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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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心当たり

 職員室では緊急会議が開かれたらしく、朝のホームルームは少し遅れて始まった。
 担任の井ノ瀬は状況の説明とこれからの対策について話をした。
「警備会社の話では昨日の施錠をした時点では変わったことはなかったそうです。おそらく今朝の早い時間だと思われます」
 "今朝"ということはこのクラス内に犯人はいない、ということになるのだろうか。前日、最後に教室を出た澤の証言によればこの時点でも異常はなかった。そして朝一で来た生徒によって事態を発見している。
「私もそうですが皆さんはそれ以上に悔しいでしょう。どうかそれをばねに頑張ってください。出来ることがあれば私も協力します。それから実行委員の二人はこの後私のところに来てください。それではホームルームを終わりにします」
 澤の号令で一礼するとクラスメイト達は屋台の修復作業に取り掛かっていった。
 実行委員である湧哉と澤が井ノ瀬の下へと向かうと彼女は声を抑えて口を開いた。
「少し職員室まで来てほしいの。大丈夫かしら?」
「ええ。私は大丈夫です」
「俺も大丈夫です」
「それではついてきてください」
 井ノ瀬に続いて二人も教室を出た。職員室で何が待っているのかと考えたがそれは一瞬で終わってしまった。
「今朝の件で何か心当たりはありませんか?」
 井ノ瀬は教室を出るとすぐに質問をぶつけてきた。
「まさか俺たちを疑ってるんですか?」
「いいえ。私はこのクラスの中にこんなことをする人はいないと信じてるわ。言い方が悪かったわね。あなたたちのことをよく思っていない人に心当たりはないかしら? 特に畑原君。あなたはここ数日学校中の興味の対象だったでしょう?」
「そういうことですか……。澤を一緒に呼んだのは俺個人の名前を出さないためってことですか」
「ごめんなさいね」
「い、いえ、私は大丈夫です」
「あの件はできればもう表に挙げたくないのよ。校長先生は強気だけれど少なからず渡ヶ丘に悪いイメージを与えているはずだもの……」
「まあ俺もあんまり掘り返されても楽しい話じゃないんで助かります。でも俺に因縁のあるやつなんて……いますね」
「え!?」
「誰か心当たりがあるの?」
 真っ先に思い浮かんだのは岩木だった。岩木ならば朝早くから校舎に来ていてもおかしく思う者は……おそらくいないはずだ。
 そしてもう一人。例の記者だ。だがこちらの場合は問題があった。まず、生徒でもなければ学校関係者ですらない。もし見つかれば檻の中に入ることになる。いくら湧哉の話に価値があるものだったとしてもそんな危険を冒すだろうか?
「一応可能性の話なんで確実とは言えないんですけど―――」
 湧哉は二人のことを井ノ瀬に話した。岩木は教員の中では有名なようで、名を聞くと井ノ瀬はやれやれと首を振っていた。記者のことも奥崎から聞いていたらしくこれまたやれやれと首を振る始末だった。
「わかりました。他の先生と話し合って確認してみるわね」
「お願いします」
「ええ。それじゃあクラスのことは頼みますね。何かあれば遠慮なく言ってね。私もこのクラスの一員なんだから」
 そう言い残すと井ノ瀬は職員室へと向かった。
「私たちも手伝わないと」
「ああ、そうだな」
 二人は教室へと戻ると修復作業に手を貸した。今は時間はいくらあっても足りない。とにかく手を動かさなければならなかった。
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