まずは奥崎の下へと向かうことにした。阿良田が何か見つけていれば奥崎に報告するであろうし、進展があったのなら早めに聞いておきたかった。
 徐々に文化祭の装飾が施されていく校内を歩き湧哉は職員室へと向かった。

 校舎中が着飾らされても職員室だけは普段とあまり変わりない。違うところといえば職員室内に配置された面談室だろう。文化祭を訪れる入学希望者のためだろう。
 奥崎はその準備のために机を移動していた。一人で作業をしているようだったので湧哉は声をかけた。
「奥崎先生、ちょっといいですか?」
「畑原か。どうした?」
「その後、どうですか? うちのクラスのこととか、阿良田先輩のほうとか」
「じゃあその机を運びながら聞いてくれ」
 湧哉は少し声を落とした。同じく奥崎も声のトーンを下げた。周りから怪しまれないよう湧哉は奥崎の手伝いを始めた。
「岩木は文化祭の準備で早くに来たと言っているようだ。クラスメイト達もそう言っているらしい。歯切れは悪かったらしいがな」
「怪しくないですかそれ?」
「口裏を合わせたならな。だが百パーセントそうだとも言えん。いきなり岩木が手伝いだして引いているかの巣性もあるからな……」
「阿良田先輩からは何もないんですか?」
「連絡がないからおそらくまだ探しているんだろう。仮に見つけても証拠がない限りはどうしようもないが……」
「それじゃあ犯人捜しは難しいってことですか……」
「防犯カメラに怪しい人物が映っていなかった時点で想像はしていたが学校側はお手上げだ」
「阿良田先輩探してきます。何か見つけてるかもしれませんし」
「ああ。しばらくは私もここを離れられないからそうしてくれ」
 湧哉は一度職員室を後にした。
 阿良田を探すために昇降口から外に出た。外にもいくつかテントが張られており、PTAや校内での場所が取れなかったクラスが準備に取り組んでいた。だが湧哉の目的は校舎の裏手だ。湧哉は賑やかな風景に背を向け校舎裏へと向かった。

 正門側の外周は一メートルほどの塀の上に十数メートルのフェンスが付いている。一方校舎裏は二メートルほどのフェンスに囲われている。そこは校舎からわずかに声が聞こえてくるだけで静かなものだった。体育館の横を通り過ぎ、教員用の駐車場まで足を運ぶ。だが阿良田の姿は見当たらなかった。入れ違いになったのかもしれないとも思ったが、今度は体育館の裏手へと回り込んだ。
(いた)
 阿良田は体育館の陰に隠れるように座り込んでいた。湧哉はゆっくりと近づく。途中で湧哉の気配に気が付いた阿良田はこちらを振り向くと口元に人差し指を当てるしぐさをした。どうやら何か見つけたらしい。
「どうしたんですか」
「あそこを見ろ」
「何もありませんけど……」
 こちら側の敷地の外には何も建物が立っていない。学校という場所柄のせいなのかこの付近に大きな建築物を建てようという話はさすがのこの町でもないらしい。おかげで道は整備されているが反対側は林のようになっているのだ。
「フェンスに泥が付いている。おそらく誰かがよじ登ったんだろう」
「う~ん?」
 目を細くして注意深く観察すると確かに汚れている箇所があることに気づいた。だが、おかしなこともある。
「よじ登ったって……。うちのはどう頑張っても登れませんよ。縦格子なんですから足の掛場がないんですから」
「一人じゃ無理だろうな。だが二人ならどうだ?」
「肩車でもしたって言うんですか?」
「かもしれないし、脚立か何かを準備しておいて二人目が持ち去ったのかもしれない。とにかく侵入場所はここだ」
「だからってここで待ってっても仕方がないんじゃ……」
「いやここを見つけた時裏の道に人がいたんだが俺の姿を見るとどこかへ行ってしまったんだそいつが戻ってくるかもしれない」
「……」
 あんな小さな汚れを見つけるほどだ。相当細かく探し回ったのだろう。奥崎もしばらくは職員室を離れられないと言っていた。湧哉も阿良田の横で中腰になるとその場で誰かが現れるのを待った。
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